1651.2011年11月20日(日) アジアで米中の綱引きが露骨に

 昨日ASEAN 10カ国と日中韓など域外8カ国でつくる東アジアサミットが開かれたが、このところ連日ASEANの拡大とTPP加盟問題がメディアで大きく取り上げられている。ややこしいのは米中両国が日本を主にアジア・太平洋諸国を自国の経済圏拡大のために中国はASEANへ、アメリカはTPPへの参加を呼びかけていることである。

 だが、日本の場合それぞれの加盟問題が充分議論されない内に結論だけが走り出したことで事態をやや複雑にしている。わが国ではTPPについて事前に政府から国民への説明がなされることなく、野田首相がホノルルの首脳会談でTPPへの交渉参加を表明した。これによりカナダ、メキシコが雪崩現象的に参加を表明することになり、TPP域内取引は世界貿易額のほぼ40%に当ることになった。これに慌てたのが中国政府である。

 ASEAN+3(日中韓)となれば、その貿易額は世界全体の23%となり、これにインド、オーストラリア、ニュージーランドが加わるASEAN+6となれば、全体の27%となる。経済関係のみならず、政治的にも大きな力となるので、中国は必死になって日本へアプローチし始めた。これにより巨大になる域内を中国自らが取り仕切ろうというのである。

 最近は国際問題が経済がらみというより、政治的な主張が強まってきた。米中間で応酬となった南シナ海の領有権、海洋安保の問題がとりわけターゲットになっている。オバマ大統領が領有権では国際法に基づく主張が必要だと述べたのに対して、中国の温家宝首相が南シナ海問題は中国と領有権を争う国との直接協議で解決すべきと主張し、更に外部勢力はいかなる口実であっても介入すべきではないと反論した。

 しかし、中国の言い分は些か虫が良すぎる。国際法上領有権が認められそうもない公海上、或いは他国領有海上に一方的に進出して紛争を捲き起こしていながら、当事国となった自国と相手国以外は口出しするなと言わんばかりの横暴で排他的な論理は、到底他国を納得させることはできまい。これから中国はどういう経緯で、周辺諸国を納得させ領有権問題に決着をつけるか。注目してみたい。

 さて、プロ野球日本シリーズが福岡ソフトバンク・ホークスと中日ドラゴンズの間で熱戦を繰り広げていたが、シリーズは最終第7戦まで持ち込まれ、今日やっと決着がついた。今年の日本一は4勝3敗でドラゴンズを下したホークスと決まった。ホークスは昨年パ・リーグで優勝しながらクライマックス・シリーズと呼ぶおかしな制度で破れ、日本一への挑戦権を失った。それだけに今年の日本一に賭ける意気込みは相当強かったと思う。

 このシリーズの間に巨人軍の人事問題が絡んだ清武英利・球団代表による渡辺恒雄・読売新聞会長告発問題があり、シリーズは野次馬的に水を注され、少々後味が悪かった。しかし、シリーズは僅差で緊張した試合の連続で、シーズン最後を飾るに相応しい試合ばかりだった。他にもいくつかの問題点を曝け出した今年のプロ野球界だが、もう少し経営者が現実に抱えている問題を真剣に考え是正していかないと、ファンが去りいつかは寂れて行ってしまうのではないだろうか。

 優勝インタビューでホークス秋山幸二監督が、東北大震災によりシーズン開幕が遅れ、震災に見舞われた被災者のために全12球団が一丸となって被災者に元気を与えられるよう頑張ってきたと述べてくれたことがせめてもの救いである。経営者にもこのくらいの気持ちが欲しいものである。

 プロ野球界は内部に抱えた小さな問題を過小評価することなく、謙虚に反省したうえで、来シーズンに向けて再出発を期して欲しいものである。

2011年11月20日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

1650.2011年11月19日(土) ビルマ情勢からしばらく目が離せない。

 ここへ来て俄かに脚光を浴びているのがビルマ(ミャンマー)の存在である。新聞記事でもここ1週間の間にぐっと露出度を増している。今朝の朝日ではトップ記事であるばかりでなく、2面でも大きく取り上げられている。それは軟禁状態から解放された民主化運動指導者、アウン・サン・スー・チー女史と彼女が率いる国民民主連盟(NLD)が選挙に参加することを決めたことが大きな理由である。来年行われる上下両院の補欠選挙に立候補するため、彼女が率いる国民民主連盟(NLD)は政党として再登録することを中央委員会で決定した。昨年の選挙の際、彼女らNLDが選挙は公正でないとしてボイコットしたが、結果的に反ってNLDの活動が制限されることになった点を反省し、改めて現行の制度の中で自分たちの存在を主張した方が自分たちにとって有利だと判断したのである。

 それよりビルマ政府がスタンスを変えつつあるのは、2014年のASEAN首脳会議で議長職を熱望し、そのためにはASEAN諸国との友好的な外交関係を取り戻すことが必要であり、同時に欧米諸国から受けている経済制裁がビルマ経済に大きな負担となり、その解除が重要だったからである。欧米からの制裁解除には民主化運動で収監されている政治犯を解放することが条件であり、まだその条件は満たされていない。欧米諸国にとってビルマの要望を聞き入れようと考えたのは、ビルマ自体が少しスタンスを変えつつあるが、それ以上に欧米諸国がビルマは非民主的と非難を強める裏で、中国政府が離反している隙間に潜り込むような形で経済投資を強め、ビルマ国内における存在感と影響力を強めつつある実情に危機感を抱いたからでもある。

 今月イギリスの大臣がビルマ入りを果たし、アメリカも来月にはクリントン国務長官をビルマへ派遣し今後の外交について話し合いをすると発表した。今後ビルマの民主化がどの程度進むのか、中国と欧米諸国の経済支援シェア争いがどうなるのか、何とかビルマ支援に絡みたい日本政府はどういう方策とルートで非民主的なビルマ政府へ食い込むのか、当分目が離せない。

2011年11月19日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

1649.2011年11月18日(金) タンゴを楽しむ。

 7月に慶応の「KBRタンゴ」によるタンゴを鑑賞したが、今夜はその続編で同じ「KBRタンゴ」のディナー・コンサートが神田・如水会館で行われた。前回と同じく利光さんご夫妻からお誘いを受け、同じゼミの島田さんご夫妻、須藤さん、後輩の野上さんご夫妻と妻の9人でのんびりアルゼンチン・タンゴを楽しんだ。皆さんタンゴに詳しいのには舌を巻いた。私は心地よく聴くだけである。演奏される曲はポピュラーなものばかりなので、飽きることもなく充分楽しめた。ステーキ・ディナーとワインも東京會舘が賄っているので中々美味く堪能することができた。

 演奏された曲目はシャンソン風の「小雨降る経」を始め、「ラ・クンパルシータ」以下全て世界的に流行ったタンゴだった。その中でひとつだけ日本の曲を演奏してくれた。5年前に102歳で亡くなられた高木東六さんの名曲「水色のワルツ」だ。この曲については強い思い入れと想い出がある。

 実は、妹の結婚披露宴の折に作曲者の高木さんご自身が妹夫婦のためにわざわざこの「水色のワルツ」をピアノを弾いて祝ってくれた。その後藤沢市内で弾き語り的なトークショーを行った時に、父から頼まれて鶴見のご自宅と会場間を高木さんの運転手役を務めたことがある。トークショーでは作曲された軍歌「空の神兵」について、キーを叩きながら思い出を語られ、今でも通用する良い曲だと自画自賛されていたことが強く印象に残っている。確かに「空の神兵」は、パレンバンの落下傘部隊をテーマに取り上げたリズム感のある歌で、私も気に入っている名曲だ。

 司会者が年配者の多い参会者を意識して、元気に長生きする秘訣のキーワードを紹介してくれた。イニシアルが「カ・キ・ク・ケ・コ」だそうである。カ=感動、キ=興味、ク=工夫(考える)、ケ=健康、コ=恋、だそうである。余興として講義の息抜きに活用させてもらおうと思う。

 タンゴを楽しみ、ディナーを楽しみ、晩秋の一夜を寛ぐことができた。

 さて、日本のTPP加盟交渉を巡り、環太平洋諸国とアジア諸国の間で駆け引きが始まっている。今日インドネシア・バリ島で開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議で、「日本・ASEANバリ宣言」を発表した。ただ、今アメリカと中国の経済圏拡大競争が過熱しつつある。アメリカは日本をTPPへ誘い込むことに成功した。まだ諦めきれない中国は、しきりに日本をASEAN同盟へ引き込もうという気持ちでいる。中国の東アジア地域における覇権的な行動が少々気になる。どういう結果になるだろうか。

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1648.2011年11月17日(木) イタリアの閣僚には政治家がひとりもいない。

 国会が論戦を戦わせているようだが、今日衆議院行政監視委員会で話題の事業仕分けが行われた。ターゲットは公務員宿舎建設、高速増殖炉「もんじゅ」、独法・原子力安全基盤機構への天下りなどである。元々仕分け導入に貢献したのは政策シンクタンク「構想日本」で、メルマガを通して会員でもある私への仕分け見学の案内があった。関心があったが、昨日も遅くまでセミナーもあることだし、今回は見送ることにした。ところが、今朝「知的生産の技術研究会」八木哲郎会長から電話があり、これから衆議院の事業仕分けを見学に行くという。そういうことなら一緒に見学すれば良かったかなと思ったが、会長は折角霞ヶ関へ行くので、近くの議員会館・森喜朗事務所へ挨拶に行きたいという。先日森元総理に関して書いた拙稿を掲載した「知研フォーラム」を、森事務所に大量部数購入していただいたお礼を伝えたいと言われる。取りあえずその旨を森事務所の長谷川秘書に連絡した。

 それにしても八木会長の変わらぬ自己啓発と知的生産ぶりには脱帽である。私より5歳年長だから、78<歳になられるのに、今も前向きに貪欲に学ぼうとしておられる。その意気や大いに見習うべしだと思う。近くに良いお手本がおられるので、若輩者の私だって負けじと頑張る気持ちになる。会長は私にとって良い意味の刺激剤となってくれている。

 さて、ヨーロッパの経済危機により、ギリシャ政府はパパンドレウ首相が辞任してパパデモス新内閣が発足した。ギリシャ危機に引っ張られてヨーロッパ第3の大国イタリア経済も怪しくなり、遂に粘りに粘っていたベルルスコーニ首相も辞職せざるを得なくなった。新たに首相になったのは、前任者とは異なり醜聞とは無縁の経済学者のマリオ・モンティ氏である。ヨーロッパ委員会委員を無難にこなしていたが、政治家として実務をどう切り盛りしていけるか。異例なのは、モンティ内閣の閣僚に自分以外に政治家がひとりもいないことである。国家の政治を行うのにプロの政治家が加わらないというのも珍しいし、常識的には考えられない。

 モンティ首相の言うことがふるっている。「協議の中で、政治家はいない方がよいという結論に達した。邪魔が入らないからだ」とは、政治家がまったく信用されていないことだ。政治家は邪魔者と見られているのである。

 日本でも似たようなものだと思う。政治家よりレベルの高い人たちが決めれば、政治家がいない方が物事はスムーズに進むだろう。政治家が劣化したということだろうか。忘れてしまったマックス・ウェーバーの名著「職業としての政治」を再び読んでみようと思っている。

2011年11月17日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

1647.2011年11月16日(水) 脱原発のセミナーで考える。

 日本ペンクラブ主催の「脱原発を考えるペンクラブの集い」が日本プレスセンターで開かれた。脱原発に関するセミナーをペンクラブが開くのは初めてである。著名なジャーナリストが個々に反原発について自己主張されたが、中々面白かった。番外編として、会場でひとりの老人が手書きのポスターを掲げながら歩き回り大声で叫んでいて事務局と揉めているように見えたので、右翼が発言させろと喚いているのかと思ったらそうではなく、最初の質問者として司会の常務理事・高橋千剣波氏がその老人を指名した。

 私の2席離れた場所に座っていたが、ボヤキや独り言が多く甚だ迷惑だった。些か乱暴な発言で、冒頭からペンクラブ内の殺人者をペンはどう考えるのかと浅田次郎会長に食下がる有様だ。槍玉に挙げられた殺人者とは田原総一朗氏ほかを指している。名指しされた老人は、何とお久しぶりの表舞台登場となった、法政大学名誉教授・袖井林二郎氏だった。かつてのリベラル派論客である。岩波の月刊誌「世界」でしばしば論文を読んだことがある。あれだけ高名な学者がこれほどエチケットを欠いた行動をされるとは意外だった。300名ほどの参会者の中であのような自分本位の行動をしたんでは、仮に正論だとしてもあのパフォーマンスでは真面目に聞き入れてもらえないのではないだろうか。もう少し節度のある言動で筋道を立てて話をするのが自説を理解させるひとつの手段だと思うのだが・・・。

 さて、本論だが浅田次郎会長、弁護士・梓澤和幸氏、落合恵子氏、金丸弘美氏、見城美枝子氏、俳優・中村敦夫氏、野上ふさ子氏、フォトジャーナリスト・広河隆一氏、専務理事・吉岡忍氏がそれぞれ5分程度の反原発スピーチを行った。

 浅田会長が核は戦争と同じで、ドイツが核開発を止めたのに原爆被災国である日本が再稼動に踏み切ったのには、他に理由があるからではないかと首を傾げていた。落合氏が自分たちは安全地帯にいるが、被災地にいる子どもに申し訳ないと述べ、原爆と原発は同根だと話された。

 梓澤氏は原発の受難者を共感する気持ちが必要だと述べ、マーチン・ルーサー・キング牧師の言葉を引用された。福島の子どもたちを救うために若手弁護士30人が活動を始めたと語った。

 印象的だったのは、写真家の広河隆一氏がパワーポイントでトツトツと話された、チェルノブイリと福島の現場の写真だった。広河氏の指摘されたポイントは、①私たちは事故発生の時、何をなすべきだったのか、②いま私たちは何をなすべきか、に集約される。そして、IAEA並びに原子力と結びついた御用医学者をこき下ろし、小児甲状腺ガン発生の危険性を糾弾し、ペンは変わらなくてはいけないとアピールした。特に、IAEAの腰巾着のようになって危うい安全調査報告を出している、長崎大学グループの重松逸造・放射線影響研究所初代理事長と弟子で2代目理事長の長滝重信教授を厳しく非難していた。

 休む間もなく話は続けられ、2時間以上に亘り熱心な議論が交わされ、久しぶりに熱気を感じたセミナーだった。だが、落合氏が「1,000万人のアクション」で反原発行動を行っているが、中々大きな力とはならないと壁を感じていると述べていた。ひとりひとりが行動を起すことが目標へ向けて力となる。

 翻って私にはどんな行動を起こせるだろうか。いつまでも傍観者であってはならないと思っている。壇上の9人の識者はみんな私より若い。気持ちはあっても、近年は体力が必ずしも伴わないことに忸怩たるものがある。

2011年11月16日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

1646.2011年11月15日(火) 分かりにくいことが多過ぎる。

 今日北朝鮮の首都ピョンヤンでサッカー・ワールドカップ3次予選の日本対北朝鮮戦が行われ日本が0-1で敗れたが、試合会場・金日成記念スタジアムは秘密国家・北朝鮮らしく、およそ国際親善スポーツらしからぬ異常な雰囲気を醸しだしていた。

 日本代表チームは昨日チャーター機で北朝鮮入りを果たしたが、その入管手続きに4時間近くを要した。昨日入国後の軽い練習では、グラウンド内をどういう目的か北朝鮮軍兵士が行進しているような有様で、今日の試合会場を見る限り5万人のアウェイ・ファンの中で、日本人サポーターは入国を認められた150人だけが手足をもぎ取られたような閉塞状態で大人しく声援していた。試合後日本人ファンは恐怖感を感じたとその異常な試合の感想を率直に述べていた。

 試合開始に先立って両国国家斉唱で「君が代」が吹奏されるとけたたましいブーイングに圧倒される状態で、凡そ国際親善試合と呼べるものではなかった。かつて中国で開催されたアジアカップの際に同じような光景があったが、これほど酷くはなかったと思う。北朝鮮国民には、やはり国際試合を観戦するうえで常識とかエチケットが欠けているようだ。しかも北朝鮮ファンは国旗を振りかざして応援していながら、日本人はカメラ、国旗、太鼓や鐘などは持ち込めず、まったくアンフェアでアブノーマルな雰囲気だった。つい拉致事件を引き起こす国らしいなぁと考えてしまう。

 国際間の行事や取り決めになるとどうしても行き違いや、誤解が生じるのはある程度目をつぶるとしても、意図的に相手国を威圧したり、極端に相手国に不利を強いるような状況を作り出すようなことでは国際親善なんか生まれるわけがない。

 国際外交の場でも、似たようなわけが分らないことがある。どうもTPPが分かりにくいと最近本欄にも書いているが、今までの外交とどうも様子が違う。TPP加盟国はアメリカを中心に9カ国だが、昨日日本が加盟交渉をすると宣言したことによって、カナダとメキシコが参加に前向きな姿勢を表明した。もし仮に実現すると世界経済の約4割がTPP加盟国間で行われることになる。これに対抗して中国がASEANプラス3カ国(中日韓)の構想に、さらにオーストラリア、ニュージーランド、インドを加えて16カ国で広域自由貿易圏の構築を目指す意向のようである。そのうえもっと複雑にしているのは、昨日行われた日米首脳会議で交わされた申し合わせが、日米両国で言うことが違うのである。オバマ大統領と野田首相のトップ会談で話し合われたことが、それぞれの国内で違った伝えられ方をしていることである。こんなことはかつてなかったと思う。なぜか言い出しきれなかったことがあったのではないか。アメリカ国務省のホームページに話し合いとは違うことが発表され、その間違いに気がついた日本政府が抗議するとすぐ取り消された。だが、情報は取り消されないままアメリカ国内でニュースとして流れている。こういう失態とも言うべき行き違いはどう処理しようというのか。

 世の中が複雑になり、ファジーになってくると国レベルも雑になるということなのか。

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1645.2011年11月14日(月) 恩師・飯田鼎先生を偲ぶ。

 大学時代のゼミの恩師・飯田鼎先生が今年5月にお亡くなりになって半年が過ぎた。例年なら先生ご夫妻をお招きして飯田会を開催するのが恒例だが、今日「飯田鼎先生を偲ぶ会」として今春閉館した「九段会館」から、「ハイアット・リージェンシー東京」に会場を変更して先生ご夫妻がおられない、少々寂しい飯田会を開いた。参加者は40数名で、冒頭に先生のご冥福を祈って全員で黙祷し、先生を偲びつつ先生の思い出を参会者がそれぞれ話した。

 誰からも話される思い出話は、素晴らしい先生だった、先生に教えを請うことができて幸せだった、先生の生き方が自分の指針となった、大学生活が意義深いものになったのは飯田先生のお陰である等々、先生を慕う気持ちは誰もひけをとらない。突然お亡くなりになったので、もっと謦咳に触れたかったなど先生を想う気持ちは他のゼミ生には誰にも負けないという人もいた。

 翻って自分自身ゼミに入る前に先生に河上肇の著書を読んでいると申し上げたら、「ゼミに入って河上肇を研究してみたらどうか」と学ぶ方向性を示していただき、先生のご指導をいただきながら結局河上肇が卒業論文のテーマとなった。夏休みに桧原湖のゼミ合宿で勉強したり、遊んだことが懐かしい。卒業後も悩んだ時には先生のお宅を訪ねてサジェスチョンをいただいた。私が処女作「現代・海外武者修行のすすめ」を上梓した折には、事前に先生に拙稿をお送りし添削、推敲のご指導をお願いしたところ、1週間ほどして丁重にコメントを書いて総評を文書にして送っていただいた。それは、拙文には句読点が少なく、ひとつの文章が長すぎるので、もう少し文章をカットするなり、読みやすくするために句点を付け加えたらどうかと分り易いアドバイスをいただいた。その時先生の真摯なお心遣いを感じた。あの時以来何とか文章を書いて来られたのは、まったく飯田先生のお陰である。

 来年には飯田会文集を出すことが報告された。私もその編集委員のひとりを務めることになった。

 今後の飯田会を進め方については、結論は持ち越されたが、先生はお亡くなりになったが、先生の精神はゼミナリストの心の中に生き続けているので、形として何とか残していこうとの声が強い。来年のご命日に先生のお墓参りをして、肩肘張らずにサロン的ムードの中で先生を懐かしく想い出すことができるような集まりになれば良いのではないかと思っている。

2011年11月14日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

1644.2011年11月13日(日) よく分らないTPP参加交渉

 どうも環太平洋経済連携協定(TPP)というのがよく分らない。日本はすったもんだの末TPP参加を決めたと理解していたが、実際はそうではなくTPPへの加盟交渉に参加することを決めたというべきことのようである。道理であれだけTPPへの参加に反対していたリーダー役の山田前農水相が、交渉の場で野田首相が日本の言い分を伝えてくれると確信しているなどと妙に納得したような言い方をしていた。

 ところが、日本にとってはこれからが胸突き八丁らしい。すでに加盟国であるアメリカを始めとする9カ国と個別に交渉するようだ。そこで交渉成立となってからTPPに加盟が認められるスケジュールになっている。日本の加盟を誘っていながらアメリカの対応は、いろいろな思惑が絡んで一筋縄では行かない。すでに、カーク通商代表部代表は日本への参加を歓迎するとしながら、その一方で、農業障壁をなくすことを求めている。更にややこしいのは、日本がアメリカへ近づき過ぎることを懸念して中国が黙っていないことである。中国はいかなる国からもTPPへ招待を受けていないなどと言い出す有様である。これに対してアメリカは「TPPは閉鎖的なクラブではなく、関心のあるすべての国に門戸は開かれている。招待を待つ必要はない」と言い切っている。

 最近の動きからして単純に日本のTPP加盟問題と思っていたが、実はヨーロッパ離れの傾向が見えるアメリカには、太平洋沿岸諸国、及び発展著しいアジア諸国を取り込もうとする近未来の外交・経済戦略があり、その一方で、それに歯止めをかけ、アジアの中で存在感を強めようと反米・親アジアの連携を構築し固めようとする中国の外交戦略の綱引きがある。

 野田首相がわざわざAPEC首脳会議出席のためホノルルへ乗り込んだ時の、APEC諸国の反応もイマイチだった理由もその辺りの事情にある。メディアもそういう報道はあまりせず、この期に及んで実はこうだったという説明の仕方で、分かりにくい。更に分かりにくいのは、野田首相が勇躍乗り込んだハワイだったが、APEC諸国の対応は加盟国ではないと看做したのか首相を仲間に入れてくれないいじめっ子と同じやり方なのである。これも分かりにくいが、外務省スタッフも様子がつかめていないらしい。TPPとは世にも不思議な連合体である。

 さて、昨日東電は福島第1原発の事故後初めて事故現場を報道陣に公開した。テレビ・ニュースで見る限り各建屋は壊滅状態である。報道陣は依然として漏れ出てくる放射線の中をバスの中から見学していた。吉田昌郎・第1発電所長の恐いコメントが新聞に書かれていたが、「3月11日から1週間は死ぬだろうと思ったことが何度かあった」の発言には冗談じゃないと思った。そういう状態にしておいて、東電はそのまま自分たちは一時その現場から逃げ出そうと許し難い卑怯なことを考えたのである。これを断固許さなかったのは、原発に一家言を持つ菅直人・前首相だった。前首相の厳命がなければ、日本中が放射線に冒されていたかも知れないのだ。菅前首相も最後の最後で漸く存在感と責任の一端を示した。

 それにしてもトップたるものは、自分のことばかり考えず、周囲への配慮と影響を忘れてはならないということだろう。

2011年11月13日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

1643.2011年11月12日(土) 日本シリーズに際し、プロ野球界は今後の在り方を考えるべき時

 9日日大三島へ講義に出かけた帰りに、JR三島駅で新幹線に飛び乗ろうと駅構内を走ってエスカレーター上で転倒し、右足向う脛下部をしたたか打ち少々痛むのを我慢していたが、今日になって大分腫れてきたのと右足甲が黒ずんできたので、些か心配になり今朝松本整形医院へ診てもらいに行った。放っておいて痛みを感じることはなく、軽いジャンプをしても特別違和感がないので、先生から湿布をして患部を冷やすことが大事だと言われたが、毎日入浴していると話したところ冷やさなければいけないので、当分入浴を止め湿布をするようご託宣があった。完治するまでしばらく時間がかかるかも知れない。年は取りたくないものだ。

 さて、プロ野球界の最後で最大のイベントである日本シリーズが今日から始まり、延長戦の末セの覇者・中日ドラゴンズがパの福岡ソフトバンク・ホークスを2-1で破って第1戦を飾った。そのお祭に水を差すような事件が昨日あった。あまりチーム内のスキャンダルが表面化しない読売巨人軍内で、球団代表である清武英利氏が、桃井恒和オーナーと原監督と自分で決めた来年度チームの幹部人事案を、事前に了解していた読売本社会長・渡辺恒雄氏が「鶴の一声」によりひっくり返したことは、コンプライアンスにもとると文科省内で記者会見して、渡辺会長のやり方を厳しく批判した。

 当事者のひとり、桃井オーナーは自分がいない場で部下が一方的に自分の上司を告発するが如き言動は許されるべきではないと、サラリーマン街道まっしぐらの上司らしい表現で部下の清武氏の手法を強く非難している。しかし、所詮はコップの中の騒ぎである。普段はあまり内紛らしいトラブルも起こらない巨人軍に、降って湧いたようなスキャンダルである。一部の新聞紙上には、今日始まった日本シリーズに対して失礼だとのコメントが載っているくらいである。

 幸か不幸か、巨人軍オーナー職を7年ほど務めて今年6月に辞めた、ゼミ仲間の滝鼻卓雄くんにとっては、オーナーを辞めたせいで妙なトバッチリが飛んで来なくて良かったかも知れない。

 プロ野球界というのも伏魔殿のようなところがあり、繁栄に胡坐をかいている内に、人気は下り坂となり、かつて巨人軍の中継放送なら視聴率は20%を楽に上回ると言われた。それが、今ではほとんどTV地上波放送もなくなり、よほどの好ゲームでなければ、視聴率は10%以下だというから、奢る平家は久しからずである。それ見たことかという感じである。

 親会社の宣伝部門と考えるだけでは、巨人・阪神の名門チーム以外は企業として利益を生み出すことは難しい。現実につい最近セ・リーグ万年最下位の横浜・ベイスターズがチームごと売りに出された。これまで親会社の庇護の下に企業としてしっかり利益構造を構築することを怠っていたツケが今になって表面化している。

 プロ野球界には今あまりにも問題が多すぎると思う。プロ野球を今後どう発展させていくのか。一度プロ野球機構としても真剣に考えるべき時期に来ているのではないかと思う。

2011年11月12日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

1642.2011年11月11日(金) 野田首相の結論は「TPPに参加」

 わが国がTPPに参加するかどうかで揉めていたが、今夜野田首相は記者会見を開き、TPPに参加する決意を表明した。本当は昨日開く予定だった記者会見をどんづまりで1日延期したうえでの決断である。野田首相は2008年に野党議員として国会でTPPに関して質問している。その頃からTPPに関して一家言持ち、勉強していたようだ。今日まで結論を引っ張ってきたが、大局的に参加が日本にとって利ありと確信してTPPに取り組む覚悟だろう。
 賛成派と慎重派の対立と言われていたが、実際には慎重派ではなく反対派であり、結局野田首相は反対派を配慮しつつ賛成派の意見を汲み取り、明日からハワイで開かれるAPECで、日本の立場を述べることになった。それにしても、それぞれの業種に関わる人たちが自分たちの立場と利益を主張するばかりで、どうにも分かりにくい。首相より大分遅れて私自身不勉強だったが、菅前首相が6月ごろにPTTについて前向きなコメントを述べるまでは、その内容についてまったく知らなかった。国民もほとんどが似たようなものではないかと思う。それ以来急激にPTT問題は俎上に上がり、それぞれの利益を絡むグループが賛否入り乱れて混乱する有様である。
 21分野に亘って細かく交渉するとなると、充分その効果を考えなければならない。1番心配なのは日本の外交力と姿勢が毎度弱腰で交渉に弱く、今度も押し捲られるのではないかという懸念である。それと同時にアメリカから参加を誘われたとは言え、アメリカが必ずしも日本の言い分を黙って聞くわけではなく、むしろアメリカから日本の主張を遠ざけられ、アメリカ議会の承認を得られない心配もある。日米両国ともに国内向きにすんなり受け入れられない事情を抱えている。日本にとっては進むも火ダルマ、退くも火ダルマのような難しい立場にある。
 これから日本にとって本格的な対外交渉が始まる。果たして工業製品を日本にとって有利に交渉できるだろうか。それと同時に農業品について日本が望むような形で交渉できるのだろうか。
 とにかく野田首相は決断して、明日ハワイへ乗り込む。意気込みだけに終らず、少なくとも望みを残してくれるような話し合いを期待したいものである。

2011年11月11日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com