ここへ来て俄かに脚光を浴びているのがビルマ(ミャンマー)の存在である。新聞記事でもここ1週間の間にぐっと露出度を増している。今朝の朝日ではトップ記事であるばかりでなく、2面でも大きく取り上げられている。それは軟禁状態から解放された民主化運動指導者、アウン・サン・スー・チー女史と彼女が率いる国民民主連盟(NLD)が選挙に参加することを決めたことが大きな理由である。来年行われる上下両院の補欠選挙に立候補するため、彼女が率いる国民民主連盟(NLD)は政党として再登録することを中央委員会で決定した。昨年の選挙の際、彼女らNLDが選挙は公正でないとしてボイコットしたが、結果的に反ってNLDの活動が制限されることになった点を反省し、改めて現行の制度の中で自分たちの存在を主張した方が自分たちにとって有利だと判断したのである。
それよりビルマ政府がスタンスを変えつつあるのは、2014年のASEAN首脳会議で議長職を熱望し、そのためにはASEAN諸国との友好的な外交関係を取り戻すことが必要であり、同時に欧米諸国から受けている経済制裁がビルマ経済に大きな負担となり、その解除が重要だったからである。欧米からの制裁解除には民主化運動で収監されている政治犯を解放することが条件であり、まだその条件は満たされていない。欧米諸国にとってビルマの要望を聞き入れようと考えたのは、ビルマ自体が少しスタンスを変えつつあるが、それ以上に欧米諸国がビルマは非民主的と非難を強める裏で、中国政府が離反している隙間に潜り込むような形で経済投資を強め、ビルマ国内における存在感と影響力を強めつつある実情に危機感を抱いたからでもある。
今月イギリスの大臣がビルマ入りを果たし、アメリカも来月にはクリントン国務長官をビルマへ派遣し今後の外交について話し合いをすると発表した。今後ビルマの民主化がどの程度進むのか、中国と欧米諸国の経済支援シェア争いがどうなるのか、何とかビルマ支援に絡みたい日本政府はどういう方策とルートで非民主的なビルマ政府へ食い込むのか、当分目が離せない。