1644.2011年11月13日(日) よく分らないTPP参加交渉

 どうも環太平洋経済連携協定(TPP)というのがよく分らない。日本はすったもんだの末TPP参加を決めたと理解していたが、実際はそうではなくTPPへの加盟交渉に参加することを決めたというべきことのようである。道理であれだけTPPへの参加に反対していたリーダー役の山田前農水相が、交渉の場で野田首相が日本の言い分を伝えてくれると確信しているなどと妙に納得したような言い方をしていた。

 ところが、日本にとってはこれからが胸突き八丁らしい。すでに加盟国であるアメリカを始めとする9カ国と個別に交渉するようだ。そこで交渉成立となってからTPPに加盟が認められるスケジュールになっている。日本の加盟を誘っていながらアメリカの対応は、いろいろな思惑が絡んで一筋縄では行かない。すでに、カーク通商代表部代表は日本への参加を歓迎するとしながら、その一方で、農業障壁をなくすことを求めている。更にややこしいのは、日本がアメリカへ近づき過ぎることを懸念して中国が黙っていないことである。中国はいかなる国からもTPPへ招待を受けていないなどと言い出す有様である。これに対してアメリカは「TPPは閉鎖的なクラブではなく、関心のあるすべての国に門戸は開かれている。招待を待つ必要はない」と言い切っている。

 最近の動きからして単純に日本のTPP加盟問題と思っていたが、実はヨーロッパ離れの傾向が見えるアメリカには、太平洋沿岸諸国、及び発展著しいアジア諸国を取り込もうとする近未来の外交・経済戦略があり、その一方で、それに歯止めをかけ、アジアの中で存在感を強めようと反米・親アジアの連携を構築し固めようとする中国の外交戦略の綱引きがある。

 野田首相がわざわざAPEC首脳会議出席のためホノルルへ乗り込んだ時の、APEC諸国の反応もイマイチだった理由もその辺りの事情にある。メディアもそういう報道はあまりせず、この期に及んで実はこうだったという説明の仕方で、分かりにくい。更に分かりにくいのは、野田首相が勇躍乗り込んだハワイだったが、APEC諸国の対応は加盟国ではないと看做したのか首相を仲間に入れてくれないいじめっ子と同じやり方なのである。これも分かりにくいが、外務省スタッフも様子がつかめていないらしい。TPPとは世にも不思議な連合体である。

 さて、昨日東電は福島第1原発の事故後初めて事故現場を報道陣に公開した。テレビ・ニュースで見る限り各建屋は壊滅状態である。報道陣は依然として漏れ出てくる放射線の中をバスの中から見学していた。吉田昌郎・第1発電所長の恐いコメントが新聞に書かれていたが、「3月11日から1週間は死ぬだろうと思ったことが何度かあった」の発言には冗談じゃないと思った。そういう状態にしておいて、東電はそのまま自分たちは一時その現場から逃げ出そうと許し難い卑怯なことを考えたのである。これを断固許さなかったのは、原発に一家言を持つ菅直人・前首相だった。前首相の厳命がなければ、日本中が放射線に冒されていたかも知れないのだ。菅前首相も最後の最後で漸く存在感と責任の一端を示した。

 それにしてもトップたるものは、自分のことばかり考えず、周囲への配慮と影響を忘れてはならないということだろう。

2011年11月13日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com