今朝の新聞は社説を始めとして昨日政府・民主党が、消費増税案を決定して与野党協議を呼びかけ年度内に法案提出することを高く評価している。国民にとって増税負担より、国家破綻を防ぐことが極めて重要であると野田首相の決断を買っている。同時に議員が選挙を睨んで増税反対論を唱えることを強く批判している。
さて、とうとう大晦日を迎えることになった。大晦日と言えば、樋口一葉の「大つごもり」でお峰が奉公先でお金を盗み、ばれそうになったところで総領息子・石之介の悪事が幸いして一転救われる、何とも侘しく寒々とするシーンを思い出す。これは「十三夜」「大つごもり」「にごりえ」を今井正監督がオムニバス映画として製作し話題をさらった。高校入学直前の春休みに、従姉夫婦に渋谷の映画館で観賞させてもらった、前記の「大つごもり」の主人公・お峰の心理的な場面が強く印象に残っている。中学を卒業したばかりの身にとっては、少々難しかったかも知れないが、思い出に残っている情景である。その後いくつも映画を観ているが、これほど心に残った映画はあまりない。
この2、3日のテレビ画面を観てもエンタメ番組ばかりで、ニュースすらあまり観る機会がない。
今年は何と言っても東日本大震災と福島原発事故が日本中を席捲して、今でも後遺症として被災者のみならず多くの国民の心に深い傷を残した。危険で費用のかかる原発が果たして国家として必要なのかという深刻な問題を、国民につきつけた。しかし、現状は原発の根元のスイッチさえ止められず、未だに放射性物質を流していて事故は解決できていない。今月中旬に政府は事故収束を宣言したが、専門家や地元自治体や住民はそうは思っていない。
こんな中で国民的テーマとして、まだ原発是々非々について真剣な議論が始まらない。これまで「安全」「安い」「きれい」を謳い文句に、わが国のエネルギー政策は、水力発電、火力発電から原子力発電へシフトして、その比重は益々高まっていた。今や上記3原則は否定された。ならば、1日も早く新しいエネルギー対策を打ち出すべきではないかと考えるが、原発の恩恵に浴してきた経産省の高級官僚は前へ進めようとしない。
来年こそは、「脱原発」の動きに勢いをつけ、運動を加速させて危険なエネルギーを廃棄するべきではないだろうか。
5月に大学のゼミの恩師・飯田鼎先生が亡くなられたのも悲しいことだった。半世紀近くに亘り心の支えでもあった。来年は追悼文集を発行することにしているが、編集責任者として先生に自慢できる文集にしたいと思っている。
そのほか個人的にいくつかエッセイは書いたが、願っていた観光書を上梓することは叶わなかった。本来なら昨年上梓すべく準備を進めていたが、共著「そこが知りたい 観光・都市・環境」(交通新聞社刊)の執筆に時間を費やして、1年先送りすることになった。ところが、前著の発行直後の11月に政府の事業仕分けで、観光に対する政府の見方と考え方に疑問を抱いた。その政府の考え方というのは、表面的には観光が国の経済を支える重要な事業と位置付け、海外からの観光客の増加に期待しているスタンスが窺がえたが、実はただ金さえもらえば良いのであって、偶々観光は政府が助成しなくても外貨を稼いでくれるし、雇用拡大の柱にもなるとのイージーな考えから「観光業の成長」を唱えているだけではないかと国の考え方に疑問を持った。その背景にあるのが昨年11月16日に事業仕分けで観光政策を一刀両断の下に予算をカットしたことである。もともと政府や自治体の観光に対する評価は低かった。本音が出ただけである。こんな点から、もっと多くの資料を入手して多面的な視点から切り込んでみたいと考え、執筆を延ばしているのである。
健康面では、気になっていた「痔」は現在診療中で、回復の見込みが高いのでほっとしている。「前立腺」の精密検査の方も、まったく問題ないとの診断なので、やれやれである。問題は入口に来た「糖尿病」であるが、食事面で気を遣い、飲酒はできるだけ避けるようにしている。全体の健康チェックは来年8月に慶応病院に新しくスタートする予防医療センターで診断してもらうことになっている。
二男に初めての子が誕生したので、孫が4人となった。私も73歳となり、そう余生は長くはないかも知れないが、このまま健康体を維持して、来年は著書も上梓してみたいし、何と言っても「アンマンでヨルダン兵に身柄を拘束」されてから、45年目の節目に当たるので、現地を再び訪れ拘束された現場を検証してみたいという願いも実現してみたい。
昨日今年最後の取引となった東京株式市場では、日経平均株価が8455円で終了したが、これは1982年以来29年ぶりの安値であり、円の対ドル相場は年間平均1$=79.79$で年間3%も上昇した。世界的に経済は沈み込み、当分前途に期待が持てない。何とか来年は少しでも今年を上回る景気の良い話を聞きたいものである。
恒例のNHK紅白歌合戦が始まった。今年は東日本大震災を強く意識している。来年こそもう少し良い思い出が残せるような1年であってほしいと思う。