778.2009年6月30日(火) 田母神俊雄・元航空幕僚長、またもや物議を

 あれから6年余が過ぎた。2003年3月20日ウラジオストック空港のトランジットルームで、新潟行きアエロフロート機を待っている間にテレビでそのニュースを知った。イラク戦争の開戦である。開戦以来泥沼の6年が経過したが、まだイラク国内は混乱している。オバマ大統領が就任して米軍主力をアフガニスタンへシフトする戦略展開により、今日アメリカは国内の都市部から米軍駐留部隊を引き上げる。まだ地方都市に軍隊の一部は残るが、いずれ来年8月にはすべての米軍はイラクから撤退する。一応の筋書きはそう出来ている。しかし、最近になって都市部の無差別テロが頻発し、このまま治安悪化の不安が残れば、シナリオが変わる心配もある。

 イラク戦争勃発以来イラク国内におけるイラク人犠牲者は莫大な数となったが、一方アメリカ兵の犠牲者数も4,300人を超えた。イラク、アメリカ双方に大きな傷跡を残して、治安不安定のままイラクは治安部隊(61万4千人)の装備によって、これから独自の統治により国内を安定させ、国民に安心出来る生活を保証しなければならない。このまま治安が保たれていくのかまだまだ予断を許さない。 

 自衛隊の最高幹部である航空幕僚長でありながら、国の防衛政策を否定する論文を書いて罷免された田母神俊雄氏が、広島原爆忌の来る8月6日に広島市内で講演するという。そのテーマが「ヒロシマの平和を疑う」と題するものだというから、広島市民、否日本国民のほとんどの感情を逆撫でするものである。敢えて最も原爆に神経質になっている広島市内へ乗り込んでまで、平和運動に反対するようなタブーに挑戦するテーマで講演する神経は些か常軌を逸していると言わざるを得ない。この人は最近金の亡者のように、本を書き、全国を講演して荒稼ぎしながら持論を訴えている。

 広島市は早速FAXを送り日程変更を田母神氏と講演主催者に要請した。秋葉忠利・広島市長の要請文は「いつどこで何を発言するかは自由である。しかし、被爆者や遺族の悲しみが増す結果になりかねない。広島での8月6日の意味は、表現の自由と同様に重要なもの。被爆者の心情に配慮してほしい」と訴えている。田母神氏の事務所は「主催者の依頼がない限り、変更することはない」と言っているようだが、その主催者である「日本会議広島」では「田母神氏には『真の平和』について語ってもらうが、核武装の話があるかどうかはわからない。市長の要請は、言論の自由を抑圧しているように感じる」とつれない。この「真の平和」というのが、田母神氏の場合は怪しいのである。

 どうも田母神氏と主催者には、テーマ、特別な日時、言論の自由について双方に誤解があるようだ。普通の神経なら誤解しそうもないことだが、この田母神氏は自分の思い込みと信念をどこでも、誰に対しても貫く決意のようで、大分意固地になっている。最早リベラルな主張(田母神氏にはまったく期待できないが)は受け入れられないと割り切って、自らの道をただひたすら突き進むしかないと考えているようだ。言論の自由云々という以前に、どうして被爆者の辛い気持ちを理解しようとしないのか。これに便乗した日本会議広島なる得体の知れない組織にもがっかりである。広島県内の組織がなぜ県民の心情を理解しようとしないで、わざわざ神経に障るような行動を起こそうとするのか。話題を提供して世間を騒がせることだけが目的のような気がする。はてさて、これからどういう決着になるのか。敢えて言えば、これも最近の東国原英夫・宮崎県知事のパフォーマンス同様に目立ちたがり屋のパフォーマンスに見えてしようがない。平成元禄の故なのか、天下泰平なのだろうか。

2009年6月30日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

777.2009年6月29日(月) 真面目で正義の人、岩波茂雄

 所用で福岡へやって来た。東京は快晴だったのに、博多は土砂降りである。地下鉄で博多駅まで来たが、相変わらず博多駅は工事を続けていてどうも分かりにくい。ホテルで明日の打ち合わせに備える。

 文春文庫に山本夏彦の「私の岩波物語」がある。気にも留めなかったが、駒沢大講師が薦めたので八雲図書館から借りてきて頁をめくってみてこれは面白いと思った。岩波書店を起ち上げた岩波茂雄に関する個人的なコメントを始めとして、やヽ岩波に対して厳しい見方で捕らえているようだが、なるほどと頷かされることが多い。

 同書冒頭に以下のような件がある。「岩波茂雄はまじめな人、正義の人として定評がある。私はまじめな人、正義の人ほど始末におえないものはないと思っている。人は困れば何を売っても許されるが、正義だけは売ってはならない、正義の人は汚すと聖書にある」

 やれやれという思いである。というのは、まじめで正義の人を私自身は最も尊敬するからである。福沢諭吉然り、河上肇然りである。これには当然解説が伴うと思う。同書をまだ通読していないので、定かではないが、山本夏彦の言う「始末におえない」人物というのは、加えて頑固で自己主張の強い人ではないかと思っている。悪者、ばか者でないことははっきりしている。自分で言うのも気が引けるが、私自身少々真面目が過ぎて正義感が強すぎるのが、融通の利かない点だと思っている。加えて、頑固で自己主張が強い。一時岩波に憧れたこともあり、スケールは大分違うが岩波茂雄は理想の人物とも思っていた。大正末期の円本に対抗して、岩波文庫を大衆的な価格で良書を安く手に入れられるように、出版業界へ乗り出して行ったことは、世論をリードして、結局時代をリードすることにもなった。

 山本夏彦氏に一言言いたい。真面目で正義の人こそ敬われるべきで、ネイティブな表現で人々をあまり惑わさないでもらいたい。

2009年6月29日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

776.2009年6月28日(日) アマチュア・オーケストラに寛ぐ。

 アマチュア・オーケストラ「上野浅草フィルハーモニー管弦楽団」の定期演奏会が半年ぶりに浅草公会堂で開かれ、いつも通りゼミの仲間が集まった。妻はコーロ・ブリランテのコンサートのため参加出来なかったが、全員で20名のゼミナリストと連れ合いが集まった。演奏曲目はウェーバーの歌劇「魔弾の射手」、リスト「レ・プレリュード」、リムスキー・コルサコフの交響組曲「シェエラザード」である。「魔弾の射手」のスタート部分しか知らないほど全般的に無知だった。もう少しポピュラーな曲でないと私には少々辛い。アンコールでやっとチャイコフスキーの「白鳥の湖」を演奏してくれたので、漸く落ち着いて聴くことができた。

 相変わらずオーケストラ最年長の赤松晋さんはチェリストとして頑張っている。4回目のお披露目なので、われわれもある程度は演奏水準が分かってくる。アマチュアでよくこれだけの演奏とハーモニーを奏でられるものだと感心しきり。約2時間の定期演奏を充分堪能することが出来た。

 終ってからいつも通り「神谷バー」で会食となった。今日はどういうわけが予約してもらっていたが、満員状態で周囲の雑音が煩いこと夥しい。ここへ主賓である赤松夫妻も加わり、騒々しい環境の中で楽しい宴となった。

 誰しも思うことであるが、2年間ゼミで学んだことが卒業後50年近くを経て、学生時代の疑似体験を基に定期的に相集うことが出来るのは実に貴重であり、楽しいことである。幸い恩師である飯田鼎先生もご健在であることがなお一層求心力を高めている。仲間たちとはこれからもしばしば会ってお互いに切磋琢磨していきたいものである。

 3日前に自民党より知事から国政への転進を求められた東国原宮崎県知事が、①全国知事会でまとめられた事項を自民党のマニュフェストに盛り込む、②東国原氏を自民党総裁候補とする、との2つの条件を付けたことが物議を醸している。この知事の条件についていろんなコメントが伝えられているが、年配の自民党議員には格別評判が悪い。知事は真面目に話しているが、自民党議員は怒りきっている。まあ、常識的に言えば怒るのもよく分かる。

 私見を言えば、知事が地方を活性化させるということをしきりに言っているが、その地方の知事になったばかりなのに、約束した4年間の任期を全うしないことがまず問題だと思う。テレビに出演していた経験から、どうも日の当たる方向へ動こうとする様子が窺える。まずは、宮崎県民と約束した公約を任期内に実行することが先決ではないか。このわだかまりは当分解消しそうもない。

2009年6月28日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

775.2009 年6月27日(土) 世界遺産登録維持の難しさ

 昨日のニュースによると、現在世界の世界遺産878箇所のうち、ドイツの「ドレスデン・エルベ渓谷」がユネスコによって世界遺産の登録を取り消されたという。私が訪れた143箇所の世界遺産訪問記録の中にもドレスデンは入っている。これで私の個人記録も1箇所減じて142箇所になったことになる。

 登録抹消の主たる要因は、交通渋滞解消のために、エルベ川を跨ぐ大きな橋を建築することになったからである。美しいドレスデンの景観が橋脚の建設によって台無しにされ、文化遺産の価値を失わせるというのがユネスコの言い分だ。ユネスコは再三に亘ってドレスデン市へ「もし橋脚を建設したら文化遺産の指定を取り消す」と警告を発していた。悩んだ市当局は熟慮の末に、橋梁建設の賛否を住民投票に委ねた。結果的に橋脚建設賛同派が自然保護派を破って橋脚は建設されることになり、文化遺産はその指定を解除されることになった。住民の生活がかかっているだけに、何とも切ない結論である。ドレスデン市民の日常生活上の利便性を考えると、外部のわれわれとしては何も言えない。

 しかし、この世界遺産登録取り消し問題は、われわれ日本人の胸元にも匕首を突きつけている。何でもかんでも世界遺産にしてもらおうとの熱病的世界遺産オタクから一歩身を引いて考えてみるべきである。文化遺産や自然遺産を守ろうとの真摯な気持ちは尊いものであるが、そのまま原形に近い形で守り続けることは、並大抵の努力では難しい。

 実際東洋文化史研究家、アレックス・カー氏が、高野山の散歩道の杭ポストを無許可のまま木製から石製に作りかえたのは、ユネスコによる世界遺産タイトル剥奪の可能性があると指摘していた。そのくらい現状維持のために真摯な気持ちで費用をかけることは、大変なことなのである。

 今日日本では、平泉・中尊寺、富岡製糸工場、富士山ほかが次の世界遺産登録の候補地とされているが、その後に原形のまま後世へ伝えていく強い気持ちがなければ、これらの遺産登録はまったく意味のないものとなる。

 ドレスデンは、戦前美しい都市として知られていたが、戦災により灰燼と化した。それが戦後長い年月をかけて復興された。でも、そこまでだった。われわれもこのドレスデンの例を他山の石として考える必要がある。現実の生活と自然・文化を守ることの選択を迫られた時、われわれはどういう道を選ぶだろうか。

2009年6月27日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

774.2009年6月26日(金) ‘King of Pop’マイケル・ジャクソン逝く。

 今朝アメリカのスーパースターである‘King of Pop’マイケル・ジャクソンが亡くなった。享年50歳だからあまりにも早過ぎる旅立ちであるが、近年のマイケルにはトラブルやスキャンダルが付きまとい、やヽ落ち目の傾向があった。特に数年前には子ども性的虐待容疑で逮捕もされた。歌と踊りの上手さは天才的で、巨万の富を築いたが、白人化するような整形大手術などでかなりの借金も背負っていたという。度々来日して日本にもファンが多かった。‘Thriller’というレコードは100億枚以上も売り上げたというからミリオンセラーどころではない。今夜TVでその13分余のプロモーション・フィルムを観たが、中々見事なもので歌の迫力といい、リズミカルなテンポといい、やはり並のスターではない。

 戦後のスーパースターだったエルビス・プレスリーが1977年42歳で、同じく心臓発作によって亡くなったニュースは偶々ハワイ滞在中に知り、ビートルズのジョン・レノンが1980年40歳の時凶弾に倒れたのを知ったのはマルセイユに滞在中だった。今日マイケルの死は自宅のTVでごく普通に知った。自分自身最近あまり海外へ出歩かなくなった証しだろうか。

 テレビ朝日の「報道ステーション」の中で、一昨日お会いした寺島実郎氏がいみじくもマイケルの死について、40代、50代の中年になってだめになるのを防ぐ支えになるのは、①話し合える友人と配偶者(家族)がいること、②生きていくための使命感を持っていること、と話されていた。スーパースターの心の内にそういうものが欠けていると推察されたのだ。

 駒沢大の2単位の講座は、ひとつは広告掲出の減少に関したもので、広告量の減少が年々進み、特に新聞、TVのへこみ方はどうしようもない。原因はインターネットとフリーペーパーである。新聞販売量の減少は、アメリカでも深刻で今朝の朝日新聞に長い伝統を誇る、シアトルの「シアトル・ポスト・インテリジェンサー」と、デンバーの「ロッキーマウンテン・ニューズ」が倒産したことが報じられていた。そのほかにも「ボストン・グローブ」のような一流新聞でも経営の岐路に立たされている新聞社は多い。かつては新聞社や出版社、テレビ局などは、黙っていても顧客が付いて経営は安定していると見られていたが、時代が変わりインターネットのような想定できなかった新業種の参入により、産業界も大きく変わったのである。

 もうひとつは、検索エンジン‘GOOGLE’の最近のストリート・ビューとか、世界中の出版物のデジタル化によって関係者の著作権問題が起こっている点について、講師が例題を挙げて説明された。特に、最近日本ペンクラブが承服し難いとのコメントを発表したことを例に挙げた。私なりに2月に日本文芸家協会から受け取った手紙について簡単に説明した。

2009年6月26日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

773.2009年6月25日(木) ジャーナリスト岸井成格氏の北朝鮮分析

 多摩大学の公開講座で毎日新聞特別編集顧問・岸井成格(きしいしげただ)氏の講義を聴講した。ジャーナリストとして広く知られ、博識でもあり、その語り口もポイントを掴んでいて分かりやすい。今日のレクチャー「文明の岐路に立つ世界と日本」は内容が多岐に亘り、珍しい話題も多く面白かったが、話題があまりにも広がり過ぎてやゝまとまりがなかったように感じた。その最たるものは、レジュメに項目が列挙されていたにも関わらず、それ以外の話題に時間を割き過ぎてタイムアップになってしまった時間配分にある。もう少し詳しく話を伺いたかったというのが本音である。レジュメに挙げられていながら、話されなかった「座標軸の置き方」「世界に3つ、日本に1つの座標軸」「イラン革命と大統領選挙」については興味があり、ぜひとも岸井氏の見解を伺いたかったが、成らなかったことが大変残念だった。

 冒頭に沈才彬・多摩大教授が岸井氏を紹介されて、1972年6月の佐藤栄作首相退任記者会見で取材記者と首相との間でひと悶着あって、記者団全員が退席した時の張本人が岸井氏であることは初めて知った。あの記者会見は偶々見ていたので、突然のハプニングにびっくりしたことをよく覚えている。その時、記者の気持ちも理解出来るが、記者団が取材しなくなってはお仕舞いではないかとも思った。本人に言わせると若気の至りとのことであるが、ある面で岸井氏も相当気骨のあるジャーナリストである。日頃より的確な表現で事象の因果関係を浮かび上がらせたり、同席者のピントの外れた意見に対してもきちんと指摘したり、中々の人物であると一目置いていた。

 ワシントン特派員時代の日米自動車摩擦問題を取材した体験談と、前段で話された北朝鮮問題に興味をそそられた。北朝鮮が2012年に30数年ぶりに労働党大会開催を決定したと話された。これを機会に強盛大国、核ミサイル大国の道を突き進むだろう。前例(金日成から金正日へ政権世襲)に倣えば、この大会で金正日から3男・金正恩への世襲が正式に承認されるそうである。また、中国が北朝鮮の崩壊を支える立場にあり、朝鮮戦争では国連軍に対して共に戦った同盟意識もあり、このまま支援し続けるだろう。驚いたのは、中国が北朝鮮の核開発、核実験を諌める立場上、その説得の殺し文句は北朝鮮が核の開発を進めると、必ず日本が核開発に乗り出すので、抑えてくれという言葉だそうである。日本の核開発は、能力的に可能なだけに欧米も大分警戒しているらしい。その点で言えば、日本は同盟国からあまり信用されていないようである。先日その北朝鮮を離れた貨物船はどうやらビルマ海域へ近づいているらしい。

 昨日から政界に旋風を巻き起こしている東国原宮崎県知事の、自民党へ突きつけた要望書(知事から国政転出の条件として、自民党総裁候補として推薦する)についても触れられた。やはり政治部記者としての長いキャリアがあり、自民党の立場、執行部の気持ち、長老議員の考え等が、心理面まで踏み込んで興味深く、かつ分かりやすく説明してくれた。ジャーナリストとしては大命題を語るより、どうしても直近の話題の方に話が流れる傾向があるようである。

2009年6月25日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

772.2009年6月24日(水) 寺島実郎先生にご高説を賜る。

 知研「出版プロジェクト」で楽しみにしていた寺島実郎先生への取材を今日午前都内で行った。現在マス・コミで最も売れっ子の「すべてに精通する評論家」の寺島先生は、執筆に、テレビ出演に大童の活躍ぶりである。その蓄積されたノウハウと諸外国現状分析の面で、これまでの学究的知識と頻繁な海外視察による定点観測により、その真っ当な社会解析は並外れており、分析と先行予測は類稀な正確度を誇り各界から信頼されている。財団法人日本総合研究所会長、三井物産戦略研究所会長の要職に加えて、今年4月から多摩大学学長にも就任されている。その他にも文科省・中央教育委員会委員を始め、政府関係の委員を含めて29の役職や委員を委嘱されている。有識者の中でも現在日本で最も多忙なおひとりである。

 以前よりどうしたらこれ程正確な情報分析と予測が出来るのだろうかというのが素朴な疑問だった。ご多忙の中を約1時間に亘りインタビューに応えていただいた。インタビューは、今日に備えて昨日上京された知研・仙台支部長の横野洋卯子さんが担当された。

 昨日入手した横野さん作成の事前質問は、情報収集、構想、自己表現の3つの分野に細かく分けられている。寺島先生から多くの点で印象深い示唆を受けたが、情報はかき集めるだけではダメで、他の事象との相関を考えるべきであると言われたこと、団塊世代への手厳しい指摘、現代若者についての感想、父の転勤に伴う転校体験、三井物産入社直後の海外体験、演繹法と帰納法しか解決手段を持たない秀才、等について伺った多岐に亘る話が大変興味深かった。

 九州から北海道、そして逆コースとまったく異なる土地柄の中で初中等教育を受け、高校時代にクーデンホーフ・カレルギー著「パン・ヨーロッパ」を訳された鹿島守之助氏へ大胆にも直接手紙で訳著をおねだりしたエピソードを披露してくださった。三井物産ではすぐイスラエルへ駐在して、テル・アビブ大学で学んだ体験とイランのIJPC(イラン石油化学プロジェクト)への関わりが、イスラム、或いは諸外国との相関関係の大切さを知るきっかけになったと仰った。

 三井物産へ入った動機について補足的に質問させてもらったが、答えは一般の商社マンとしての入社とは異なり、最初からシンクタンクである三井物産戦略研究所へ入り、商社の営業活動には携わっていないとお答えいただいた。現地で現場の空気を知ったことが、その国について確たる信念を持って論ずることが出来る根拠となっているというお話だった。

 それにしても、現代の若者に力がなくなったとの件では、世の中に不条理とも思える差別とか、貧困差がなくなったことで、若者の間に怒りがなくなったことが原因と仰った。知識人についてもわななくような怒りがなくなった。これはもう人間ではないとまで言われた。ご自身が団塊世代であることについてもろくなものではなく、長い日本の歴史上自由に生きてよいと言われた唯一の世代であり、公から逃げた世代だと自嘲的に話された。そこまで厳しく責めることはないのではないかとも思うが、きっと団塊世代としていたたまれないほど良心の呵責の気持ちが強いのだろう。それと同時に責任を持たずに育った団塊世代の子どもたち、団塊ジュニアについても厳しい見方をされた。団塊ジュニアは「ミーイズム」と呼ばれ、ライフスタイルは不干渉主義、好き勝手のし放題と手厳しい。ホリエモンや、秋葉原無差別殺傷犯人らを始め、「SMAP」が歌う「世界にひとつだけの花」の歌詞なんかもぼろくそだった。

 しかし、寺島語録は頷けることばかりで流石に現実をよく捉えておられると思う。実に教えられることの多い取材だった。寺島先生も終始笑顔を絶やさず、アットホームな雰囲気の中で時間いっぱい格調高いお話を伺った。同席された久恒啓一理事長には、終ってからホテルで昼食をご馳走になった。

2009年6月24日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

771.2009年6月23日(火) 沖縄で64回目の慰霊の日

 終戦から数えて64年目の今日は、沖縄地上戦で命を落とした犠牲者を悼む「慰霊の日」と呼ばれている。戦争犠牲者の碑の前では、ほとんどの人がもう戦争は繰り返さないと誓う。しかし、現実には戦争は無くならず、むしろ近年は地域戦争や民族紛争が頻発している。激戦地となった糸満市摩文仁の丘の平和祈念公園では、沖縄全戦没者追悼式が開かれた。4,500人も参列したこの追悼式には、麻生首相も出席し追悼の言葉を述べた。残念ながら、野党代表者は誰一人として列席しなかった。いつも声高に戦争反対を叫び、国際的に注目を集める核反対運動などでは先頭に立つ共産党や社会党の党首はもちろん、野党第1党の民主党執行部からは誰も現地へ足を運び、戦没者を悼み、追悼文を述べる関係者はいなかった。

 戦没者の名を刻んだ「平和の礎(いしじ)」には、すでに24万人を超える犠牲者が祀られている。口先だけ戦争反対と言ったって、どこまで本心かは分からない。現場で慰霊碑の前に立ち、静かに戦争の情景を思い浮かべ、関係者の話を聞いて、初めて心にずしんと来るものである。僭越だが、私自身の経験から言えば、熾烈な戦いが行われた土地で体験者から話を聞いて自分のイメージをダブらせると、自然に目頭が熱くなってくるものである。そこに追悼の気持ちも生じるのである。だからこそ現場である戦地へ足を運ぶことに意味がある。然るに、憲法改正反対とか、原子力発電所建設反対、自衛隊海外派遣反対とか、とかく派手に報道される運動には力を注ぐが、日本人にとって戦後復興の原点でもある沖縄最後の地上戦と、その犠牲者に対して、そっぽを向いているかの如き、リベラルと称する面々の沈黙は一体全体何だろうか。もう少し誠実な良識と日本人としての心があっても良いのではないかと思う。併せてマス・メディアの見識も問いたい。

 今日は各地で真夏日となり、熊谷市では摂氏33.8度を記録した。この暑い中を歯科、整形外科、内科と医院のはしごである。先日抜けた歯の治療もどうやら終わりとなって、整形外科と内科は定期検査に行く。相変わらず高めの血圧については、整形医と内科医とももう少しこのまま同じ量の投薬で行こうということになった。

2009年6月23日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

770.2009年6月22日(月) ロマンスカー車内での取材

 知研「出版プロジェクト」で私にとって4回目のインタビューは鉄道作家であり、推理作家でもある野村正樹さんだ。野村さんの提案により小田急ロマンスカーの展望車を部分的に借り切って、そこで取材するという珍しい舞台設定になった。出版社も興味を持ってくれ、予備席を含めて22席をリザーブして、小田急電鉄にも前以てこの企画について了解を求めた。

 16座席をフロントガラスに向かって「コ」の字型にアサインして応接間空間を作り、ゆったりした雰囲気の中で取材するということになった。流石に「鉄っちゃん・野村正樹」の面目躍如で心憎いばかりの心配りと演出である。予め質問をお送りしておいたが、特に「知の現場」という書名に関する「知」に拘った質疑となった。

 恐れ入ったのは、事前の質問に対して事前に野村さんから書類により一部回答をいただいたことである。少々難しいインタビューになるかなとの懸念は見事に吹っ飛んだ。野村さんにとっての「知的生産」とは、人間としての理想である「真善美の追求」「清く正しく美しく」のために4つの「識」、つまり「知識」「常識」「見識」「美意識」を磨き、これに触媒を加えて5つの「シン」の行動、端的に言って「発信」「受信」「共振」「疑心」「確信」することであると言われた。野村イズムの斬新な命題が浮かび上がったような気がする。

 ロマンスカー内での質疑は賑やかでやや落ち着きのないものだったが、中々珍しい体験で楽しいものだった。小田原駅では、知研会員の石川均さんがわざわざ年休を取ってワゴン・カーで出迎えてくれ、野村さんが連絡を取ってくれた二宮神社へ案内してくれた。野村さんは小田原で二宮尊徳博物館と報徳二宮神社見学を設営してくれていた。博物館で学芸員の説明を受けた後、草山昭・財団法人報徳福運社理事長から二宮尊徳の偉業と思想についてお話を伺った。草山理事長はかつて報徳二宮神社の宮司だった。昨年ブラジル移民100周年記念行事のためにブラジルへ行かれ、ブラジル日系人から尊徳について学びたいとの熱心な声に接した。帰国後尊徳の像を贈って普及にも力を注いでおられると仰っていた。「報徳精神」というのは、そもそも「神・儒・仏」が一体化したものだとの説明を受けたが、その考えは、神が50%、儒は25%、仏が残りの25%だと教えられた。神が半分も入っていることは中国辺りでは受け入れられないだろうと考えられるが、思想的に難しい中国でも近年二宮尊徳に関する関心が高まってきているということである。また国内でもトヨタ自動織機では、経営の参考のために、尊徳に対する教育を広めたいと言っていたそうだ。今や日本の教科書で尊徳について教えられることはなくなってしまったが、現在のような経済破綻、倫理観の失われた時代だからこそ、反ってその思想が強く求められているとのお説であった。まさにその通りだと思う。

 今日の取材は一風変わった取材になったが、二宮尊徳を見直す機会にもなった。いつまでも印象に残るものである。

2009年6月22日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

769.2009年6月21日(日) 時代は世紀末に近づいているか。

 一昨日懸案となっていた臓器移植法改正案が衆議院で可決された。微妙に異なる4つの案が出されていてどうなるのか国民には分かりにくかったが、結局「脳死は人間の死」との前提が認められたことになる。今日まで法制化が難しかったのは、倫理的な問題を含んでいるため是非を判定する法律に馴染まず、どの政党も国会議員も猫の首に鈴をつけたがらなかったことが原因である。わが国はこれまで高い治療費を支払って海外で手術を受けるという個人的な行為に頼り、問題解決を先送りしてきた。

 先般WHOが臓器提供者の不足から、臓器は同国内で提供されるべきであるとして、外国で臓器提供を受けることを禁ずる警告を発した。それにより日本国内で臓器提供者の少ない現実を踏まえ、臓器提供者の枠を広げようとの発想が、今回の衆議院における法律改正に辿り着いた。しかし、この法律は結果的にさまざまな問題提起を来たしている。国会審議は充分でなくバタバタと決めてしまったことが、専門家の間に不満を募らせている。

 それにしてもこの問題以外にも、この一両日の間の立法と行政のドタバタは目に余る。例えば、一度に3つの法案を可決して、こんな拙速でよいのかと考えてしまう。ここへ来て1日の内に「海賊対処法案」「国民年金法改正案」「税制改正法案」の3法案を通してしまったのである。国会開催期限のことも念頭にあったと思うが、議員はそれぞれの法案の内容が充分分かっているのだろうか。

 行政でもおかしなことがまかり通っている。建設効果が費用に見合わないとして、国土交通省がこの3月末に建設を凍結した国道18路線について、大半は事業が再開されるどんでん返しとなったことである。これでは何のための見直しか。朝令暮改を堂々と繰り返して、政治家も役人もまったく恥じない。国交省の対応には開いた口が塞がらない。金がかかるから工事を停止にしたはずであるが、族議員の要望があればすぐひっくり返してしまうのである。これなら最初から見直しなんて必要なかったのではないか。毎度こんな調子だから、政治家も役人も信用出来ない。

 さて、荒れたイラン国内情勢は、最高指導者・ハメイニ師が選挙の結果は正当であるとして、革新派のムサビ氏や支持者に反対運動の中止を促した。一旦は収まりそうに見えたが、群集は納得せず、暴動一歩手前の騒動になっている。警備隊の発砲により10人が死亡したとも伝えられている。ここもいつ平静さを取り戻すのか。北朝鮮の貨物船もどこへ行ったのか。ビルマはどうなるのか。イラクでは自爆攻撃により60人が亡くなった。

 国内では一部の人間が勝手な振る舞いをして国を劣化させ、世界では無軌道、暴動、無差別殺人が当たり前のようになって世界中に不安の種をばら蒔いている。世紀末的な影が忍び寄っている証左だろうか。

2009年6月21日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com