772.2009年6月24日(水) 寺島実郎先生にご高説を賜る。

 知研「出版プロジェクト」で楽しみにしていた寺島実郎先生への取材を今日午前都内で行った。現在マス・コミで最も売れっ子の「すべてに精通する評論家」の寺島先生は、執筆に、テレビ出演に大童の活躍ぶりである。その蓄積されたノウハウと諸外国現状分析の面で、これまでの学究的知識と頻繁な海外視察による定点観測により、その真っ当な社会解析は並外れており、分析と先行予測は類稀な正確度を誇り各界から信頼されている。財団法人日本総合研究所会長、三井物産戦略研究所会長の要職に加えて、今年4月から多摩大学学長にも就任されている。その他にも文科省・中央教育委員会委員を始め、政府関係の委員を含めて29の役職や委員を委嘱されている。有識者の中でも現在日本で最も多忙なおひとりである。

 以前よりどうしたらこれ程正確な情報分析と予測が出来るのだろうかというのが素朴な疑問だった。ご多忙の中を約1時間に亘りインタビューに応えていただいた。インタビューは、今日に備えて昨日上京された知研・仙台支部長の横野洋卯子さんが担当された。

 昨日入手した横野さん作成の事前質問は、情報収集、構想、自己表現の3つの分野に細かく分けられている。寺島先生から多くの点で印象深い示唆を受けたが、情報はかき集めるだけではダメで、他の事象との相関を考えるべきであると言われたこと、団塊世代への手厳しい指摘、現代若者についての感想、父の転勤に伴う転校体験、三井物産入社直後の海外体験、演繹法と帰納法しか解決手段を持たない秀才、等について伺った多岐に亘る話が大変興味深かった。

 九州から北海道、そして逆コースとまったく異なる土地柄の中で初中等教育を受け、高校時代にクーデンホーフ・カレルギー著「パン・ヨーロッパ」を訳された鹿島守之助氏へ大胆にも直接手紙で訳著をおねだりしたエピソードを披露してくださった。三井物産ではすぐイスラエルへ駐在して、テル・アビブ大学で学んだ体験とイランのIJPC(イラン石油化学プロジェクト)への関わりが、イスラム、或いは諸外国との相関関係の大切さを知るきっかけになったと仰った。

 三井物産へ入った動機について補足的に質問させてもらったが、答えは一般の商社マンとしての入社とは異なり、最初からシンクタンクである三井物産戦略研究所へ入り、商社の営業活動には携わっていないとお答えいただいた。現地で現場の空気を知ったことが、その国について確たる信念を持って論ずることが出来る根拠となっているというお話だった。

 それにしても、現代の若者に力がなくなったとの件では、世の中に不条理とも思える差別とか、貧困差がなくなったことで、若者の間に怒りがなくなったことが原因と仰った。知識人についてもわななくような怒りがなくなった。これはもう人間ではないとまで言われた。ご自身が団塊世代であることについてもろくなものではなく、長い日本の歴史上自由に生きてよいと言われた唯一の世代であり、公から逃げた世代だと自嘲的に話された。そこまで厳しく責めることはないのではないかとも思うが、きっと団塊世代としていたたまれないほど良心の呵責の気持ちが強いのだろう。それと同時に責任を持たずに育った団塊世代の子どもたち、団塊ジュニアについても厳しい見方をされた。団塊ジュニアは「ミーイズム」と呼ばれ、ライフスタイルは不干渉主義、好き勝手のし放題と手厳しい。ホリエモンや、秋葉原無差別殺傷犯人らを始め、「SMAP」が歌う「世界にひとつだけの花」の歌詞なんかもぼろくそだった。

 しかし、寺島語録は頷けることばかりで流石に現実をよく捉えておられると思う。実に教えられることの多い取材だった。寺島先生も終始笑顔を絶やさず、アットホームな雰囲気の中で時間いっぱい格調高いお話を伺った。同席された久恒啓一理事長には、終ってからホテルで昼食をご馳走になった。

2009年6月24日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com