773.2009年6月25日(木) ジャーナリスト岸井成格氏の北朝鮮分析

 多摩大学の公開講座で毎日新聞特別編集顧問・岸井成格(きしいしげただ)氏の講義を聴講した。ジャーナリストとして広く知られ、博識でもあり、その語り口もポイントを掴んでいて分かりやすい。今日のレクチャー「文明の岐路に立つ世界と日本」は内容が多岐に亘り、珍しい話題も多く面白かったが、話題があまりにも広がり過ぎてやゝまとまりがなかったように感じた。その最たるものは、レジュメに項目が列挙されていたにも関わらず、それ以外の話題に時間を割き過ぎてタイムアップになってしまった時間配分にある。もう少し詳しく話を伺いたかったというのが本音である。レジュメに挙げられていながら、話されなかった「座標軸の置き方」「世界に3つ、日本に1つの座標軸」「イラン革命と大統領選挙」については興味があり、ぜひとも岸井氏の見解を伺いたかったが、成らなかったことが大変残念だった。

 冒頭に沈才彬・多摩大教授が岸井氏を紹介されて、1972年6月の佐藤栄作首相退任記者会見で取材記者と首相との間でひと悶着あって、記者団全員が退席した時の張本人が岸井氏であることは初めて知った。あの記者会見は偶々見ていたので、突然のハプニングにびっくりしたことをよく覚えている。その時、記者の気持ちも理解出来るが、記者団が取材しなくなってはお仕舞いではないかとも思った。本人に言わせると若気の至りとのことであるが、ある面で岸井氏も相当気骨のあるジャーナリストである。日頃より的確な表現で事象の因果関係を浮かび上がらせたり、同席者のピントの外れた意見に対してもきちんと指摘したり、中々の人物であると一目置いていた。

 ワシントン特派員時代の日米自動車摩擦問題を取材した体験談と、前段で話された北朝鮮問題に興味をそそられた。北朝鮮が2012年に30数年ぶりに労働党大会開催を決定したと話された。これを機会に強盛大国、核ミサイル大国の道を突き進むだろう。前例(金日成から金正日へ政権世襲)に倣えば、この大会で金正日から3男・金正恩への世襲が正式に承認されるそうである。また、中国が北朝鮮の崩壊を支える立場にあり、朝鮮戦争では国連軍に対して共に戦った同盟意識もあり、このまま支援し続けるだろう。驚いたのは、中国が北朝鮮の核開発、核実験を諌める立場上、その説得の殺し文句は北朝鮮が核の開発を進めると、必ず日本が核開発に乗り出すので、抑えてくれという言葉だそうである。日本の核開発は、能力的に可能なだけに欧米も大分警戒しているらしい。その点で言えば、日本は同盟国からあまり信用されていないようである。先日その北朝鮮を離れた貨物船はどうやらビルマ海域へ近づいているらしい。

 昨日から政界に旋風を巻き起こしている東国原宮崎県知事の、自民党へ突きつけた要望書(知事から国政転出の条件として、自民党総裁候補として推薦する)についても触れられた。やはり政治部記者としての長いキャリアがあり、自民党の立場、執行部の気持ち、長老議員の考え等が、心理面まで踏み込んで興味深く、かつ分かりやすく説明してくれた。ジャーナリストとしては大命題を語るより、どうしても直近の話題の方に話が流れる傾向があるようである。

2009年6月25日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com