778.2009年6月30日(火) 田母神俊雄・元航空幕僚長、またもや物議を

 あれから6年余が過ぎた。2003年3月20日ウラジオストック空港のトランジットルームで、新潟行きアエロフロート機を待っている間にテレビでそのニュースを知った。イラク戦争の開戦である。開戦以来泥沼の6年が経過したが、まだイラク国内は混乱している。オバマ大統領が就任して米軍主力をアフガニスタンへシフトする戦略展開により、今日アメリカは国内の都市部から米軍駐留部隊を引き上げる。まだ地方都市に軍隊の一部は残るが、いずれ来年8月にはすべての米軍はイラクから撤退する。一応の筋書きはそう出来ている。しかし、最近になって都市部の無差別テロが頻発し、このまま治安悪化の不安が残れば、シナリオが変わる心配もある。

 イラク戦争勃発以来イラク国内におけるイラク人犠牲者は莫大な数となったが、一方アメリカ兵の犠牲者数も4,300人を超えた。イラク、アメリカ双方に大きな傷跡を残して、治安不安定のままイラクは治安部隊(61万4千人)の装備によって、これから独自の統治により国内を安定させ、国民に安心出来る生活を保証しなければならない。このまま治安が保たれていくのかまだまだ予断を許さない。 

 自衛隊の最高幹部である航空幕僚長でありながら、国の防衛政策を否定する論文を書いて罷免された田母神俊雄氏が、広島原爆忌の来る8月6日に広島市内で講演するという。そのテーマが「ヒロシマの平和を疑う」と題するものだというから、広島市民、否日本国民のほとんどの感情を逆撫でするものである。敢えて最も原爆に神経質になっている広島市内へ乗り込んでまで、平和運動に反対するようなタブーに挑戦するテーマで講演する神経は些か常軌を逸していると言わざるを得ない。この人は最近金の亡者のように、本を書き、全国を講演して荒稼ぎしながら持論を訴えている。

 広島市は早速FAXを送り日程変更を田母神氏と講演主催者に要請した。秋葉忠利・広島市長の要請文は「いつどこで何を発言するかは自由である。しかし、被爆者や遺族の悲しみが増す結果になりかねない。広島での8月6日の意味は、表現の自由と同様に重要なもの。被爆者の心情に配慮してほしい」と訴えている。田母神氏の事務所は「主催者の依頼がない限り、変更することはない」と言っているようだが、その主催者である「日本会議広島」では「田母神氏には『真の平和』について語ってもらうが、核武装の話があるかどうかはわからない。市長の要請は、言論の自由を抑圧しているように感じる」とつれない。この「真の平和」というのが、田母神氏の場合は怪しいのである。

 どうも田母神氏と主催者には、テーマ、特別な日時、言論の自由について双方に誤解があるようだ。普通の神経なら誤解しそうもないことだが、この田母神氏は自分の思い込みと信念をどこでも、誰に対しても貫く決意のようで、大分意固地になっている。最早リベラルな主張(田母神氏にはまったく期待できないが)は受け入れられないと割り切って、自らの道をただひたすら突き進むしかないと考えているようだ。言論の自由云々という以前に、どうして被爆者の辛い気持ちを理解しようとしないのか。これに便乗した日本会議広島なる得体の知れない組織にもがっかりである。広島県内の組織がなぜ県民の心情を理解しようとしないで、わざわざ神経に障るような行動を起こそうとするのか。話題を提供して世間を騒がせることだけが目的のような気がする。はてさて、これからどういう決着になるのか。敢えて言えば、これも最近の東国原英夫・宮崎県知事のパフォーマンス同様に目立ちたがり屋のパフォーマンスに見えてしようがない。平成元禄の故なのか、天下泰平なのだろうか。

2009年6月30日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com