777.2009年6月29日(月) 真面目で正義の人、岩波茂雄

 所用で福岡へやって来た。東京は快晴だったのに、博多は土砂降りである。地下鉄で博多駅まで来たが、相変わらず博多駅は工事を続けていてどうも分かりにくい。ホテルで明日の打ち合わせに備える。

 文春文庫に山本夏彦の「私の岩波物語」がある。気にも留めなかったが、駒沢大講師が薦めたので八雲図書館から借りてきて頁をめくってみてこれは面白いと思った。岩波書店を起ち上げた岩波茂雄に関する個人的なコメントを始めとして、やヽ岩波に対して厳しい見方で捕らえているようだが、なるほどと頷かされることが多い。

 同書冒頭に以下のような件がある。「岩波茂雄はまじめな人、正義の人として定評がある。私はまじめな人、正義の人ほど始末におえないものはないと思っている。人は困れば何を売っても許されるが、正義だけは売ってはならない、正義の人は汚すと聖書にある」

 やれやれという思いである。というのは、まじめで正義の人を私自身は最も尊敬するからである。福沢諭吉然り、河上肇然りである。これには当然解説が伴うと思う。同書をまだ通読していないので、定かではないが、山本夏彦の言う「始末におえない」人物というのは、加えて頑固で自己主張の強い人ではないかと思っている。悪者、ばか者でないことははっきりしている。自分で言うのも気が引けるが、私自身少々真面目が過ぎて正義感が強すぎるのが、融通の利かない点だと思っている。加えて、頑固で自己主張が強い。一時岩波に憧れたこともあり、スケールは大分違うが岩波茂雄は理想の人物とも思っていた。大正末期の円本に対抗して、岩波文庫を大衆的な価格で良書を安く手に入れられるように、出版業界へ乗り出して行ったことは、世論をリードして、結局時代をリードすることにもなった。

 山本夏彦氏に一言言いたい。真面目で正義の人こそ敬われるべきで、ネイティブな表現で人々をあまり惑わさないでもらいたい。

2009年6月29日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com