我ながらよく続けてこられたと思うこのブログだが、今日で実に連続1500回 を数えることになった。書き出してから4年余を費やした。これは中学3年生時に書き始めた日記が6年余続いたのに次ぐロングランだ。書き続けられた最大の 要因は、書き続けたいというポジティブな意欲だと思う。友人からの激励も強く背中を押してくれた。それに何と言っても書く材料に事欠かないことが大きい。 世相が煩く想定外の事件が多かったこと、普段なら話題にならないことが大きな話題になったことも書く原因となっている。政治家のバカさ加減がこの4年間に 益々強くなっている。これからも彼らが現状のままだと書く材料が益々増えるだろう。
今日の朝日「天声人語」欄には、政治家のボーナス支給に関する話題が皮肉たっぷりに採り上げられていた。当然であろう。議員は262万円、閣僚は350万円、両院議長には440万円、首相は480万 円だそうだが、彼らがこれだけ多額のボーナスに見合う議員活動をどれほどやったのか問いたい。最近の政局遊びで大震災復興へ向け、彼らはむしろ足を引っ 張ったのではないだろうか。財政逼迫の折そういう人たちに国民の税金から給料のおまけであるボーナスまで支給する必要はまったくないと思う。
以前から問題だと感じていたのは、国会議員も含めて公務員にどうしてボーナスを支給するのかという疑問である。ボーナスとは、平素成績を上げたことに対し て半年後にご褒美として経営者が従業員に支払うものであると認識している。従って、成績が悪ければ民間会社では当然ボーナスは支給しない。これに対して議 員や公務員には確実に盆暮れの2回ボーナスが支給される。これは彼らが実績を上げたかどうかに関係なく、また財政的に苦しくても支給される。こんなバカな ことがあるだろうか。これをメディアは今までに取り上げたこともない。これもおかしい。大体役人の成績をどうやって評価するのか。むしろ、あまり働かず、 自治体の足を引っ張るならボーナスなんて支給する必要なんてない。最近の私利私欲、党利党略を剥き出しにした国会議員のふざけた怠慢ぶりを見ていると、彼 らにボーナスなんて支払う理由も根拠もまったくない。ボーナス支給を止めればそれだけでいくら財政が助かるか。
さて、昨日から暑さが厳しくなり、日本で一番暑い都市として知られる、埼玉県熊谷市では39.8℃を記録して、6月としては最高気温となった。一方西日本方面から大雨が移動して豪雨が上高地を襲い、松本と上高地を結ぶ県道を土石流が切断した。上高地に800人の観光客が閉じ込められ、21台のバスも動きが取れなくなってしまった。上高地から出られず、800人 は旅館に泊まったようだ。われわれの時代は上高地へバスが直接入れず、島々までしか行けなかった。上高地と島々間を定期バスがピストン往復して乗客を運ん でいたものだった。それが、今では直接上高地まで観光客を運んでいるようだ。それが騒ぎを大きくした要因のひとつでもある。
さて、今日NHKの ゴールデンアワーに「瀬戸内寂聴が語る・究極の愛 岡本太郎を生涯支えた女性・敏子」という番組が放映された。太郎と敏子を身近に知る寂聴の目から見た二 人の愛だが、普通ではない二人の関係だけにいろいろ憶測が飛ぶのも止むを得まい。しかし、太郎が敏子を妻にしないで養女にした理由なんか、後付で外部の人 がとやかく邪推すべきことではないと思う。太郎の作品を売り込むことにかけて、敏子の力が大きかったことは確かである。それにしても当事者が亡くなった後 で、家族関係にまで立ち入って詮索するのはいかがなものかと思う。
今年の冬に本番組の前段として「タローの塔」という連続ドラマがあった。この中で太郎が慶応幼稚舎時代に寄宿舎から学校へ通っていたストーリーになってい たが、太郎と幼稚舎、普通部を通じて親友だった義父から、幼稚舎に寄宿舎があった話は聞いたことがないし、太郎は電車で楽しく通学していたと聞いていた。 この点に関して放送後NHKに義父の話をメールで知らせたところ、確かに承りましたと感情のない無 機質なメールがあっただけだった。もう少し気の利いたメールを寄越せないものか。ストーリーを精査するなんて話はもちろんなかった。話を面白くするために 創作するのは結構だが、ウソを演出するのはいただけない。
最近マス・メディアがどうも信用できなくなってきた。
2011年のアーカイブ
1499.2011年6月23日(木) 沖縄・慰霊の日に思う。
沖縄慰霊の日である。終戦の年の今日沖縄の地上戦で日本軍の組織的戦闘が事実上終結した。沖縄全戦没者追悼式に 出席した菅首相は、「沖縄だけ負担軽減が遅れているのは慙愧に堪えない。負担軽減と危険性除去に最大限の努力をする」と述べた。もちろん菅首相だけの責任 ではないが、この言葉を聞いていると何か虚しい気がしてならない。あれだけ沖縄県民が辺野古移転を反対している中で、昨日日米外務・防衛閣僚会議 (2+2)で、アメリカが要望していた辺野古のV字型滑走路を日本は期限を1年先延ばしにしながら実際には認めてしまっている。しかも、北澤防衛相は訪米 前に仲井真知事に会い、知事から強い拒絶反応を受け止めながらその場を離れれば背任的な言動をしている。こんなことでよくも沖縄県民に対してはもとより、 政治家として、また自分自身の良心に対して何も咎めることはないのだろうか。
いずれにせよ、沖縄県民は政府の言うことを最早信じてはいないだろう。だが、基地問題が解決に向うわけではなく、沖縄県民に言わせれば悪くなる一方であ る。これではもう政府を信用できず、無力感や脱力感が漂うばかりである。アメリカは極東地区の安全保障のためには沖縄周辺の防衛力を減殺させることはでき ない。そこへ近年中国軍が東アジア海域で露骨な示威活動を始めて周辺国とトラブルが堪えない。アメリカが防衛力を強化しようとするのは、中国軍、特に中国 海軍に対する抑止力を高める狙いがある。そうだとすれば、沖縄周辺は中国と相対するアジア諸国にとっても安全保障上重要な防衛圏である。アメリカにとって はアジアの安全保障上防衛拠点としては、今や沖縄はもっとも重要な基地となってしまった。
問題は何か。今問題になっている基地問題について、沖縄県民以外に基地反対を唱える国民が非常に少ないことではないだろうか。かつての60年 安保闘争を持ち出すまでもなく、国民運動の低調が気になる。例えば、沖縄県外の大学生なんて沖縄問題を真剣に考えたことがあるだろうか。結局身につまされ なければ、誰も自分たちの問題として真剣には考えなくなっている。これは政治家のありようがもたらした問題であるが、マス・メディアの責任も大きいと思 う。今メディアは一番動いているようで、一番手を抜いているように思える。伝えるだけで、まったく批判精神を失っているからだ。また、弱者の視点が欠けて いる。メディアは世論をもっと幅広くすくいあげ国論をリードするようでなければ、存在する意味がない。
もっと沖縄県民の目線に立った報道をしないと、いずれメディアは自らの首を絞めることになるのではないか。
1498.2011年6月22日(水) 宮武外骨が生きていたら、今の政治に何と言うか。
今日駒沢大講座で宮武外骨について昔のビデオを観ながら、その後に清田義昭講師の解説を伺った。これまで外骨については、反骨のジャーナリストとは知って いたが、反体制的行動と気骨ある業績については知らなかった。ユーモア溢れる雑誌や新聞で世相を風刺したが、幾たびも牢獄生活を体験し、その牢獄内で新聞 を発行するという徹底振りまではまったく知らなかった。講師も言っていたが、慶応3年生まれで昭和30年に89歳で亡くなるまで、検挙されることはあっても拷問の末、獄死したり、処刑されることがなかったのは、彼の生き方がある面で官憲から目を逸らせるようなところがあったからではないだろうか。
正義感の強い硬骨漢だが、その中でユーモア精神に溢れている点がよい。
「我に子孫なし・我に学識なし・我に余年なし・我に墳墓なし・我に頭髪なし」というのもいい。
さて、今日会期末を迎えた通常国会が70日 間延長されることになった。連日ごちゃごちゃ内輪揉めばかりしていて、漸く議決で決まったというお粗末の一席である。こう決まった以上8月末まで菅首相に は陣頭指揮してもらって、大震災復興に向けた法律を通して実施に移してほしい。ここ最近政局に取り付かれていた政治家の言動は、あまりにも国民を馬鹿にし ている。ひとりでは何もできない政治家が、何を偉そうなことを言っているのかと思ってしまう。
昨日ワシントンで行われた日米外務・防衛閣僚会議(2+2)では、沖縄県民の反対をよそに辺野古に滑走路を作るという自公政権時代の日米合意に舞い戻っ た。訪米前に北澤防衛相は仲井真・沖縄県知事に辺野古への移転を承認して欲しいと訴えたが、知事は敢然としてこの申し出を蹴った。それを無視したうえで、 辺野古への移転をアメリカに了解する日米合意の確認である。こんな不誠実な手法で大丈夫だろうか。元々鳩山前首相の「最低でも国内県外移設」がポシャッて から、民主党政権のやることなすこと、みんな話にならない。自分たちの意見を固めることもせず、根回しもせず、反対意見を斟酌することもなく、アメリカに 正面からぶつかっても思い通りにいくわけがない。どうしてやることなすことみんなダメなのか。世界は動いているのに、日本だけが福島原発で動けない。これ では政治家は必要ない。
国連事務総長を潘基文現総長がもう一期努めることが決定した。国際通貨基金(IMF) のトップの専務理事にフランスのラガルド財務相がほぼ就任が決まった。これに引き比べてわが国の首相はいつまで現職が務めるのか、近々辞任するとしたらポ スト菅に誰が就くのか。まったく分らない。これだから外国から舐められるのだ。もう好い加減にしろ!宮武外骨が存命なら、何と言っただろうか。
1497.2011年6月21日(水) 外国製原発施設は粗悪品ではないか。
東日本大震災に関する作業、中でも福島原発事故、被災者避難、復興問題が収束へ向けて一向に前進しない。政治が まったく機能しないからである。中国・上海のメディアに「経済一流、官僚二流、政治三流」と皮肉られる所以である。問題山積の法律成立もすべて止まったま まだったが、漸く復興基本法が成立した。内閣に復興庁を設置することは決まったが、実施されるまでは前途多難である。しかも、これはあくまで枠組みが決 まっただけで具体策はこれから決める。すでに震災後100日も経過している。何とまあノロマばかりなのか。被害の酷かった南三陸町長はもっと早くと言い、釜石市長は遅すぎと言い、飯館村長は「今何が必要なのか、現状に即したスピーディな対応を」とスローな対応に苛立ちを募らせている。
その一方で、今日福島第一原発に溜っている高濃度の放射能汚染水の浄化処理施設を試験中に除染装置のポンプが停止した。昨日は放射能の計測値が異常に上 がって作業開始から僅か5時間で停止した。この浄化処理施設はトラブル続きだが、前者は原子力技術に関しては絶対の自信を持つ、名うてのフランス・アレバ 社製であり、後者はアメリカ・キュリオン社製で、いずれも外国製である。日本の科学技術が優れ、科学技術の研究者が世界で一番多く科学技術レベルが最も高 い日本の製品をなぜ採用しないのだろうか。今回の事故発生と同時に非常用発電機が使い物にならなかったが、これもアメリカ製である。どうしてここまで外国 社製に頼らなければいけないのだろうか。
それにしても、汚染水が満杯になりそうなのに、この始末である。まったくいつになったら国民を安心させてくれるのだろうか。
さて、今日駒沢大の公開講座の2時限目に共同通信出身の片山正彦講師が、通信社というものについて分り易く説明してくれた。通信社の沿革と歴史、そして現状、問題点等について話してくれた。世界の大通信社とは今までロイター、AP、UP、UPI等 だと考えていたが、実際はそうではなくアバス(仏)、ウォルフ(独)、ロイター(英)が3大通信社と知って意外な感がした。経営も徐々に通信情報から経済 情報に移り、ロイターでも通信情報は全体のほんの1割程度だというから時代も変わったものである。今やこの業界でもITの寵児・ブルームバーグが頭角を現 しているそうだ。尤もいまのIT時代を考えれば、そうなのかも知れない。
アバスの特派員として戦前日本に派遣されたのが、ゾルゲの仲間で山崎洋さんの父・ブーケリッチ氏であり、それを片山講師に話したところ驚いていた。しかも片山講師が取り組んだ卒業論文がゾルゲ事件の尾崎秀実だというから、更に驚きである。
駒沢大の講座も前回より更に面白くなってきた。
1496.2011年6月20日(月) 明治29年発行の「風俗画報」を読む。
先日吉村昭著「三陸海岸大津波」を読んで、明治29年、昭和8年の大津波が東日本大震災に酷似していることに思わず唸った。吉村はすでに亡くなったが、今回の大震災に合せて増刷再刊された同書の印税を妻の津村節子さんは被災地に寄付するという。政治家にはまったく考えられない発想だ。
吉村は過去の大津波に強い関心を抱いて、三陸津波被害地を毎年歩いていたという。記録文学としても秀逸な作品である。私が関心を抱いたのは、作品に引用されている明治29年当時の挿絵である。写真がなかった当時の臨場感溢れる現場がありありと再現されている。吉村は2つの大津波を調べるために、各地の資料館や図書館を訪れ、当時の小学生の作文を大分参考にしたようだ。素晴らしい挿絵は、明治29年に東陽堂から発行された「風俗画報」から引用している。
ありがたいことにその「風俗画報」の昭和48年復刻版がわが書庫にある。読書好きだった義父がセットで買い求めた遺品である。この明治三陸大津波については、半月刊で明治29年7月10日、25日、8月10日の3回発行された。それぞれB6判・40頁で旧仮名遣いで印刷もそれほど明瞭でないので、中々読み通すのは大変だが、吉村先生にあやかってじっくり読んでみたい。内容も一読して中々興味深いが、7月10日号の裏表紙に予告文が書いてあり面白いので、ここに掲載してみる。
「予告 海嘯被害録中巻 海嘯被害の報の達するや弊堂はいちはやく視察員を被害地に派遣して記事に絵画に其実況を模写し来りしが茲に 風俗画報を臨時増刊して海嘯被害録と題し之を世に公にするを得たり然れども被害の区画たるや莫大なるを以って一朝一夕に正確なる記録を編纂すべくもあらず 故に該海嘯被害録は巻を上中下の三に分ち以て弊堂が世上の読者に被害の実況を報道するの義務を終んと欲す尚中巻には有名なる理学博士巨智部忠承君が記述せ られたる地震津浪に附き地質学上の考説並に全世界中最大最深の海底なるトスカロラ海床の略図をも掲載すべければ上巻を繙き玉ふ者は并せて中巻下巻をも購読 あらむことを乞ふ」
句読点もスペースもない。読みにくいが大体意味は分る。明治29年ごろのインテリ層はこんな文章をすらすら読んでいたのだろう。
1495.2011年6月19日(日) 安いばかりの商品販売ではいずれ旅行会社は行き詰る。
今朝の日経紙「SUNDAY NIKKEI」に紙面の2/3を割いて「海外旅行保険」に関する記事が載っている。独法・国民生活センター発行「月刊国民生活」4月 号に「パックツアー参加の心構えと海外旅行保険」を寄稿しているので、僭越だがタイミングからいって多少内容をパクられているのではないかとチェックして みた。この勝手な思い込みは杞憂に終ったが、そう思ったのは、経済部の記者が書く旅行関係の原稿だから、どうしても実践的な分析や現場論は見られないので はないかと邪推したからである。でもやはり借り物的な書き方になっている。実際保険種類を見比べて単純に比較した内容ばかりなので、やはり私には物足りな い。もう少し実践論を書かないと旅行に関連する内容だけに読者には説得力がないように思う。
それにしてもどうして最近の旅行関係の記事というのは、価格の比較、低価格商品の推奨ばかりなのか。旅行の本質を捉えた、旅行に関心のある人を納得させる 内容になっていない。例えば、インターネット経由の安い保険ばかり薦めている。商品販売も対面販売の店頭販売よりネット販売の利点を強調している。これで は低価格商品企画会社の思う壺で、健全で内容が充実した旅行商品の造成なぞできるわけがない。もちろん商品にもよるが、安かろう悪かろう路線に落ち込んで しまっている。今日の紙面で納得できたのは、クレジットカード付帯保険に関して注意を要するとの囲い込み記事の掲載だけである。
この記事を含めて、旅行業界もいまのまま低価格商品ばかり追及していたのでは、いずれ壁にぶち当たるだろう。もうそろそろ目覚めて旅行の本質を見直したうえで、旅行内容に見合ったリーズナブルな価格設定の商品企画と、ネット商品販売戦略を再検証すべきではないかと思う。
さて、今日菅首相が停止中の原発は安全確認検査が終了したらできるだけ早く再稼動させたいと公式に語った。昨日の海江田経産相の言葉を後押しする発言であ る。大物大臣二人が揃って寝言を言っている。言い訳として今後の日本のエネルギー政策を検討したいとも述べたが、話の順序とやるべきことの順序が違うので はないかと首を傾げたくなる。浜岡原発を停止させたのは、特例だとも述べた。分らないことはないが、いま成すべきは、一刻も早く全原発を停めることであ る。うじゃうじゃ屁理屈を言う人が多くいるが、絶対安全とは言えない危険な科学施設が、一旦事故が起きると簡単には停止できず甚大な費用がかかるという当 たり前の理由からいま止めなければ、いずれ将来に禍根を残すことになるだろう。
1494.2011年6月18日(土) 海江田経産相は何を寝ぼけているのか。
福島第一原発事故発生により、高濃度の放射能汚染水が溜りその処理を始めた途端、僅か5時間で想定より早く基準の放射線量に達したため、装置の運転を停止した。他にも汚泥が溜りその保管場所が少なくなり新たな保管場所を探している。
一方各地に放射能が流れ飛び、あちこちにホットスポットと云われる放射線量の多い地区が見られるとして、各地の自治体でも放射線量を計り出した。来る海水 浴シーズンを目前に太平洋岸の海水浴場でも放射線量を計測し始めた。もう放射線ショックで、東日本中が浮き足立っている。
先日イタリアで国民投票により「脱原発」が決定したことは周知の通りである。精神的にも不安定な状況下で、今日海江田万里・経産相は停止原発の再開を要請 した。福島原発事故の教訓を踏まえて原子力安全・保安院が電力会社に指示していた各地の原発の緊急安全対策が適切に実施されていることを受けて所轄大臣要 請となったらしい。
海江田大臣は一体何を考えているのだろうか。今は緊急安全対策が実施されているか否かを問うている場合ではない。今回の想定外の事故だって、一部には人災 との声も聞く。今は対策云々ではなく、これからの日本にとって原発が必要不可欠なものかどうかを、国民的テーマとして広く国民の意見を募り、議論を戦わせ て結論を出すべき時ではないだろうか。まだ福島事故の収束の見通しも立たず、ましてやその検証もせず、次の段階へ進むのはあまりにも不見識だと言わざるを 得ない。経産省が電力会社や一部の御用学者とグルになって原発再開を急ぐようなら、むしろ大臣は待ったをかけるのが筋ではないだろうか。
幸い原発を抱える自治体では、現状では政府の対策が不充分として再開には慎重である。
しかし、原発は危険なものであり、今回の事故により人力の及ばない点があることもはっきりした。甚大な被害にも散々懲りたはずである。ならば、一歩も二歩も引いて、謙虚にまずは、国民世論を問い、それに従って行動するスタンスが求められるのではないかと思う。
1493.2011年6月17日(木) IMFが日本に消費税増税をアドバイス
久しぶりに自然と野生動物、そしてC.W.ニコルさんが島の人たちに温かい目で接する姿を追ったテレビ番組を観た。今夜放映されたNHK「小笠原諸島・いのちの森と海」で、近いうちに世界遺産に登録されるのではないかと期待を抱かせる小笠原の今日の姿を紹介した秀逸な番組だった。
小笠原諸島は東京都下とは言え、都心から離れすぎていて歴史的にも昭和43年 6月にアメリカから返還されるまでは国籍不明の島で、今でも他の島とは環境と島内のムードが大分違う。ペリー提督が浦賀に停泊する前に立ち寄って、それ以 前に各国から移住した各民族間で長い間交流を続けていたようだ。慌てた幕府が咸臨丸を派遣して日本領土であることを内外にアピールしたという。それでも、 民族間の争いはまったくなく、島民は自分たちを「小笠原人」と呼んでいる。
ニコルさんの観察力と感想がとても良かった。
さて、今夕の新聞を見ておやおやと思った。大震災への財源も考え合わせ、検討されている消費税値上げについて思うように与野党の合意が得られず、もたもたしている間に何とIMFが日本は財政再建に向けて消費税を上げるべきだとのお節介な報告書を発表した。
少々恥ずかしい思いである。IMFのアドバイスをみると、日本の公的債務がGDP比で200%を超える高い水準にあるという点と、日本の消費税率が国際的に低水準である点を指摘している。そのうえで、消費増税は2012年度から実施して、17年度までに現在の5%から15%に引き上げるべきではないかとご親切なご託宣である。
財政再建も歴代内閣がお題目のように唱えるが一向に実現出来ず、税収はどんどん落ちているのに反して歳出は増加する。絶対的にお金が足りないのが分っていながら、まったく手を打とうとしない。そして借金は益々増え、窮屈な生活を強いられる。確かに15%の消費税なんて今の5%から考えれば厳しすぎる増税との感触がある。しかし、最初に増税の話が持ち上がってからその時点で真剣に議論もせず、毎度先送りにするから今どっと負担がかかってきたような印象になるのだ。
毎日見せ付けられる福島原発の進まない作業進捗状況と、内輪揉めばかりで一向に政治を前へ進めようとしない政治家どもの怠惰な姿にはもう飽き飽きである。
1492.2011年6月16日(木) 日本は「脱原発」が難しいのでは?
日経紙夕刊の連載コラム「明日への話題」の水曜欄にこのところドイツ文学者・池内紀氏がエッセイを執筆していて 毎度頷かされる。先週も若者の内向き志向についてご尤もなお説を披露されていた。昨日は「無知、怠慢、欺瞞、罪」について、日本人の福島第一原発事故と原 子力に対する後ろ向きの姿勢に批判的なコメントと反省を書いておられる。
原子力に専門外のドイツ文学者である池内氏が、敢えて指摘する4つの大罪とは、第一に原子力に無知であったことである。第二に原子力が巨大な費用がかかる ことに耳を傾けなかった怠慢である。第三はマイナス面を知っていながら知らないふりをしてきた欺瞞である。第四は以上3点をそのまま無視する方が利益にな ると考えた罪であると説いている。いちいち納得できることであるが、われわれとしては第一に指摘された「無知」が最も反省すべきことであると思う。原子力 とは難しく、専門家以外には理解しにくく知ろうとせずに、彼らに一任しようと考えてきた傾向がある。実際これまで高度な専門的知識を学んだ専門家と原子力 村と呼ばれる特異のエリート集団にすべてが委ねられてきた。専門家はこれまで原子力について学校で教えようとせず、絶対安全と言い、経費はかからず、その うえ二酸化炭素ガスを排出しない利点があると主張して自分たちに任せておいてくれれば安全だと傲慢な態度を取り続けていた。
しかし、今度の福島原発事故では、いかに彼らはデタラメな専門家集団かと思いつくづく思い知らされた。知っている資料や情報を国民に公開することもせず、 自分たちだけですべてを仕切ろうとする思い上がりには、がっかりさせられた。マス・メディアももっと情報を公開して、原発はあらゆる角度から検証して是か 否かを議論する場を提供するべきである。そうして、これまでは原子力についてまったく関心もなかった人々に原子力の知識や情報を与えて、喧々諤々の議論を 戦わせ国民的合意を得られるような議論百出の場作りを提言してほしいと思う。
今朝の朝日に全国の知事から得た原発アンケートに関する回答が載っていた。これだけの大事故を惹起せしめたにも関わらず、脱原発を明言した知事は全国で たったの二人である。それが全国で僅か3人しかいない女性知事のうちの2人、吉村美栄子・山形県知事と嘉田由起子・滋賀県知事である。
一番の被害者である佐藤雄平・福島県知事が無回答というのも理解できない。あれだけ、政府に原発のせいでえらい迷惑を蒙ったと政府の原子力政策に恨みつら みをぶつけていたくせに、このていたらくである。結局原発というのは麻薬のようで、止めたらこれまで得ていた補償金がまったく期待できなくなる。
突き詰めると原発をスタートさせる時点で何らの議論も行われなかったツケが今になって喉元に突き刺さっているのではないかと思う。
1491.2011年6月15日(水) また厄介なオスプレイ配備問題が持ち上がっている。
東日本大震災の復旧と福島原発の収束がまったく見通しが立たず、そこへ菅首相の退陣発言に対する民主党内部の、或いは与野党間の中傷合戦が嵩じて今国会の会期延長の賛否に関して、それぞれ非難の応酬である。まるで子どもの喧嘩である。まったく程度が低い。
10日被災地で酪農家の男性が遺書を残して自殺したが、原発に対する恨みつらみが書かれていた。親族も被災者の悲惨な状況下で国会内で内輪揉めばかりして被災者のことを少しも考えていないと手厳しく非難していた。まったく遺族の言う通りである。
その政権与党・民主党が地盤沈下していく中で、また新たな問題が急浮上した。以前から日米間の協議事項になっていた沖縄・普天間基地に新輸送機を配備する問題である。配備されるのは、ヘリコプターと輸送機を兼ね備えた新型垂直離着陸輸送機「MV22オスプレイ」と呼ばれる機種である。開発段階で度々事故を起こして、その安全性が懸念されていた。加えてオスプレイの騒音問題がある。
しかし、配備以前に普天間基地の移設問題がまだ解決していない。昨年5月には、普天間基地を海外、或いは最低でも国内の県外へ移設すると無責任にも約束し た鳩山由起夫・前首相が、ついにさじを投げ沖縄県民に謝罪して総理職を辞したばかりである。その後も普天間基地移設問題をウヤムヤにしていた民主党政権 は、大震災の影響下に遂にアメリカ側の公式発表により行き詰まり、今日沖縄県内で反対デモが気勢を上げる中で中途半端な結論を出さざるを得なくなった。
何とも節操のない好い加減な説明かと驚くばかりである。北澤防衛大臣の説明とは、オスプレイは現在使用中のCH46中型輸送ヘリに比べると、10万時間飛行当たりの事故率は1.28回で、CH46の1.37回 に比べると低く、騒音も少ないとアメリカからの情報を精査することなく鵜呑みにして応えているだけである。こんな誠意も中身もない回答では、基地自体の存 在に反対している沖縄県民が納得するわけがない。これはオスプレイ配備問題だけに留まらず、米軍沖縄基地使用問題であり、普天間基地移設問題であり、日米 地位協定の問題でもあり、その後ろにあるのは日米同盟の問題である。今の民主党では、とても荷が重くて解決は難しいが、それにしても政治家はもう少し自分 たちの責任を感じて、真面目に仕事をやってほしいものである。