1492.2011年6月16日(木) 日本は「脱原発」が難しいのでは?

 日経紙夕刊の連載コラム「明日への話題」の水曜欄にこのところドイツ文学者・池内紀氏がエッセイを執筆していて 毎度頷かされる。先週も若者の内向き志向についてご尤もなお説を披露されていた。昨日は「無知、怠慢、欺瞞、罪」について、日本人の福島第一原発事故と原 子力に対する後ろ向きの姿勢に批判的なコメントと反省を書いておられる。
  原子力に専門外のドイツ文学者である池内氏が、敢えて指摘する4つの大罪とは、第一に原子力に無知であったことである。第二に原子力が巨大な費用がかかる ことに耳を傾けなかった怠慢である。第三はマイナス面を知っていながら知らないふりをしてきた欺瞞である。第四は以上3点をそのまま無視する方が利益にな ると考えた罪であると説いている。いちいち納得できることであるが、われわれとしては第一に指摘された「無知」が最も反省すべきことであると思う。原子力 とは難しく、専門家以外には理解しにくく知ろうとせずに、彼らに一任しようと考えてきた傾向がある。実際これまで高度な専門的知識を学んだ専門家と原子力 村と呼ばれる特異のエリート集団にすべてが委ねられてきた。専門家はこれまで原子力について学校で教えようとせず、絶対安全と言い、経費はかからず、その うえ二酸化炭素ガスを排出しない利点があると主張して自分たちに任せておいてくれれば安全だと傲慢な態度を取り続けていた。
  しかし、今度の福島原発事故では、いかに彼らはデタラメな専門家集団かと思いつくづく思い知らされた。知っている資料や情報を国民に公開することもせず、 自分たちだけですべてを仕切ろうとする思い上がりには、がっかりさせられた。マス・メディアももっと情報を公開して、原発はあらゆる角度から検証して是か 否かを議論する場を提供するべきである。そうして、これまでは原子力についてまったく関心もなかった人々に原子力の知識や情報を与えて、喧々諤々の議論を 戦わせ国民的合意を得られるような議論百出の場作りを提言してほしいと思う。
  今朝の朝日に全国の知事から得た原発アンケートに関する回答が載っていた。これだけの大事故を惹起せしめたにも関わらず、脱原発を明言した知事は全国で たったの二人である。それが全国で僅か3人しかいない女性知事のうちの2人、吉村美栄子・山形県知事と嘉田由起子・滋賀県知事である。
  一番の被害者である佐藤雄平・福島県知事が無回答というのも理解できない。あれだけ、政府に原発のせいでえらい迷惑を蒙ったと政府の原子力政策に恨みつら みをぶつけていたくせに、このていたらくである。結局原発というのは麻薬のようで、止めたらこれまで得ていた補償金がまったく期待できなくなる。
 突き詰めると原発をスタートさせる時点で何らの議論も行われなかったツケが今になって喉元に突き刺さっているのではないかと思う。

2011年6月16日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com