昨日からお盆休みで帰省する人たちで交通機関、高速道路はかなり混雑している。東北大震災のせいで今年のお盆は 格別なものがある。とりわけ話題を提供したのは、陸前高田市の薪を「京都五山送り火」に使用しないと決定したことである。当初壊滅的な被害を受けた陸前高 田市の犠牲者を供養する言葉を地元の薪に託して、五山送り火で焼いてもらう計画だったが、含まれてもいない放射線騒ぎで中止になり、それが批判を受けて復 活して改めて実施する予定にして準備していたところ、今度は本当に放射性セシウムが検出され、結局中止となった。誰がいけないということではないが、最初 に放射線が検出されなかったのに中止を決定した主催者の、被災者に対する配慮のなさにあったのではないだろうかと考えている。
今世界的な不況による全面株安で各国とも金融不安に覆われているが、日本もご他聞に漏れず株安傾向と、それ以上に国の多額の累積借金にいずれ行き詰まるの ではないかと懸念されているところである。日本より長期国債格付けも下位で恒常的な赤字国家となっているイタリアでは、12日 緊急的な財政再建策を決定した。ラテン気質丸出しで、脱税が多く税の捕捉率の向上が課題となっているイタリアでさえ今度こそは、財政改革に本腰を入れるよ うだ。それに比べて比較的真面目人間の多いとされるわが国では一向に改善策が打ち出されないが、政局にばかりかまけていないで、ここはひとつイタリアを見 習って</B>真剣に財政改革に取り組んでみたらどうだ。
イタリアの歳出削減策は、まず中央と地方で公務員の定員を合せて5万人も減らし人件費を圧縮する。わが国でも、まず「櫂より始めよ」を実践し、高給をも らっている役人が身を削ることから範を示すべきではないか。昨日の本ブログに取り上げたように、定年退職後雇用延長の役人に毎年7割もの給与を支払ってい る場合ではないのだ。さらにイタリアは自治体の統合を促して業務効率をたかめる。同時に、歳入増対策としては、富裕層に新たに5~10%の連帯税を課すそうだ。これだって日本なら鳩山由起夫氏のような金持ち連中から非難轟々であろう。このほかにも祝日を減らして就労日数を増やして生産性を高め、税収の増加を図るという。これによって、2012~3年の2年間で何と財政赤字を「約5兆円」も減らす計画だというから相当な決意なのだろう。
とかく遊び人と見られがちのイタリア人がこれだけの覚悟を示すのは、厳しい自国の財政事情がいずれ国を崩壊させかねないと危機感を感じたからだと思う。反 対もあるだろうが、それを押し切って計画を成し遂げてほしいものである。それに引き比べ日本の政治家、官僚にはこの国が今何をなすべきか、何の発言もせ ず、何の行動も起こそうとしていない。政治家と官僚がこの国をダメにしていることは間違いない。
2011年のアーカイブ
1549.2011年8月12日(金) 甘える役人、愚かな政治家、その陰で苦労する国民
今月4日の本ブログに経産省のトップ3人の更迭に触れた。3人は福島原発事故の対応の拙さと遅れ、九州電力やら せメール事件等の責任を取らされて「更迭」処分となった。その「更迭」が昨日役人のよく使う手であるが「勧奨退職」と名を騙り、退職金の2割程度を上乗せ するという、世間で言う「更迭」ではとても考えられないお土産つき退職ということになった。ともかくわが国は明治維新以来役人には甘いのである。いずれこ の高給役人はいずこかへ天下りして、そこでも何度か「退職金」を戴くことになるのであろう。いつもながら役人にとっては天国である。
7日のブログには人事院が国家公務員定年後のスライド制退職で65歳 まで務めた場合、退職前の給与の7割を毎月受け取れる新人事制度の素案を作成し、9月下旬の国会に提出するということを批判した。それにしてもこんな役人 天国を助長させるような法案を、役人仲間の人事院が堂々作成するとは呆れ果てた。民間では苦労に苦労をして、定年後の職探しに懸命だというにも拘わらず、 役人は黙っていても年金受給年齢の65歳までは現役時代の7割もの給与をいただけるというのだから、役人ほど恵まれた職業はない。
後段の新人事制度については、あまり癪に障るので、朝日「声」欄に投書したが、掲載候補者として規定の名、住所、年齢、職業などを知らせよとの連絡があっ たが、残念ながら掲載される見込みはまずない。書き方が朝日にやや批判的とも取れる文体だったことと、ニュースソースが朝日ではなく日経紙なのでバツが悪 いのか、出し抜かれたと思うのか取り上げてくれそうもない。
最近の朝日は、東電から巨額の広告掲載料を得て馴れ合いが常習化していたと一部週刊誌に暴露されたり、一昨日には医師資格がない人物を被災地の医療行為で 英雄扱いして報道し、今日になって謝罪記事を出したり、些かジャーナリズムとして常軌を逸する傾向が見える。正論ではあるが、彼らにとって都合の悪い「ご 意見番の意見」をボツにすることぐらいどうってことはないのだ。
だが、このまま「役人天国」「官尊民卑」を放ったらかしておいていいものか。メディアが糾弾しなくて誰が国民の下僕・役人たちの「甘い汁体質」を追及し暴くことができるのか。
役人は国民の苦労の裏で、あくどいことをやって甘い汁ばかり吸っている。
役人が役人なら政治家も政治家である。世界の政治家に対するアメリカの民間団体の通信簿が発表された。それが何 と日本の政治家の政治力は世界でもワースト5に入ると判定されたというから情けない。普段から国家、国民のために粉骨砕身努力する様子がほとんど伝わって いないからである。アフガニスタン、イラク、台湾、ベルギーと並んで、日本の「ノータリン政治」を断罪したのである。もっと酷い国もあるとは思うが、日本 が槍玉に挙げられたのは、皮肉の側面もあると思う。それだけ日本の政治家のやることは滑稽なのだ。
もっと国民のために真面目に仕事をしてくれよ。ずる賢い役人とバカボン政治家どもよ。
1548.2011年8月11日(木) 今日もドル安円高の流れ
昨日4日ぶりに反発した株価も世界中の株式市場で今日再び下落した。基軸通貨であるドル安に伴い、円高の退避場として金が買われているようで、街の金 ショップに金製品をかき集めて持ち込む人も多いそうだ。実際田中貴金属の金価格表を見ると、6月末以来じりじり上げ続けてきた金価格は今月に入って急激に 上がり始めた。今日の金価格は1g=4731円だから、昨日に比べても168円も値を上げている。
かつてベトナム戦争当時は金とドルの価格が1オンス=35㌦と決められ、いずれも安定した価値を持ち続けていた。今や小金を持っている人や、成金、新興財閥が金を手づかみでどこへも乗り出してくるようになって、いずれも価値の変動が彼らに左右されるようになった。
いずれにせよ当分ドルの動きが気になるところである。
東日本大震災が発生して今日でちょうど5ヶ月が経つ。毎日毎日繰り返される被災地からのニュースには気の毒だと思うとともに、もう少し明るいニュースはな いのだろうかと思う。どん詰まりになった政局も、あとは菅首相退任の3条件のうち2つは、昨日までに与野党の話し合いがつき、2つ目の特例公債法案が衆議 院を通過したので、残る第3の条件である再生可能エネルギー特別措置法案の成立を待って首相は退任することになる。3つの条件はいずれも震災がらみである が、この第3の法案は政局とは別に減原発、脱原発へ一歩踏み出すものであり、ノロマの政治もスピードアップして欲しいものである。
政局は次の首相選任へ動き出している。後継者不在と言われ、有力な候補者が見当たらなかったが、菅首相が近日辞めることを見越したのか、ここ数日のうちに 「帯に短し襷に長し」の次の首相候補者が雨後の筍の如く立候補の意向を示した。前原前外相、野田経済相、海江田経産相、馬淵前国交相、樽床前民主党国対委 員長、鹿野農水相らが自薦他薦名乗りを上げた。第3の条件を満たした後で、現状6名の次期首相争いの後で選任される新首相が、果たしてしっかり国をまとも な方向へ導いてくれるのか。現状では国民はただそれだけを願っている。
1547.2011年8月10日(水) 野坂昭如氏について小中陽太郎さんと話す。
年2回恒例の「ヨタロウ会」が品川プリンスホテルの「ハプナ」(レストラン名の意味不明)で、会長?小中陽太郎ご夫妻を交え16名 の小中ファンが集まった。いつもながら和気藹々の楽しい雰囲気である。夏休みのせいだろう、小さな子ども連れの家族が大勢いて、広いブッフェ会場は熱気む んむんである。一人当たりの食事代からすればそれほど高くはないが、子ども連れの両親にとっては大変な家計の負担ではないかと余計な心配をしてしまう。
6日の日経朝刊の文化欄に珍しく野坂昭如氏の「戦後66年は砂上の楼閣」と題するエスプリの効いたエッセイが掲載されていた。なぜか文頭にあまり例のないことわり書きがついていた。異例である。「野坂昭如氏(80) は、敗戦の現実を忘れずに、執筆活動を続けてきた。『焼跡闇市派』の作家が受け止めた震災と敗戦をつづってもらった」とある。さらに自分が寄稿したエッセ イに野坂昭如氏と敬称付きである点も些か気にかかった。内容的には、野坂氏らしい鋭い観察眼で、東北大震災と戦後の焼け野原を比較している。震災と空襲の 風景は異なる。空襲の後は一面の焼け野原だったが、震災ではいまだ被災地を瓦礫の海が覆っているという。そういう現象面ばかりでなく、人々の気持ちにも大 きな差が見られるという。実際そうなのかも知れない。私などにはすぐには思いつかない視点であり捉え方である。
ヨタロウ会で小中さんと野坂氏の文章についてしばし話をした。小中さんが一時期「週刊文春」に連載物執筆をしていたのは野坂氏の口利きだったと以前に聞い たことがある。小中さんは今でも野坂氏を兄貴分と立ててお付き合いしておられる。野坂氏は最近年齢と健康面の影響もあり、第一線から退いてしまった感があ るが、お二人は今でも心からのお付き合いをしておられる。小中さんはこのエッセイを読んでおられなかったようだが、野坂氏の文章の特徴を話してくれ、これ は口述筆記で書かれたものだと言っておられた。それ故通常のエッセイ扱いをせず、他人行儀らしい特別な採り上げ方をしたのだと何となく納得した。
小中さんからは9月にベオグラードで開催される国際ペン・セルビア大会について、出来たら通訳団の中心になるであろう山崎洋さんに日本ペンの様子を連絡し ておいた方が良いのではないかとアドバイスいただいた。タイミングよく山崎さんからは今日絵葉書を受け取った。浅田次郎会長が大会に出席されるとの連絡は すでに届いているようだ。今回は山崎さんからも参加を誘われたが、予定が立たず国際ペンには出席する予定はない。
帰りは小中さんの奥様が運転するベンツで自宅まで送ってもらい、すっかりお世話になってしまった。
1546.2011年8月9日(火) この世界的株安はどうなるのだろう?
長崎の「原爆の日」である。今日の田上富久・長崎市長の平和宣言は、原子力に替わる再生可能エネルギーの開発を進める必要性を訴えた。3日前の松井広島市長より自分たちの立場をはっきり主張していた。
さて、アメリカ国債の格付けが1段階下げられてから、世界的に株安傾向に歯止めがかからないようだが、今日は朝刊、夕刊とも一面の見出しが「市場動揺収まらず」「株安・ドル安止まらず」「世界株安止まらず」「東証、一時8700円割れ」とまったく酷いものである。終値は日経平均8944円だったが、対前日△153円で一時は△440円まで値を下げたというから、当分明るい材料がない中で先行きは暗い。
アメリカの株安も拍車がかかる。ストップをかけようと今日オバマ大統領がコメントを発表したが、焼け石に水で一向に止まる様子が見えない。NYのダウ平均は過去6番目の下げ幅で634㌦も下げ、1万㌦を割りそうなトレンドである。
このまま行くと一体どうなるんだろう。
先日来森喜朗事務所とエッセイ原稿の校正についてやりとりしていたが、今日秘書から電話があり、原稿の表現に間違いがあると森喜朗元総理が言っていて、私 と話したいということだったので電話で話をした。私が森さんから聞いた内容が間違っているとは思えないが、すべての内容を聞いているわけでもないので、確 かにイメージで書いたところもある。その点を校正してほしいというのが私の希望であり、森さんがイタリアから帰朝した後の22日に事務所で森さんにお会いして文章内容の詰めをすることになった。少々時間的に余裕があるので助かるが、やはりお忙しい政治家の人たちから、ネゴを取り付けるのは骨が折れる。
1545.2011年8月8日(月) 大学4年時のショッキングな思い出
朝日夕刊にあれっ!と思う記事と写真が載っていた。「留学生の命 日米結び半世紀」と見出しのある記事である。大学4年時の夏休みにアメリカのウェスタン・ミシガン大学(WMU) へ短期留学中に運悪く交通事故に巻き込まれて亡くなった村上由希子さんを顕彰する話題である。夏休み中の事故だったが、2学期になって大学では大きな話題 となった。何よりもあまりにも凄惨で気の毒な不慮の死だったからである。乗車していたバスがトラックに追突してトラックの荷材の鉄パイプが座席前部に座っ ていた彼女の胸部を貫通したという悲惨なものだった。
彼女が亡くなったミシガン州のカラマズーには今彼女の慰霊碑が建てられているということと、彼女の死をきっかけに彼女を記念した奨学生制度が生まれ、現在慶応大とWMUとの間で交換留学生制度も行われているそうである。在学中彼女と話をしたことはなかったが、同じ経済学部の同学年生だったので、三田の授業で見かけることがよくあった。経済学部には女子学生は数少なかったので、その上品な存在は目についた。
このWMUへの短期留学は、当時珍しい3ヶ月程度の短期私費留学だったが、実は私も何とか留学したいと面接試験をうけてみた。ところが、亡父からそんな大金(当時で約40万 円)はとても出せないとあっさり断られ、試験はまだ続いていたが、途中で受験を取り止めた。残念だったが、わがスポンサーから公費留学ならともかく私費留 学にそんな大金は出せないと言われたので、諦めざるを得なかった。結果的にアメリカへ行きたい気持ちを無理やり封印したことが、その後海外へ、海外へとい う気持ちを一層焚きつけたような気がする。そういう気持ちが長く続いたことが、結果的にそのまま旅行業の道へ踏み出すことになり、それが生きがいのように もなった。そういう意味ではこじつければ、今も好きな旅行に関わっていられるその遠因は、WMCへの留学を諦めたことにあるのではないかとも思っている。
亡くなった村上さんの話題とは直接関係ないが、留学というと学生時代のこのWMUへの憧憬が思い浮かんでくる。村上さんの関連記事を機に、改めて卒業アルバムを捲ってみたら、友人が抱える村上さんの黒枠の卒業写真も載っていた。60年安保闘争、山岳部のヒマルチュリ初登頂、ライシャワー駐日米大使の講演、早慶6連戦、最後の早慶戦に勝ち12シーズンぶりに六大学野球リーグ戦で優勝した写真もあった。いずれも懐かしい想い出として甦ってくる。
学生時代は遥か遠くなりにけり、か。
1544.2011年8月7日(日) 腹が立つ人事院の「官尊民卑」「役人天国」
今日の日経朝刊第一面の掲載記事、国家公務員の定年延長に伴う新人事制度に関する人事院の素案を見て唖然とした。相も変わらずわが国には「官尊民卑」が 堂々罷り通っているのだ。素案作りの人事院自体が役所で仲間には甘いし、自分たちの首を絞めることはやりたくないのではないかと疑いたくなる。やはりこう いう素案作りは官とは無関係な組織に任せるべきだと思う。あまりにもすべてが官贔屓、官ペースで進められる傾向がある。
記事の内容は公的年金の支給開始年齢の引き上げに合せて、現在60歳の国家公務員の定年を段階的に引き上げ、その間の給与を「50歳代後半層職員の7割水準に設定する」そうだ。馬鹿なことをするなと言いたい。こんな官僚優遇制度があるだろうか。しかも、この素案作成は民間企業の事例を踏まえて設定したという、まったくデタラメな言い分である。冗談にもほどがある。一般的に60歳の定年を迎え、雇用延長の適用を受けてそのまま同じ企業に働く民間企業従業員で、現役時代(定年直前時の高給与)の7割の給与をいただける恵まれた会社が現在どれだけあると言うのか。
3年前韓国・束草市で開催の国際シンポジウムにパネリストとして招かれ、「定年退職者の日本の現状とこれからの高齢者の生き方」というテーマで講演をした 時、ゼミの友人が勤めるD優良会社を、定年退職後に現役時代の6割の給与をもらえる日本企業の恵まれた具体的な事例として、韓国人と中国人の参加者に説明 した際、羨ましさを伴ったどよめきが起きたほどである。私自身実際これほど待遇の良い企業があるのかと出発前に感じたくらいD社の好条件を羨ましいと思っ た。ほかの一流企業で好景気の恩恵に浴している会社でも、定年後の再雇用で年金受給年齢に達するまでの5年間に現役時代の6割もの給与をもらえる企業がそ んなにあるだろうか。
今度の素案に盛られている条件は、いとも容易く希望者に7割もの給料を提供しようというものである。国家財政が厳しくなっている折柄、民間企業を定年で辞 め、第二の職を懸命に探している多くの失業者を尻目に、ただ平凡に定年まで勤めただけの国家の下僕にこんな大盤振る舞いをする必要がどこにあるのか。まっ たく筋が通らない。
民主党は苦しい財政の中で無理なマニフェストを約束して新たな支出を大幅に増やしてきた。いま子ども手当てが資 金的にも動きが取れなくなり、引っ込めざるを得なくなった。その財源も節約とか、議員定数削減とか、公務員制度改革とか、うまいことばかり言っていたが、 その実すべて実行出来なかった。そんな中で公務員に支払う7割の給与をどの財源から支出するのか。人事院素案の裏には、怪しげな取り決めもあるようだ。公 務員天下りの斡旋、定年延長、60歳超の週15時間30分~30時 間短時間勤務制度(これなんか働く意思がない官僚のための制度ではないか)導入、連合の反対等々、国民を騙しぬいて自分たちだけが甘い汁を吸おうとの腹が ミエミエである。国民を愚弄して、苦しむ国民を他所にうまいことやろうとする腹黒さと盗人根性は徹底的にやっつけなければいけない。
働きもしねぇで、国民の血税でぬくぬくと世間を渡る悪漢・役人には国民全員でレッドカードをぶつけてやろうではないか。
それにしてもこんなに重要な税金ドロボー的行為を、1新聞の報道だけで済ませるようなことはしてもらいたくない。本素案は9月下旬には国会に提出されるそうである。
1543.2011年8月6日(土) 「原爆の日」に広島市長のメッセージは弱い。
66回 目の広島「原爆の日」である。今朝8時広島市内の平和記念公園で記念式典が行われた。松井広島新市長の平和宣言と菅首相のスピーチを聞いた。中でも松井新 市長は秋葉忠利・前市長と同じように核保有国に対して核兵器廃絶に向けたアピールを発信したが、福島第一原発事故をきっかけに「脱原発」を主張するのでは なく、「核と人類は共存出来ないとの思いから脱原発を主張する人々、或いは原子力管理の一層の厳格化とともに、再生可能エネルギーの活用を訴える人々がい るので、日本政府は現状を真摯に受け止め、早急にエネルギー政策を見直し、具体的な対応策を講じていくべきである」と述べた。ここにはアピール度の強い メッセージはない。被爆地の広島市長なら前段のような客観的なコメントではなく、こうすべきであるともう少し突っ込んで広島市民の切実な声を全面に、かつ 主体的に訴えるべきではないだろうか。これでは市長の注文も政府に対して強い説得力を持たない。
原子力の危険について一番訴求力のある人が、なぜか遠慮がちのメッセージしか発せられないのは、どこに原因があるのだろうか。これで広島市民が納得するだろうか。
昨晩NHK大越インタビュアーの質問に対して、なぜか歯切れが悪かったが、これでは世界へ向けて核廃絶を訴える被爆地広島の声が伝わらないのではないかと心配になる。
一方菅首相は「原子力に依存してきたこれまでのエネルギーの将来目標を白紙から見直し、依存度の低減を段階的に進めていくべき」と減原発路線を進める考えを述べた。
さて、世界的な株式同時安が経済界を震撼させている。先週日経平均株価が5.4%も下がったが、ヨーロッパではイタリアの13.1%を筆頭に、ドイツが12.9%、フランスが10.7%も値を下げた。
2日にアメリカ議会が債務上限引き上げを承認して落ち着くかと思っていたところ、ダウも5.8%下げている。そんな中で昨日アメリカの大手格付け会社のひとつ、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)社が米国債の長期格付けを一段階引き下げた。議会が債務上限引き上げ案を通過させたことから、格下げは避けられるとの見方が多かったが、S&Pは独自の判断で連邦政府の赤字削減は不充分と断裁した。S&Pではアメリカ国債はAA+となり、AAAのフランス、ドイツ、イギリス、カナダなどに追い越されたことになる。因みに日本は中国と同じAA-で、イタリアより一段階上だが、スペインやカタールより一段階下の格付けだというから意外である。
それにしてもここ数日間の株式の乱高下には、日本の経済力以上に日本の政治力が反映されているような気がしてならない。
1542.2011年8月5日(金) 世界的連鎖、株式同時安
昨日ついに政府・日銀が為替介入に踏み切り、ドル安円高が一段落するかと思いきや、今度はトリシュ・ヨーロッパ中央銀行総裁がヨーロッパ経済の先行き不透明感を発表した途端、ヨーロッパ株式が下がり始め、それがニューヨーク市場へ影響を及ぼし、ついにダウは対前日512㌦も急落した。それに引きづられ日経平均株価は対前日395円も下がり、9300円を割った。韓国、中国、香港、バンコック、インドなどアジア各地でも軒並み株安である。世界中の不景気に圧倒されて日本の金融サイドの試みなんか翻弄されてしまった感じである。
本ブログでも度々触れた長編エッセイ「トラック島の日系大酋長が見せた大和魂と謎」について、3人の登場者、相澤酋長の親戚、佐々木信也さん、森喜朗元総 理に2度校正原稿を送り、会ったり、電話などで返事をいただいてほぼ推敲を終えたところである。その中で、森さんのご子息が先月末に急逝されたので、森さ んに関する表記が遅れ気味だったが、2日に連絡を取り、今日電話とFAXでやり取りしてもう一度推敲原稿を送り、森さんの最終チェックをお願いしているところである。
やはりこういうエッセイでは、外部の人のチェックを受ける書き方は出来るだけ避けた方が良いかもしれないと感じた。特に、森さんのように政界の要職にある 人に、締めきり期限を決め時間を要求するようなことは少なくした方が良い。まあ何とか満足できる内容になったと思うので、読んでくれた人からは「面白かっ た」と言っていただけるのではないかとちょっぴり期待している。
4月下旬に書き始めてからほぼ3ヶ月かかったが、まあ納得できる内容に仕上がったと思う。
さて、明日は広島原爆記念日である。今日福島原発に関連して松井一実・広島市長がNHKの 取材に応えていたが、「原爆の広島」市長としては、秋葉忠利・前市長に比べて原子力の危険性について考えが少々甘いのではないかと感じた。原爆は絶対認め ないが、原発は一都市から国のエネルギー政策に言及して国の政策を動かすことについては、見守る姿勢を取るというようなニュアンスだった。これでは、広島 市民ならずとも、東北の人たちや長崎県民を始め、心ある人々の期待を大いに損なうのではないか。明日以降松井市長はどんなパフォーマンスを見せるだろう か。その言動に注目したいと考えている。
このところ天候が不安定であるが、動きの遅い台風が沖縄周辺でゆっくり移動している。そのせいで那覇空港発着便が今日はほとんどキャンセルされて、明日の予想も危うい。電力も被害を受けて那覇市内で5万 6千戸が停電している。那覇滞在中のラグビー部の後輩、鈴木敦雄くんから電話があった。加入している保険に関して相談しようとメールを送ったところ、雨と 強風で外出も出来ないホテルからわざわざ携帯で連絡があった。明後日帰京できるかどうか気にしていた。無事に帰って来られることを願っている。
1541.2011年8月4日(木) 原発事故関連で経産省トップ3人更迭
今日の朝刊一面を見てびっくりである。朝日は「原発関連3首脳更迭へ」として松永和夫・経産省次官、寺坂信昭・原子力安全・保安院長、細野哲弘・資源エネ ルギー庁長官ら3トップを首にする記事である。それぞれに事故の対応とやらせメール事件の責任を取らされたことは分る。抜かりがあったことは歴然としてい たからだ。この後で海江田万里・経産相が辞任するようだ。政治が官に優先することは当然で、これについては以前から民主党が公言していた。官としては政治 がだらしなくて皺寄せだけが官に向けられたのでは堪らないとの不満は燻るだろう。ただ、寺坂保安院長には、本人自身やらせメール事件に関わっていたことは 明らかであり、中立であるべき責任者が原発推進へ手を貸したことは言い逃れできないと思う。
また、もっと悪質でしたたかなのは事務方トップの松永次官のようである。すでに彼の行状については「選択」7月号の「罪深きはこの官僚」で槍玉に挙げられ ている。1頁分のスペースを使って「電力利権擁護に奔走する守旧派の親玉」と決め付けられている。電力業界を守るために何でもやる男と見られている。得意 技は、重要会議のトップに多忙な政治家を据え、実質的な議事進行を経済官僚の事務局が牛耳るように仕向ける手法だそうである。これによって政治の介入を避 けたいとの思惑ではないか。菅首相には悉く異を唱え、自民党と手を組むしたたかさである。これでは菅首相と異見を異にする海江田経産相だって、切らざるを 得ないだろう。
次に驚いたのは、同じ朝日の「子ども手当て 今年度限り」というもので、民主党、自民党、公明党の3党が合意した。民主党としては総選挙最大のマニフェス トを取り下げるわけである。その裏には赤字国債発行のために特例公債法案を成立させる前提があり、3党間の取引によって与党民主党は最大の看板を下ろした ことになる。これには、子ども法案以前に施行されていた自公時代の児童手当を復活させるとのネゴがある。二つの法案にはもちろん条件も差もあるが、両党の 意向を足して2で割ることにより大きな歪みを生み出さないようにしようとのパッシブな意図が見える。だが、これでは独自性も哲学もないのではないか。3党 ともに政治家として恥ずかしくないと思っているのだろうか。こういう妥協の産物を生み出すようでは、政治生命は終りというのが常識的な考えである。今後政 治にはまったく期待できないということである。
朝日に対して日経のトップ記事は全面の70% を使って「日立・三菱重工統合へ」とある。かつて、八幡製鉄と富士製鉄、三菱銀行と東京銀行の合併ニュースが報じられた時度肝を抜かれたが、その時以来の ショッキングな経済界の地響きである。2年後の経営統合を目指しているようだが、これが実現すると原子力、鉄道システム、産業機械、IT情報産業までを網羅する世界最大規模の総合インフラ企業となる。売上合計を単純にみても12兆円を上回るそうだから、本当の意味でマンモス企業となる。
時代の変貌と言えばそれまでだが、久原財閥が起した日立はグループ従業員数でも36万人余で、一方の三菱は元々岩崎家から枝分かれした企業で7万人近い従業員を抱えている。両者の従業員にとっても寝耳に水のニュースに驚いたことだろう。
その原因は、新興国の台頭で市場が世界に向っているインフラ製品である。これに諸外国のライバルを打ち克つには、国内企業同士で争っているわけにはいかな い。ましてや、強敵であるフランスや韓国企業は、官民一体で強力な売り込みを展開している。さらに、東北大震災により国内市場が縮小する中で海外に出て 行って勝ち取る必要性が生まれてきた。
従来のようなビジネスモデルが段々通用しにくくなり、あくまで世界を視野に入れたマネジメントを考えていかなければ太刀打ちできなくなっている。
それにしても政治家たちの内輪の論理と政局がらみは、もう好い加減に勘弁してもらいたいものである。
さて、一昨日練習中に急性心筋梗塞で意識不明になっていたサッカー元日本代表の松田直樹選手が入院先の病院で亡くなった。若くしてこんなこともあるのかと思うくらいの突然死だったようだ。妻と3人の子どもを残して、まだ34歳の若さだった。ご冥福を祈りたい。