782.2009年7月4日(土) ミュージカルを鑑賞

 知人の国友よしひろさんが出演するミュージカル公演が北千住駅前の「THERTRE 1010」で行われたので、妻とともに出かけた。演目は「赤ひげ」である。学生のころ三船敏郎主演、加山雄三初助演の映画を観たので、強く印象に残っているが、山本周五郎原作の江戸時代物が果たしてミュージックとして成り立つのか、若干気になっていた。それでいて興味も津々である。宝田明俳優生活55周年記念と銘打っている。

 宝田明ももう80歳近いのではないだろうか。健康問題と声量が気になったが、体格が立派で存在感は大したものである。声もよく通り不安は何もなかった。映画では三船は大スターだったので、圧倒的な迫力があったが、初出演の初々しい加山雄三も修行中の医師「保本登」を無難に演じて、その後青春俳優街道をひた走り、清潔で明るいイメージでヒット作品「若大将シリーズ」を産み出したのは有名な話である。

 ところでどんな役回りを務め、どんな歌を歌ってくれるのかと期待していた国友さんは、第1部で「十兵衛」として寝たままでほとんど台詞はなく、どうなるかと思っていたら第2部では生活苦から気が狂ったまま大団円となった。狂人の芸は難しいと妻は言うが、出来れば歌を聞きたかったというのが本音である。しかし、中々盛況でミュージカルとしても面白く中々見ごたえのあるものだった。

 さて、北朝鮮が国際社会に核実験とミサイル発射による衝撃を与えてから、貨物船「カンナム」号がビルマへ向かっていると噂され、そろそろビルマへ入港する時期と予想されていたが、米海軍作戦部長ゲリー・ラフェッド大将が、今日「カンナム」号はビルマ行きを断念して引き返し始めたと語った。それは緊張緩和となり周辺諸国にとってはほっとするニュースだが、無法者国家北朝鮮は今朝日本海へ向かって3発の弾道ミサイルを発射した。先日のミサイルが安保理決議違反として国連が非難決議を行ったばかりである。

 一方ビルマはビルマでわが道を行っている。幽閉中の民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんに面会を求めるべくビルマを訪問し、タン・シュエ国家平和発展評議会議長と会談したパン・ギムン国連事務総長は、あっさりその要求を拒否されてしまった。国連事務総長のメンツも丸つぶれである。一向に国際社会に対して扉を開けようとしない頑ななビルマ軍政の態度からは、解決の難しさが益々強まってきた。

 悲しいことだが、北朝鮮とビルマは一層孤立化して、国際社会から遊離していくことは間違いない。一体この2つの国はどこへ向かうのだろう。

2009年7月4日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

781.2009年7月3日(金) 都議選告示と鳩山民主党代表の献金疑惑

 総選挙の前哨戦である東京都議会議員選挙が告示された。風前の灯の麻生政権にとっては衆議院議員選挙の前哨戦であり、過去の選挙戦にはないほどの注目を集めている。自民党と公明党の与党がもし敗れるようだと麻生内閣は総辞職し、衆議院は解散と見られている。それだけに、各党とも党首以下幹部が都議選応援に繰り出している。

 はたして各党の思惑通りに行くだろうか。届出が221人に対して定数は127議席で、与野党の内どちらが勝つのか、何とも言えないが、都議選が国政選挙と決定的に異なる点がある。

 それは、国政選挙が小選挙区制なのに対して、地方選挙は中選挙区制であるということである。拮抗した勢力の党から候補者が争った場合、複数の定員に対して与野党から1人ずつ当選する可能性があるからである。よほどのことがない限り、全体として上げ潮の民主党といえども、自公勢力に対して決定的な差をつけることは難しいのではないか。

 さて、鳩山由紀夫・民主党代表の個人献金虚偽記載問題が収まらない。鳩山氏は謝罪し、説明責任は果たしたと説明していた。しかし、どうもこの説明だけでは誰しも納得出来ない。鳩山氏は自分の秘書の誤った処理によって、この不祥事態になったというだけの説明しかしていない。なぜこうなったのかという原因と途中経過については説明がない。複数の故人から個人献金があったことと、名前を記載しなくてもよい5万円以下の献金者の割合が全体の半数以上というのは、いかにも不自然である。ある組織からの大口の献金を、意図的に5万円以下に分けて巧妙に報告書に記入したとしか思えない。比較的清潔と信じられていた鳩山氏のこの無責任と不手際は、何も鳩山氏だけに限ったことではなく、政治家全般に言えることである。小沢一郎・民主党前代表の西松建設献金疑惑問題もすっきりしない。二階国土交通相の西松献金問題もある。まだまだ与謝野馨・財務大臣の怪しげな資金問題もある。

 国民はみんな不満を抱いている。時あたかも本日鳩山氏は、「鳩山由紀夫を告発する会」と称する都内の団体から、政治資金規正法違反容疑で告発された。

2009年7月3日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

780.2009年7月2日(木) 嘘つき政府がひた隠す密約

 60年安保条約改定の際、日米両国政府の間に核持ち込みについて密約があったと秘かな噂があったが、その後安保改定に関わった両国関係者が密約はあったとはっきり口外した。これは外務省密約漏洩事件として、かつて西山太吉・元毎日新聞記者が暴露したが、西山氏のニュースソースが外務省勤務の女性をたぶらかして得た情報だとの側面ばかりが強調され、スキャンダラスな事件として取り扱われた。しかも西山氏は機密文書の窃盗罪として、件の女性とともに起訴され、有罪が確定した。このため密約の解明という本質的な問題が蚊帳の外に置かれるという、理不尽な事件となった。すでに2000年にアメリカ政府の公式外交文書や、その関係者から密約があったとの証言が得られ、日本政府の主要な交渉役だった当時の外務省アメリカ局長・吉野文六氏も密約はあったとはっきり証言している。一方日本政府は徹底して「密約なし」の立場を取り続け、いかに証人がいようとも密約はないと政府見解?を押し通している。

 西山氏は今も訴え続けている。密約文書について証拠を揃えて明らかにした。にも拘わらず、日本政府の手にかかると「ないものはない」となる。こういう政府の立場を普通は、不真面目、不誠実、嘘つき、極悪非道、などと呼ぶ。

 一昨日の各紙が報道したのは、「米軍の核兵器持ち込み~元次官『密約文書あった』」の朝日記事に代表されるものだが、元外務事務次官・村田良平氏が核の存在を肯定する公式文書を引き継いだと述べたのは、日本外交のトップの話だけに日本政府のこれまでの嘘つきを内部から暴露証明する形となった。

 今や秘密文書自体はあったと考えられ、その密約自体も今やそれほどの重要性は認められない。それでありながら、日本政府が依然として秘密文書の存在を否定し続けるのは、なぜだろうか。

 日本政府と自民党有力者のコメントを伝えておこう。まず、河村建夫・官房長官は「歴代の首相、外相が密約の存在を否定している。密約は存在しない」。こういう回答は無責任である。町村信孝・元外相にいたっては「コメントに値しない。存在がないということを証明するのは難しい。ないものはないとしか言いようがない。村田氏の発言している内容の真偽はともかく、一般論として公務員の守秘義務は死ぬまであるのではないか。そこをどう考えているのか」と、公務員として嘘をつき、国民を騙しても役人としてのルールを守れと不満たらたらなのである。こういう連中は、自分が法律を守れないくせに、他人が正義を貫くことが我慢ならないのである。いつのまにか日本はこういう国に成り下がってしまったのである。情けない。

2009年7月2日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

779.2009年7月1日(水) ブルガリア・トラキア王の黄金マスク

 昨日も福岡は断続的に激しい雨だった。予定していた面会は出来たが、相手の方が体調を崩されていて落ち着いて話が出来ず、結局これでは気の利いた取材も出来ないと諦めることにした。折角九州まで来ていながら、目的が達せられず悔しい。しかし、お相手の健康状態が想像以上に悪いのでは出直すより仕様がない。

 そこで午後は福岡市立博物館で開催中の「よみがえる黄金文明展」を見学した。2004年8月にブルガリアで発見されたBC5世紀のトラキア王の黄金マスクが売り物である。トラキア国といっても一般にあまり馴染みがないが、現在のブルガリアの南部にあたり黒海に面している。こういう珍しい秘宝を地方都市で見られるのも嬉しい。館内はよく配置された展示になっていて、中々面白く久しぶりにブルガリアの匂いを嗅いだ。かつて訪れたことのあるプロブディフ市近郊のトラキア王族の墳墓から発掘されたものが多い。

 今回鳴り物入りPRしているトラキア王の黄金マスクは、これまでに発見されたギリシャのアガメムノン王(1876年)、エジプトのツタンカーメン王(1922年)に次ぐ世界3大黄金マスクの発見であるといわれている。暗闇にライトを当てられたトラキア王のマスクは、神々しい感じである。今まで知らなかったが、トロイア戦争でギリシャ軍を率いたのがアガメムノンで、トロイア軍に味方したのがトラキア軍だったそうで、近著「停年オヤジの海外武者修行」に図々しくトロイア戦争について書いたが、この辺りまでは触れていなかった。まだ学ぶべきものが山とあり、ゴールはない。

 それにしてもこの展示は、降雨の中にも関わらず中学生の団体を始め多くの入館者が来られた。こういう催しに沢山の人が押しかけるというのは、大分日本人の文化欲求度が上がっているせいだろうか。

 大雨が去ったかと思ったら、今日もまた北九州地方は激しい雨が降っているようだ。間の悪い時に福岡を訪れたことになる。

 さて、民主党・鳩山由紀夫代表の個人献金者の中に、死者が何人も含まれていたというから奇々怪々で政治家というのは亡者とも付き合いがあることを実証したことになる。実際献金していなかった人も献金者に名を連ねていたり、法の目を掻い潜って可笑しな操作をやっていたのではないかとつい勘ぐりたくなる。前代表の小沢一郎にしろ、現代表の鳩山由紀夫にしろ、いつもトップが金にまつわる事件を起している。こんなことで政権を与党・自民党から奪うことが出来るのか。

2009年7月1日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

778.2009年6月30日(火) 田母神俊雄・元航空幕僚長、またもや物議を

 あれから6年余が過ぎた。2003年3月20日ウラジオストック空港のトランジットルームで、新潟行きアエロフロート機を待っている間にテレビでそのニュースを知った。イラク戦争の開戦である。開戦以来泥沼の6年が経過したが、まだイラク国内は混乱している。オバマ大統領が就任して米軍主力をアフガニスタンへシフトする戦略展開により、今日アメリカは国内の都市部から米軍駐留部隊を引き上げる。まだ地方都市に軍隊の一部は残るが、いずれ来年8月にはすべての米軍はイラクから撤退する。一応の筋書きはそう出来ている。しかし、最近になって都市部の無差別テロが頻発し、このまま治安悪化の不安が残れば、シナリオが変わる心配もある。

 イラク戦争勃発以来イラク国内におけるイラク人犠牲者は莫大な数となったが、一方アメリカ兵の犠牲者数も4,300人を超えた。イラク、アメリカ双方に大きな傷跡を残して、治安不安定のままイラクは治安部隊(61万4千人)の装備によって、これから独自の統治により国内を安定させ、国民に安心出来る生活を保証しなければならない。このまま治安が保たれていくのかまだまだ予断を許さない。 

 自衛隊の最高幹部である航空幕僚長でありながら、国の防衛政策を否定する論文を書いて罷免された田母神俊雄氏が、広島原爆忌の来る8月6日に広島市内で講演するという。そのテーマが「ヒロシマの平和を疑う」と題するものだというから、広島市民、否日本国民のほとんどの感情を逆撫でするものである。敢えて最も原爆に神経質になっている広島市内へ乗り込んでまで、平和運動に反対するようなタブーに挑戦するテーマで講演する神経は些か常軌を逸していると言わざるを得ない。この人は最近金の亡者のように、本を書き、全国を講演して荒稼ぎしながら持論を訴えている。

 広島市は早速FAXを送り日程変更を田母神氏と講演主催者に要請した。秋葉忠利・広島市長の要請文は「いつどこで何を発言するかは自由である。しかし、被爆者や遺族の悲しみが増す結果になりかねない。広島での8月6日の意味は、表現の自由と同様に重要なもの。被爆者の心情に配慮してほしい」と訴えている。田母神氏の事務所は「主催者の依頼がない限り、変更することはない」と言っているようだが、その主催者である「日本会議広島」では「田母神氏には『真の平和』について語ってもらうが、核武装の話があるかどうかはわからない。市長の要請は、言論の自由を抑圧しているように感じる」とつれない。この「真の平和」というのが、田母神氏の場合は怪しいのである。

 どうも田母神氏と主催者には、テーマ、特別な日時、言論の自由について双方に誤解があるようだ。普通の神経なら誤解しそうもないことだが、この田母神氏は自分の思い込みと信念をどこでも、誰に対しても貫く決意のようで、大分意固地になっている。最早リベラルな主張(田母神氏にはまったく期待できないが)は受け入れられないと割り切って、自らの道をただひたすら突き進むしかないと考えているようだ。言論の自由云々という以前に、どうして被爆者の辛い気持ちを理解しようとしないのか。これに便乗した日本会議広島なる得体の知れない組織にもがっかりである。広島県内の組織がなぜ県民の心情を理解しようとしないで、わざわざ神経に障るような行動を起こそうとするのか。話題を提供して世間を騒がせることだけが目的のような気がする。はてさて、これからどういう決着になるのか。敢えて言えば、これも最近の東国原英夫・宮崎県知事のパフォーマンス同様に目立ちたがり屋のパフォーマンスに見えてしようがない。平成元禄の故なのか、天下泰平なのだろうか。

2009年6月30日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

777.2009年6月29日(月) 真面目で正義の人、岩波茂雄

 所用で福岡へやって来た。東京は快晴だったのに、博多は土砂降りである。地下鉄で博多駅まで来たが、相変わらず博多駅は工事を続けていてどうも分かりにくい。ホテルで明日の打ち合わせに備える。

 文春文庫に山本夏彦の「私の岩波物語」がある。気にも留めなかったが、駒沢大講師が薦めたので八雲図書館から借りてきて頁をめくってみてこれは面白いと思った。岩波書店を起ち上げた岩波茂雄に関する個人的なコメントを始めとして、やヽ岩波に対して厳しい見方で捕らえているようだが、なるほどと頷かされることが多い。

 同書冒頭に以下のような件がある。「岩波茂雄はまじめな人、正義の人として定評がある。私はまじめな人、正義の人ほど始末におえないものはないと思っている。人は困れば何を売っても許されるが、正義だけは売ってはならない、正義の人は汚すと聖書にある」

 やれやれという思いである。というのは、まじめで正義の人を私自身は最も尊敬するからである。福沢諭吉然り、河上肇然りである。これには当然解説が伴うと思う。同書をまだ通読していないので、定かではないが、山本夏彦の言う「始末におえない」人物というのは、加えて頑固で自己主張の強い人ではないかと思っている。悪者、ばか者でないことははっきりしている。自分で言うのも気が引けるが、私自身少々真面目が過ぎて正義感が強すぎるのが、融通の利かない点だと思っている。加えて、頑固で自己主張が強い。一時岩波に憧れたこともあり、スケールは大分違うが岩波茂雄は理想の人物とも思っていた。大正末期の円本に対抗して、岩波文庫を大衆的な価格で良書を安く手に入れられるように、出版業界へ乗り出して行ったことは、世論をリードして、結局時代をリードすることにもなった。

 山本夏彦氏に一言言いたい。真面目で正義の人こそ敬われるべきで、ネイティブな表現で人々をあまり惑わさないでもらいたい。

2009年6月29日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

776.2009年6月28日(日) アマチュア・オーケストラに寛ぐ。

 アマチュア・オーケストラ「上野浅草フィルハーモニー管弦楽団」の定期演奏会が半年ぶりに浅草公会堂で開かれ、いつも通りゼミの仲間が集まった。妻はコーロ・ブリランテのコンサートのため参加出来なかったが、全員で20名のゼミナリストと連れ合いが集まった。演奏曲目はウェーバーの歌劇「魔弾の射手」、リスト「レ・プレリュード」、リムスキー・コルサコフの交響組曲「シェエラザード」である。「魔弾の射手」のスタート部分しか知らないほど全般的に無知だった。もう少しポピュラーな曲でないと私には少々辛い。アンコールでやっとチャイコフスキーの「白鳥の湖」を演奏してくれたので、漸く落ち着いて聴くことができた。

 相変わらずオーケストラ最年長の赤松晋さんはチェリストとして頑張っている。4回目のお披露目なので、われわれもある程度は演奏水準が分かってくる。アマチュアでよくこれだけの演奏とハーモニーを奏でられるものだと感心しきり。約2時間の定期演奏を充分堪能することが出来た。

 終ってからいつも通り「神谷バー」で会食となった。今日はどういうわけが予約してもらっていたが、満員状態で周囲の雑音が煩いこと夥しい。ここへ主賓である赤松夫妻も加わり、騒々しい環境の中で楽しい宴となった。

 誰しも思うことであるが、2年間ゼミで学んだことが卒業後50年近くを経て、学生時代の疑似体験を基に定期的に相集うことが出来るのは実に貴重であり、楽しいことである。幸い恩師である飯田鼎先生もご健在であることがなお一層求心力を高めている。仲間たちとはこれからもしばしば会ってお互いに切磋琢磨していきたいものである。

 3日前に自民党より知事から国政への転進を求められた東国原宮崎県知事が、①全国知事会でまとめられた事項を自民党のマニュフェストに盛り込む、②東国原氏を自民党総裁候補とする、との2つの条件を付けたことが物議を醸している。この知事の条件についていろんなコメントが伝えられているが、年配の自民党議員には格別評判が悪い。知事は真面目に話しているが、自民党議員は怒りきっている。まあ、常識的に言えば怒るのもよく分かる。

 私見を言えば、知事が地方を活性化させるということをしきりに言っているが、その地方の知事になったばかりなのに、約束した4年間の任期を全うしないことがまず問題だと思う。テレビに出演していた経験から、どうも日の当たる方向へ動こうとする様子が窺える。まずは、宮崎県民と約束した公約を任期内に実行することが先決ではないか。このわだかまりは当分解消しそうもない。

2009年6月28日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

775.2009 年6月27日(土) 世界遺産登録維持の難しさ

 昨日のニュースによると、現在世界の世界遺産878箇所のうち、ドイツの「ドレスデン・エルベ渓谷」がユネスコによって世界遺産の登録を取り消されたという。私が訪れた143箇所の世界遺産訪問記録の中にもドレスデンは入っている。これで私の個人記録も1箇所減じて142箇所になったことになる。

 登録抹消の主たる要因は、交通渋滞解消のために、エルベ川を跨ぐ大きな橋を建築することになったからである。美しいドレスデンの景観が橋脚の建設によって台無しにされ、文化遺産の価値を失わせるというのがユネスコの言い分だ。ユネスコは再三に亘ってドレスデン市へ「もし橋脚を建設したら文化遺産の指定を取り消す」と警告を発していた。悩んだ市当局は熟慮の末に、橋梁建設の賛否を住民投票に委ねた。結果的に橋脚建設賛同派が自然保護派を破って橋脚は建設されることになり、文化遺産はその指定を解除されることになった。住民の生活がかかっているだけに、何とも切ない結論である。ドレスデン市民の日常生活上の利便性を考えると、外部のわれわれとしては何も言えない。

 しかし、この世界遺産登録取り消し問題は、われわれ日本人の胸元にも匕首を突きつけている。何でもかんでも世界遺産にしてもらおうとの熱病的世界遺産オタクから一歩身を引いて考えてみるべきである。文化遺産や自然遺産を守ろうとの真摯な気持ちは尊いものであるが、そのまま原形に近い形で守り続けることは、並大抵の努力では難しい。

 実際東洋文化史研究家、アレックス・カー氏が、高野山の散歩道の杭ポストを無許可のまま木製から石製に作りかえたのは、ユネスコによる世界遺産タイトル剥奪の可能性があると指摘していた。そのくらい現状維持のために真摯な気持ちで費用をかけることは、大変なことなのである。

 今日日本では、平泉・中尊寺、富岡製糸工場、富士山ほかが次の世界遺産登録の候補地とされているが、その後に原形のまま後世へ伝えていく強い気持ちがなければ、これらの遺産登録はまったく意味のないものとなる。

 ドレスデンは、戦前美しい都市として知られていたが、戦災により灰燼と化した。それが戦後長い年月をかけて復興された。でも、そこまでだった。われわれもこのドレスデンの例を他山の石として考える必要がある。現実の生活と自然・文化を守ることの選択を迫られた時、われわれはどういう道を選ぶだろうか。

2009年6月27日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

774.2009年6月26日(金) ‘King of Pop’マイケル・ジャクソン逝く。

 今朝アメリカのスーパースターである‘King of Pop’マイケル・ジャクソンが亡くなった。享年50歳だからあまりにも早過ぎる旅立ちであるが、近年のマイケルにはトラブルやスキャンダルが付きまとい、やヽ落ち目の傾向があった。特に数年前には子ども性的虐待容疑で逮捕もされた。歌と踊りの上手さは天才的で、巨万の富を築いたが、白人化するような整形大手術などでかなりの借金も背負っていたという。度々来日して日本にもファンが多かった。‘Thriller’というレコードは100億枚以上も売り上げたというからミリオンセラーどころではない。今夜TVでその13分余のプロモーション・フィルムを観たが、中々見事なもので歌の迫力といい、リズミカルなテンポといい、やはり並のスターではない。

 戦後のスーパースターだったエルビス・プレスリーが1977年42歳で、同じく心臓発作によって亡くなったニュースは偶々ハワイ滞在中に知り、ビートルズのジョン・レノンが1980年40歳の時凶弾に倒れたのを知ったのはマルセイユに滞在中だった。今日マイケルの死は自宅のTVでごく普通に知った。自分自身最近あまり海外へ出歩かなくなった証しだろうか。

 テレビ朝日の「報道ステーション」の中で、一昨日お会いした寺島実郎氏がいみじくもマイケルの死について、40代、50代の中年になってだめになるのを防ぐ支えになるのは、①話し合える友人と配偶者(家族)がいること、②生きていくための使命感を持っていること、と話されていた。スーパースターの心の内にそういうものが欠けていると推察されたのだ。

 駒沢大の2単位の講座は、ひとつは広告掲出の減少に関したもので、広告量の減少が年々進み、特に新聞、TVのへこみ方はどうしようもない。原因はインターネットとフリーペーパーである。新聞販売量の減少は、アメリカでも深刻で今朝の朝日新聞に長い伝統を誇る、シアトルの「シアトル・ポスト・インテリジェンサー」と、デンバーの「ロッキーマウンテン・ニューズ」が倒産したことが報じられていた。そのほかにも「ボストン・グローブ」のような一流新聞でも経営の岐路に立たされている新聞社は多い。かつては新聞社や出版社、テレビ局などは、黙っていても顧客が付いて経営は安定していると見られていたが、時代が変わりインターネットのような想定できなかった新業種の参入により、産業界も大きく変わったのである。

 もうひとつは、検索エンジン‘GOOGLE’の最近のストリート・ビューとか、世界中の出版物のデジタル化によって関係者の著作権問題が起こっている点について、講師が例題を挙げて説明された。特に、最近日本ペンクラブが承服し難いとのコメントを発表したことを例に挙げた。私なりに2月に日本文芸家協会から受け取った手紙について簡単に説明した。

2009年6月26日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

773.2009年6月25日(木) ジャーナリスト岸井成格氏の北朝鮮分析

 多摩大学の公開講座で毎日新聞特別編集顧問・岸井成格(きしいしげただ)氏の講義を聴講した。ジャーナリストとして広く知られ、博識でもあり、その語り口もポイントを掴んでいて分かりやすい。今日のレクチャー「文明の岐路に立つ世界と日本」は内容が多岐に亘り、珍しい話題も多く面白かったが、話題があまりにも広がり過ぎてやゝまとまりがなかったように感じた。その最たるものは、レジュメに項目が列挙されていたにも関わらず、それ以外の話題に時間を割き過ぎてタイムアップになってしまった時間配分にある。もう少し詳しく話を伺いたかったというのが本音である。レジュメに挙げられていながら、話されなかった「座標軸の置き方」「世界に3つ、日本に1つの座標軸」「イラン革命と大統領選挙」については興味があり、ぜひとも岸井氏の見解を伺いたかったが、成らなかったことが大変残念だった。

 冒頭に沈才彬・多摩大教授が岸井氏を紹介されて、1972年6月の佐藤栄作首相退任記者会見で取材記者と首相との間でひと悶着あって、記者団全員が退席した時の張本人が岸井氏であることは初めて知った。あの記者会見は偶々見ていたので、突然のハプニングにびっくりしたことをよく覚えている。その時、記者の気持ちも理解出来るが、記者団が取材しなくなってはお仕舞いではないかとも思った。本人に言わせると若気の至りとのことであるが、ある面で岸井氏も相当気骨のあるジャーナリストである。日頃より的確な表現で事象の因果関係を浮かび上がらせたり、同席者のピントの外れた意見に対してもきちんと指摘したり、中々の人物であると一目置いていた。

 ワシントン特派員時代の日米自動車摩擦問題を取材した体験談と、前段で話された北朝鮮問題に興味をそそられた。北朝鮮が2012年に30数年ぶりに労働党大会開催を決定したと話された。これを機会に強盛大国、核ミサイル大国の道を突き進むだろう。前例(金日成から金正日へ政権世襲)に倣えば、この大会で金正日から3男・金正恩への世襲が正式に承認されるそうである。また、中国が北朝鮮の崩壊を支える立場にあり、朝鮮戦争では国連軍に対して共に戦った同盟意識もあり、このまま支援し続けるだろう。驚いたのは、中国が北朝鮮の核開発、核実験を諌める立場上、その説得の殺し文句は北朝鮮が核の開発を進めると、必ず日本が核開発に乗り出すので、抑えてくれという言葉だそうである。日本の核開発は、能力的に可能なだけに欧米も大分警戒しているらしい。その点で言えば、日本は同盟国からあまり信用されていないようである。先日その北朝鮮を離れた貨物船はどうやらビルマ海域へ近づいているらしい。

 昨日から政界に旋風を巻き起こしている東国原宮崎県知事の、自民党へ突きつけた要望書(知事から国政転出の条件として、自民党総裁候補として推薦する)についても触れられた。やはり政治部記者としての長いキャリアがあり、自民党の立場、執行部の気持ち、長老議員の考え等が、心理面まで踏み込んで興味深く、かつ分かりやすく説明してくれた。ジャーナリストとしては大命題を語るより、どうしても直近の話題の方に話が流れる傾向があるようである。

2009年6月25日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com