60年安保条約改定の際、日米両国政府の間に核持ち込みについて密約があったと秘かな噂があったが、その後安保改定に関わった両国関係者が密約はあったとはっきり口外した。これは外務省密約漏洩事件として、かつて西山太吉・元毎日新聞記者が暴露したが、西山氏のニュースソースが外務省勤務の女性をたぶらかして得た情報だとの側面ばかりが強調され、スキャンダラスな事件として取り扱われた。しかも西山氏は機密文書の窃盗罪として、件の女性とともに起訴され、有罪が確定した。このため密約の解明という本質的な問題が蚊帳の外に置かれるという、理不尽な事件となった。すでに2000年にアメリカ政府の公式外交文書や、その関係者から密約があったとの証言が得られ、日本政府の主要な交渉役だった当時の外務省アメリカ局長・吉野文六氏も密約はあったとはっきり証言している。一方日本政府は徹底して「密約なし」の立場を取り続け、いかに証人がいようとも密約はないと政府見解?を押し通している。
西山氏は今も訴え続けている。密約文書について証拠を揃えて明らかにした。にも拘わらず、日本政府の手にかかると「ないものはない」となる。こういう政府の立場を普通は、不真面目、不誠実、嘘つき、極悪非道、などと呼ぶ。
一昨日の各紙が報道したのは、「米軍の核兵器持ち込み~元次官『密約文書あった』」の朝日記事に代表されるものだが、元外務事務次官・村田良平氏が核の存在を肯定する公式文書を引き継いだと述べたのは、日本外交のトップの話だけに日本政府のこれまでの嘘つきを内部から暴露証明する形となった。
今や秘密文書自体はあったと考えられ、その密約自体も今やそれほどの重要性は認められない。それでありながら、日本政府が依然として秘密文書の存在を否定し続けるのは、なぜだろうか。
日本政府と自民党有力者のコメントを伝えておこう。まず、河村建夫・官房長官は「歴代の首相、外相が密約の存在を否定している。密約は存在しない」。こういう回答は無責任である。町村信孝・元外相にいたっては「コメントに値しない。存在がないということを証明するのは難しい。ないものはないとしか言いようがない。村田氏の発言している内容の真偽はともかく、一般論として公務員の守秘義務は死ぬまであるのではないか。そこをどう考えているのか」と、公務員として嘘をつき、国民を騙しても役人としてのルールを守れと不満たらたらなのである。こういう連中は、自分が法律を守れないくせに、他人が正義を貫くことが我慢ならないのである。いつのまにか日本はこういう国に成り下がってしまったのである。情けない。