467.2008年8月23日(土) この世は何もかも魑魅魍魎だ。

 世界は一見して大きな争いはないように見えていながら、その実小競り合いや、表面的には分らない泥沼紛争が増えてきた。ロシア・グルジア戦争もそのひとつの典型である。ロシアがグルジア領土から撤退すると繰り返し言いながら、一向に実行に移そうとしない。前日までロシアの国旗を立てていた戦車が、国連平和維持軍の旗に変えているだけなのだ。これでは法螺を吹いているだけになる。

 一昨日ダライ・ラマ14世がチベット自治区内で、中国軍によりチベット人が大量殺戮されたと公表したニュースについてもその後詳細が伝えられない。中国外務省は、その話を聞いたことがないとまで言っている。まったく魑魅魍魎である。

 さて、盛り上がった北京オリンピックも明日が閉会式となった。昨日は見る機会がなかったが、男子400mリレーで日本はめでたく銅メダルを獲得した。決勝に進んだ各国チームのタイムから予想すれば、不可能ではなかったが、トラック種目では、1928年アムステルダム大会の女子800mで銀メダリストとなった人見絹枝選手以来、実に80年ぶりである。トラック種目は、今ではほとんど黒人選手の独壇場となり、アジアの選手にはほとんどメダル獲得の可能性がないと思っていただけに、嬉しい誤算であり、よくやったと思う。運もついていた。アテネ大会の金、銀、銅の3チームがバトン・タッチミスで失格したし、イギリスはバトン・タッチゾーンを越えて失格になった。早く走ること自体が重要であることは言うまでもないが、百にひとつのミスを防ぐバトンタッチ練習を地道にやってきた日本の努力が、この期に及んで報われたとも言えよう。しかし、ブラジル、カナダやドイツチームにも競い勝った力は並のものではない。その実力と勝利を称えてあげたい。

 それに比べると期待されていた野球はどうだっただろう。昨日準決勝で韓国に逆転負けした星野ジャパンは、今日の3位決定戦で、アメリカにも逆転負けで予選から数えると4勝5敗の負け越し結果となり、開会前の意気込みの割りには力を発揮できなかった。攻撃力が不発だったことと、投手の起用法に首を傾げる点があったが、一番の問題は、油断とか気の緩みにあったのではないか。例えば、G.G.佐藤選手のように、凡飛を2度も落球するなんて普通では考えられない。心構えから改めなければ、同じように覇権のかかった大会では勝てる筈がない。幸か不幸か次回ロンドン大会から野球が競技種目からなくなる。こんな背景もあっただろうか。それにしては、同じくロンドン大会から消えるソフトボールは、堂々金メダルを獲得しているではないか。

 それにしても韓国が最後の野球で金メダルを獲ったが、韓国チームは力強かったし、去年アジア大会で敗れてから反省と、再建、国際試合対策をしっかりやっていた。気持ちのうえで、すでに韓国に負けていた。

 もうひとつある。男子マラソンの大崎悟史選手がレース前日になって怪我のため出場辞退を発表した。陸連の甘ちゃんが、女子マラソンに続いて、やれやれまたやってくれたかと呆れる。

2008年8月23日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

466.2008年8月22日(金) 良かった!「開高健記念館」見学会

 茅ヶ崎にある「開高健記念館」を酒のペンクラブとして訪ねることになった。かねがね「ベトナム戦記」でその行動力に敬意を払っていた作家であり、「第1回開高健ノンフィクション賞」に応募したいきさつもあり、一度訪れてみたいと思っていたところだ。

 3時前にJR茅ヶ崎駅で待ち合わせて、タクシーに分乗して記念館へ向かった。菱沼海岸にほど近いところにあり、入口から海の方を見通すと、僅かに烏帽子岩の頭が覗ける、静かな住宅地の中にある。入口では、お世話役の吉沢一成・日本ペンクラブ事務局長が出迎えてくれた。2003年に開館して、週3日のオープンで年間6千人の入館者だという。個人の記念館の運営が難しくなっている時に、ここはまあ安定しているらしい。吉沢さんは、開高健に憧れてサントリーに入社したほどの開高崇拝者で、家族とも親しいご交誼を続けられた。作品についても隅から隅までよくご存知で、加えて生前住居だったころに、出入りして総合的に建物、書籍、遺品、家財道具等についてよく心得ており、開高さんが亡くなった後、夫人の牧羊子さんと、また娘さんが亡くなった後、杉並の土地・建物とこの土地・建物を含む財産管理を任され、この記念館を作るに当って、茅ヶ崎市との交渉役も務められた。室内には山のように書籍が積まれていて、片付けるのが大変だったと苦労話をされた。牧羊子夫人も整理が苦手なのか、そのままにしておくことが開高の面影を残すと思われたのか、主人のいなくなった書斎・居間が夫人の亡くなるまでそのままだったという。

 どうしても作品を通して一面的にしか見ないものだが、直筆原稿を見て見かけに依らず開高が几帳面な性格であったことが想像できる。1枚の原稿用紙に1文字ずつきちんと万年筆で書き込んで、加筆や訂正があまりない点で読みやすい原稿であることが分る。性格、生活態度、くせ、羊子夫人との関係、等かなりの部分も知ることができた。朝日新聞社刊「ずばり東京」が、大当たりしてご褒美に何を上げようかと聞かれたとき、即座に朝日の取材記者としてベトナムへ派遣して欲しいとねだった。それが、ベトナムと関わるきっかけとなり、ベ平連を結成してベトナム反戦運動にのめりこむ結果になった。ご夫妻で参加された小中陽太郎さんが、NHK時代に撮った「米空母『イントレピッド』から脱走した4人の水兵」の記者会見のフィルムを、小中さんが持参され、解説付きで拝見することになり、なお一層開高健の一面が映し出された。開高健のベトナムにおける戦場体験は、所属した米陸軍歩兵大隊がベトコンの襲撃を受け、開高は秋元カメラマンと命からがら脱出するという厳しい臨場体験を味わった。

 その後、ある時期を境にベトナム反戦から次第にフィッシングに足場を移していった。これについて共産党辺りは挫折したとか、背を向けたとか言っていたようだが、小中さんのご意見は、元々開高は作家なんだと結論づけていた。屋内は少しずつ増築されて、開高の趣味の世界が居つくようになり、中々興味深い。

 通り一遍の解説ではなく、開高本人を熟知した文学者が生活習慣を交え、説明してくれたことにより、普通とは違う感覚で記念館を見学することができた。とても良い見学会だった。

 終わって駅近くの小料理屋で、全員で愉しい会食をした。13名の参加者が異口同音に言っていたことは、酒のペンクラブも時にはこういうイベントがあってもいいのではないかということだった。

 帰りに茅ヶ崎駅でJRに乗ろうと思ったところ、東横線が人身事故で運転停止ということなので、珍しく湘南ライナーで恵比寿駅へ向かい、東横線は中目黒から逆方向で帰ってきた。

2008年8月22日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

465.2008年8月21日(木) 黒海に米艦隊展開!

 一昨日フランスが国連安保理事会に提案した、和平合意のための決議案に対して、昨日ロシアは同じようにロシア流の決議案を提案した。前者はロシア軍の撤退を促し、開戦前の状態に戻すというものだが、後者のロシア案は、ロシア軍は撤退すると言いながら、南オセチアとアブハジア両自治区内のロシア系住民に対するグルジアの弾圧を監視するという理由で、ロシア軍を国連平和維持軍として駐在させるというものだ。どうも自分勝手な屁理屈で、何としても両自治区への影響力を残したいのだろう。2つの停戦決議案が出て、これを安保理事会が議題としてまともに討議することが出来るだろうか。

 ところが、アメリカが突然黒海へ艦隊を送り込んできた。黒海には以前からロシア艦隊も活動している。アメリカ艦隊はグルジア難民への支援物資の輸送活動と言っているが、ロシアを刺激しないわけがない。すでに、チェコとポーランドのMDミサイル配備で、相当ロシアの神経を逆撫でしているところへ今回の米海軍艦隊の出動である。10年ほど前のロシアなら、くしゅんとなっただろうが、今や国威の再発揚に国を挙げて意気軒昂としており、ロシア首脳の鼻息も荒い。強気同士が正面切ってぶつかりあわなければよいがと思う。

 来月中旬に民主党党大会が開催され、任期満了の小沢一郎代表の後任人事が取りざたされているが、小沢氏は引き続き代表職を続ける意向があり、対立候補が現れそうになかった。ところが、野田佳彦・前党国対委員長が手を上げ、党内で同志を集めている。今回は小沢氏の基盤は揺ぎなく、まず誰しもとても対抗馬にはならないだろう。かつて党首だった、鳩山由紀夫氏、菅直人氏、岡田卓也氏ら有力者が早々に降りてしまったのが、何か拍子抜けのような感じである。野田氏の言うように、対立候補者を出して、総選挙を前に民主党の政策について論争を戦わし、国民に民主党についての理解を深めてもらうよい機会だと思う。ただ、野田氏では偽メール事件が尾を引いていまひとつ訴求力が不足だ。やはり、前3人のうちの1人が対抗馬として丁々発止と建設的な論争を繰り広げれば、盛り上がっただろうし、民主党も点数を稼ぐことができただろう。どうも自民党の談合政治と五十歩百歩だ。

 夜のニュースで、パリ滞在中のダライ・ラマ14世が18日にチベットで中国軍の発砲事件があり、チベット人の間に相当数の死者(一説には140人といわれている)が出たと述べた。これが事実とするなら、18日以降オリンピック・フィーバーでまったく報じられていなかっただけに、ことは簡単には済みそうもない。

 10月に初めて新宿・四谷倫理法人会という組織で講演をすることになっているが、そのテーマも「青海チベット鉄道とチベット旅行事情」と、時節柄チベットへの関心が高いとみて決めたものだ。オリンピック期間中は新しいニュースが入って来なくなったが、まもなく閉会となってからどっと吹き出るかもしれない。

 今日の嬉しいオリンピック関連ニュースは、ソフトボールで日本が初めて金メダルを獲ったことである。昨日のアメリカ戦で延長戦の末に敗れ、昨晩のオーストラリア戦に逆転勝ちで決勝戦に進み、再び宿敵・アメリカと対峙して今度は堂々3-1で勝った。2日間の3試合をすべて投げ抜いたエースの上野由岐子投手は、実に413球を投げた。ロンドン大会ではソフトボールが競技種目からなくなってしまう最後の散り際の場面で、初めて優勝したわけだから、選手たちの想いはさもありなむと想像する。まさに有終の美というのだろう。よくやったと思う。

2008年8月21日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

464.2008年8月20日(水) 北京オリンピック、男子陸上200m決勝もすごい!

 昨日北アルプス・白馬岳大雪渓近くで岩石の大崩落があり、行方不明になっていた山岳ガイドと登山客が遺体で発見された。私も学生時代から何度も通った登山道で、懐かしい思い出もたくさんある土地だ。最近大きな地震や大洪水があり、地盤が微妙に緩んでいたのではないかと思う。学生時代にも一度大きな岩石が上から転がり落ちてきたことがあった。大雪渓といい、雷鳥といい、山頂からの360度のパノラマを含め、白馬では随分愉しい登山のイメージを膨らませてもらった。あまり悪いイメージにつながらないよう願っている。

 次の作品「停年オヤジの海外武者修行」の「おわりに」の項に、今年3月にご講演を聴いた後の食事の場で、京都学派の社会学者・加藤秀俊先生から伺った「知的道楽」という言葉が気に入って、講演の場でしばしば使用することもあり、その言葉について書いている。しかし、一応先生のご了解をいただいた方がよいと考え、先日お便りを差しあげて、「知的道楽」とお名前を使用させていただきたいとお願いした。

 今日、加藤先生らしく恬淡とした感じで、「ふと、つぶやいたことばに『知的所有権』などあるはずもなく、どうぞご自由にお使い下さい」と温かいご返事をいただいた。

 北京オリンピック、今日の200m決勝種目も予想通り圧巻のレースだった。夜11時20分スタートだったが、楽しみに待っていただけの価値のあるレースだった。先日の100m決勝といい、今日の200m決勝といい、近来稀な好レースだった。やはり、ジャマイカのウサイン・ボルト選手がアメリカ勢3人らをまったく寄せ付けず、ぶっちぎりの優勝だった。タイムも19.30秒の世界新で、アトランタ大会でマイケル・ジョンソン選手が不滅の世界記録として走った19.32秒を軽々と破ってしまった。それにしても素晴らしいレースを観ることが出来るということは有難い。

 こういう明るいスポーツ・ニュースに比べて、相変わらずダーティなのが、日本相撲協会だ。昨日、ロシア出身の関取・若の鵬が大麻所持違反で逮捕され、今日は所属する間垣部屋も家宅捜索を受けた。どうもお行儀の悪いお相撲さんが増えてきた。やはり礼儀作法やしつけがきちんと教えられていないことが分る。監督する立場にある親方も権威と指導力が落ち、弟子を指導出来ないのだから話にならない。若の鵬関は、独身で部屋に自室を持ちながら、近くにマンションを借りていたという。相撲界では前例のないことだが、これを黙っている親方も親方である。案の定、警察の家宅捜索の結果、部屋からもマンションからも大麻吸引パイプがぞろぞろ出てきたという。いつも北の湖理事長は、あってはならないことと一旦は恐縮の素振りをするが、一向に抜本的対策へ動こうとの姿勢が見られない。グルジア出身の黒海関は、ロシア・グルジア戦争に関してロシア大使館へ抗議に行ったとか、横綱・朝青龍は、モンゴルへ帰国の途次北京オリンピックを見学したり、これまであまり見られなかった個人的行動が目立つお相撲さんが増えて来た。これでは、相撲協会ももうちょっと指導、監視を強めないと、今後もこういうパフォーマンスがどんどんエスカレートするのではないかと心配である。

2008年8月20日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

463.2008年8月19日(火) ムシャラフ・パキスタン大統領辞任

 国際政治の舞台は、相変わらず波乱含みである。両国が停戦に合意したにも拘らず、ロシア軍の南オセチア自治区、アブハジア自治区からの撤退が、現実には実施されていない。新聞記事だけみると、お互いに駆け引き、嘘の付き合い、騙しあいを繰り返している。権力を握ると、嘘の上塗りと理論付けして公然と嘘八百を述べるようになる。それが分っていながら、さも真実のようなデタラメを言い、恥ずかしげもなく国家のステートメントとして堂々公表するのである。

 さて、99年軍部の無血クーデターで権力を握ったムシャラフ・パキスタン大統領が遂に辞任した。野党連立4党が大統領を弾劾することで合意、下手をすると大統領死刑の可能性もある弾劾決議を前に、野党は弾劾取り下げを条件に大統領に辞任するよう求めた。かつて軍参謀長だった大統領は、自らに軍の支持がないことを認めざるを得ず、野党の提案を受け入れた形になった。

 近年パキスタン国内ではイスラム教徒と、政府・軍が対立するケースが多く、9.11テロ事件以降テロリスト掃討という点で、アメリカと足並みを揃えてきただけに、ブッシュ政権にとっても大きな痛手だろう。にも関わらず、一部ではムシャラフ氏は、頼みの綱だった軍とアメリカに見限られた末の決断だったと見られている。

 これからのパキスタンは誰が政権を担当しようとも、問題山積で前途に光明が見出せない。核保有国として重い責任と負担を強いられる一方で、経済停滞と経済格差問題が日常化しているうえに、欧米文化とは相容れないイスラム文化がある。その中でフシャラフ大統領はアメリカ政府に協力的だった。テロリストの根城ともいわれるアフガン国境地帯は今でも危ない無法地帯である。8年前にカイバル峠を訪れた時も、パキスタン政府の力はこの周辺には及んでいなかった。パシュトウン人のイスラム教徒が、自由気ままに往来していた。こういう地域を安全に管理することが、政府の責任でもある。しかし、見たところ、そんな安全な状態はいつの時代になるやらという感じがした。

 寺島実郎氏も言っていたが、これからはパキスタンの動静から目を離せない。

2008年8月19日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

462.2008年8月18日(月) マラソン出場選手の健康管理の責任

 昨日行われた北京オリンピックの女子マラソンに出場した土佐礼子選手が、右足の痛みから途中でレースを棄権した。元々土佐選手は左足に外反母趾を抱えていたが、これまであまり大きく報道されることがなかったし、本人もあまり口にするようなことはなかった。野口みずき選手が棄権を公表した時も、残る2人で野口の分も頑張ると言っていたが、何とその時点では右足に痛みがあったようだし、練習も1ヶ月間やっていなかったという。熱に浮かれた日本陸連幹部連は、そもそもレース本番1ヶ月前になって練習をほとんどやっていない選手が、過酷なレースで勝てると本気で思っていたのだろうか。その後野口選手の故障が判明するや、土佐選手らは彼女の分も頑張ると言ったり、こういう不可解な言動とその経緯を考えてみると、今回のケースは本人、コーチを含めて日本陸連全体としての責任が問われるのではないかと思う。

 オリンピックに大金を注ぎ込み、日本中1億総フィーバーとなって、マス・メディアも狂ったように派手に報道している。最近では女子マラソン競技も4大会連続メダルを獲得して、有力なメダル種目となって怖いもの知らずとなり、陸連も女子マラソン関係者を少々甘く見過ぎたのではないだろうか。

 何が尋常ではないかと言えば、棄権と欠場が、これまでの報道されるニュースの中から一向見えなかったことだ。あまりにも発表のタイミングが悪過ぎる。これだけ大事なレースに、日本中の期待の目を向けさせておいて、一方的に病気ですから止むを得ませんというのは、当事者が万端すべてを尽くしたというならともかく、今までの経緯だけでは釈然としない。野口選手の場合にしろ、土佐選手のケースにしろ、3人の代表選手の内、2人も満足な体調ではなかった。その一方で、1人決めていた補欠選手を早々にキャンセルしている。

 怪我や病気はどんな人間も避けられない。しかし、それを防ぐ工夫と知恵、さらに不測の事態に備える対応策は常に考えておくことがリスク・マネジメントではないだろうか。そういう意味では、両選手の取り巻きと日本陸連執行部のお粗末な健康管理と事前・事後対策に疑問符をつけておきたい。

2008年8月18日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

461.2008年8月17日(日) 戦争についてもっと話す機会を

 終戦の日、オリンピックにかき消された戦没者追悼について、新聞やテレビの討論番組でもやはり話題になっていた。テレビの討論会に出演するような人が、すでに圧倒的に戦後生まれが多くなり、彼らがいわゆる戦争を知らない世代であり、こういう人たちだけで議論することが果たして的を射ているのかどうか疑問にさえ思っている。

 それでも15日の追悼式で河野衆議院議長が式辞の中で述べた、新しい追悼施設建設について、日本遺族会会長でもある自民党の古賀誠氏は河野案には賛成だが、そのためには、前提として遺族会内部がひとつにまとまることと、靖国神社の了解を得ることが必要だと述べていた。

 別の番組では、日本では先の大戦の反省が成されていないと厳しく指摘した評論家がいた。いつも喉元過ぎれば熱さを忘れる。広島や長崎の原爆慰霊碑に訴えるように書かれている「2度とこの悲惨な過ちは繰り返しません」の誓いの言葉は、その場では強い説得力を持つが、言い放しになって、それから一歩も「2度と繰り返しません」の方向へ進んでいないと指摘していた。つまり、広島や長崎の言葉、言い換えるなら「反戦の誓い」の一方で、日本政府はイラクへ給油活動を行い間接的ではあるが戦争に加担している。アフガニスタンへもPKO部隊を派遣しようとしている。慰霊碑の前では、残酷な戦争は繰り返さないとあれだけ固く誓っていながら、現実には新しい戦争に次々に関わっている。あれだけ多くの犠牲者を生んだ先の戦争が、まったく反省にはなっていないのだ。これでは徴兵されて亡くなった兵士や遺族、巻き込まれて亡くなった一般市民は浮かばれない。せめて終戦の日には、こういう問題を国民が真剣に考えてみる習慣を持ちたいものである。

 さらに、数日前明らかになった東条英機の終戦直前の直筆の日記が見つかった。敗戦を覚悟しながらも、国民の愛国魂の欠如を嘆いているというからふざけるなと言いたい。東條には軍人らしい潔さがない。大勢の部下を預かる軍隊には、いてはいけない、上官にしてはならない軍人だった。関東軍参謀長の傍ら、国際法で禁じられた中国におけるアヘン売買の総元締めという悪役まで務めながら、自らの責任を逃れ、その罪をすべて国民に被せようとした。その最低の軍人が東條英樹だった。今も戦没者の英霊を靖国神社から分祀することについて、頑なに反対しているのはその東條の遺族である。

2008年8月17日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

460.2008年8月16日(土) ロシアとグルジアの停戦は実現するか?

 ロシア・グルジアの戦争が解決する見通しと可能性が薄くなってきた。ロシアが一向に軍隊を撤退させようとの気がないからである。アメリカが烈火の如く怒っているが、EUは割合冷静である。アメリカやEUは、まず戦闘が始まったときの状態に戻すことを合意事項に入れた。ところが、ロシアはその状態だとサアカシビリ・グルジア大統領に不満を抱く南オセチア自治区の住民が弾圧され、民族浄化されると称して、進軍した軍隊をそのまま駐屯させたままだ。

 これまでにも停戦合意、合意と伝えられながら、どうも口約束だけなのか、或いは合意文書に署名したのか、分りにくかったが、署名まではしていなかったようだ。グルジアはアメリカに説得され、「停戦と軍の撤退」を盛り込んだ和平六原則「和平合意文書」に署名して、アメリカのライス国務長官に提出した。ライス長官はロシアにも同じく署名を要求しているが、むしろ新たな軍事作戦を展開し出したもようだ。

 ロシアには、アメリカの口出しや仲介に簡単に応じられない強い決意がある。このところ、旧社会主義国のロシア離れに歯止めがかからないところへ、先日アメリカのチェコへの核弾道弾配備とか、同じようにポーランドへのミサイル配備とか、ロシアにとっては仮想敵国と見られて腹の虫が収まらない。アメリカの仕打ちに対する不満が積もり積もった私怨が、この機に乗じて親ロ派の多い南オセチア自治区をロシアの衛星国として取り込んでしまおうと思っているに違いない。同じように親ロ住民の多い、アブハジア自治区も、グルジアから独立させてロシアの同盟国として、ロシアは勢力拡大を図っていく狙いがある。しかし、今のままロシアが戦線を拡大させても、国際世論はロシアの行動を容認しないだろう。さあ、ロシアはこれからどう出るか。今は、冷静で両国の仲介役を務めている、フランスやドイツもいつまでも黙って見ていない。

 さて、昨日の北京五輪は、柔道男子の100kg超級で、石井慧選手が見事「金」を獲得した。今日は、女子レスリングで期待通り吉田沙保里選手が連覇した。そのほかにも銀、銅メダルを獲った選手もいて、前回ほどではないにせよ、結構日本選手も頑張っている。

 夜遅く23:30(日本時間)に行われた陸上男子100m決勝を期待していた。準決勝で、世界一トリオと言われたジャマイカのパウエル、ボルト、アメリカのゲイの内、ゲイが決勝へ残れず、ジャマイカ同士の同士討ちとなった。結果として若いボルトの圧勝だった。9.69秒の世界新、しかも最後は横を向いて流しながらテープを切るゴールインだった。こんなに強い短距離ランナーは見たことがない。度肝を抜かれたといったらいいだろうか。世界には凄い選手がいるものだとつくづく思う。

 それにしても、開会して9日目になるが、体重制の競技が続いているせいか、ヨーロッパ勢にやや元気がなく、アジアに勢いがある。中国のメダル獲得数はダントツ・トップで、次いでアメリカ、韓国と続き、日本は7位である。かつてメダル獲得争いをしていた旧ソ連、チェコ、ポーランド等の旧社会主義国はどうしたのか。

2008年8月16日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

459.2008年8月15日(金) 終戦の日を静かに迎えたい。

 63年目の終戦の日を迎えた。この記念すべき日だけは、静かに過ごし考えたい一日であるが、例によって北京五輪の騒々しさで静謐はどこかへ飛んでしまった。朝から晩までオリンピック、オリンピックとマス・メディアは大騒ぎである。

 そのせいでいつも中国、韓国が注視する靖国参拝が、大きな話題とはならなかった。日本も福田首相以下ほとんどの閣僚が参拝しなかったこともあって、関心そのものが低かったように見える。ただ、オリンピックのお祭騒ぎの中で、大切な問題が見過ごされるようでは、困ったことであるし、由々しきことだと思う。

 今日の全国戦没者追悼式で、河野洋平衆議院議長が「政府が特定の宗教によらない、すべての人が思いを一にして追悼できる施設の設置について真剣に検討を」と式辞を述べた。かつて新追悼施設建設案が真剣に検討されたこともあった。ところが、語弊があるが、いつの間にかあやふやになってしまった。福田首相が官房長官時代に私的懇談会で提言されたものである。靖国神社は国の代表者が参拝するととかく反発を買うので、現状を維持したまま、国として国民誰もがお参りすることが出来る、新たな追悼施設を建設することを考えた方がよいと思っている。

 テレビがオリンピックに占領されている中で、終戦とか戦争がどんな風に取り上げられるかと見ていたが、NHK以外は特集番組を組んでいなかった。NHKの夜の1時間番組では、レイテ島から生還した人たちの声を伝えていた。レイテ島には、一度訪れたことがあるが、ここは大岡昇平の「レイテ戦記」でも知られるようになった。私は主にビルマに展開された陸軍航空隊に関わったので、帰られた方から聞く話は、今日の生存者の話ほど悲惨ではなかったが、ビルマでもコヒマ・インパール方面は派遣された歩兵部隊が悲惨な目に遭ったと随分耳にした。

 年々旧軍人、遺族がお亡くなりになられ、戦争も風化していくのではないかという声を聞く。怖いのは、自分たちさえ良ければ他はどうでもいいという考えが表れるようになると、戦争は確実に風化していくだろう。その意味では、今年の北京五輪のバカ騒ぎは、戦争風化の悪しき見本ではないだろうか。

 さて、次作品「停年オヤジの海外武者修行」の出版打ち合わせのため、早稲田出版の大塚靖敏編集長に初めて会い、契約、写真、推薦文、出版までの予定等について話し合った。年内に発行される予定であるが、前著が11月上旬に再販されるので、この後両書のセールス・ケアをどうしようかと考えている。まあもう少しのんびり、じっくり考えてみようと思う。

2008年8月15日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

458.2008年8月14日(木) 日本の「合意」形成は大丈夫か?

 北島が100m平泳ぎで金を獲った! 有言実行の選手だ。やはりアテネ大会で金を獲った連覇以外、金は獲れないという北京五輪伝説は今日も現実だった。その意味では、日本選手団の主将で、男子柔道の100kg級に出場し、連覇を目指した鈴木桂治選手に大いに期待がかかっていたが、緒戦で一本負け、敗者復活戦で一本負けとあっけなく期待を裏切ってしまった。北島選手のアテネ大会に続いて2種目「金」というのは、日本人として初めての偉業である。あの落ち着いた態度と計算したうえでの泳ぎっぷりは、見事というしかない。男子体操個人総合もよくやったと思う。19歳で初出場の内村航平選手が、「あん馬」で落下しながらも立ち直り銀メダルを獲得した。エースの冨田洋之選手も「吊り輪」から落ちなければ、メダルを獲得していただろう。個人総合で4位だった。

 ところで、「合意術」を勉強しつつある中で、二つの合意が気になった。一つは拉致被害者に関する北朝鮮の再調査を今秋までに終えることを目指すことで日朝両国が「合意」したことである。

もう一つは、グルジアとロシアの停戦に関する「合意」である。

 第一の合意は、本当の合意ではない。相変わらず北朝鮮は、日本から経済制裁解除を得ようと日本の腹を探っているように見えるだけで、「合意=当事者の意思の一致」とはかけ離れている。いつもながらのポーズに過ぎない。

 第二の合意は、戦争の当事者同士が停戦に「合意」していながら、相変わらず一方のロシア軍が軍隊を撤収させないことで、実情とは別に、ケース・バイ・ケースによって、言葉を巧みに都合の良いように使い分けることがあることを教えてくれた。当事者の意思が合致しながら、不満が出て相手を非難したり、友好国からも厳しく糾弾されるというのは、厳密に言って「合意」とは言えないのではないか。

 さて、翻って日本の外交交渉における「合意」はどうだろうか。今まで知る限りでは、相手の意思をある程度聞き及ぶことはあっても、日本の意思を相手国に伝え、理解を得ることは極めて不得意である。一番問題なのは、日本の外交官は現場の最前線における交渉実務に疎いことではないか。それは、現場の空気を知り、現場の人たちを知り、現場の実態に理解を示すことであり、当然土地の人々との正面切っての付き合い、接触、交流が欠かせない。こういう実態を認識することによって、合意には何が必要か、また判断基準として現場の空気が大切だということが分ってくる。その点から考えると、日本の外交官はあまり現地人、特に普通の市民との付き合いがないようで、これでは「合意」形成は難しいのではないかと考えざるを得ない。

2008年8月14日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com