昨日行われた北京オリンピックの女子マラソンに出場した土佐礼子選手が、右足の痛みから途中でレースを棄権した。元々土佐選手は左足に外反母趾を抱えていたが、これまであまり大きく報道されることがなかったし、本人もあまり口にするようなことはなかった。野口みずき選手が棄権を公表した時も、残る2人で野口の分も頑張ると言っていたが、何とその時点では右足に痛みがあったようだし、練習も1ヶ月間やっていなかったという。熱に浮かれた日本陸連幹部連は、そもそもレース本番1ヶ月前になって練習をほとんどやっていない選手が、過酷なレースで勝てると本気で思っていたのだろうか。その後野口選手の故障が判明するや、土佐選手らは彼女の分も頑張ると言ったり、こういう不可解な言動とその経緯を考えてみると、今回のケースは本人、コーチを含めて日本陸連全体としての責任が問われるのではないかと思う。
オリンピックに大金を注ぎ込み、日本中1億総フィーバーとなって、マス・メディアも狂ったように派手に報道している。最近では女子マラソン競技も4大会連続メダルを獲得して、有力なメダル種目となって怖いもの知らずとなり、陸連も女子マラソン関係者を少々甘く見過ぎたのではないだろうか。
何が尋常ではないかと言えば、棄権と欠場が、これまでの報道されるニュースの中から一向見えなかったことだ。あまりにも発表のタイミングが悪過ぎる。これだけ大事なレースに、日本中の期待の目を向けさせておいて、一方的に病気ですから止むを得ませんというのは、当事者が万端すべてを尽くしたというならともかく、今までの経緯だけでは釈然としない。野口選手の場合にしろ、土佐選手のケースにしろ、3人の代表選手の内、2人も満足な体調ではなかった。その一方で、1人決めていた補欠選手を早々にキャンセルしている。
怪我や病気はどんな人間も避けられない。しかし、それを防ぐ工夫と知恵、さらに不測の事態に備える対応策は常に考えておくことがリスク・マネジメントではないだろうか。そういう意味では、両選手の取り巻きと日本陸連執行部のお粗末な健康管理と事前・事後対策に疑問符をつけておきたい。