北島が100m平泳ぎで金を獲った! 有言実行の選手だ。やはりアテネ大会で金を獲った連覇以外、金は獲れないという北京五輪伝説は今日も現実だった。その意味では、日本選手団の主将で、男子柔道の100kg級に出場し、連覇を目指した鈴木桂治選手に大いに期待がかかっていたが、緒戦で一本負け、敗者復活戦で一本負けとあっけなく期待を裏切ってしまった。北島選手のアテネ大会に続いて2種目「金」というのは、日本人として初めての偉業である。あの落ち着いた態度と計算したうえでの泳ぎっぷりは、見事というしかない。男子体操個人総合もよくやったと思う。19歳で初出場の内村航平選手が、「あん馬」で落下しながらも立ち直り銀メダルを獲得した。エースの冨田洋之選手も「吊り輪」から落ちなければ、メダルを獲得していただろう。個人総合で4位だった。
ところで、「合意術」を勉強しつつある中で、二つの合意が気になった。一つは拉致被害者に関する北朝鮮の再調査を今秋までに終えることを目指すことで日朝両国が「合意」したことである。
もう一つは、グルジアとロシアの停戦に関する「合意」である。
第一の合意は、本当の合意ではない。相変わらず北朝鮮は、日本から経済制裁解除を得ようと日本の腹を探っているように見えるだけで、「合意=当事者の意思の一致」とはかけ離れている。いつもながらのポーズに過ぎない。
第二の合意は、戦争の当事者同士が停戦に「合意」していながら、相変わらず一方のロシア軍が軍隊を撤収させないことで、実情とは別に、ケース・バイ・ケースによって、言葉を巧みに都合の良いように使い分けることがあることを教えてくれた。当事者の意思が合致しながら、不満が出て相手を非難したり、友好国からも厳しく糾弾されるというのは、厳密に言って「合意」とは言えないのではないか。
さて、翻って日本の外交交渉における「合意」はどうだろうか。今まで知る限りでは、相手の意思をある程度聞き及ぶことはあっても、日本の意思を相手国に伝え、理解を得ることは極めて不得意である。一番問題なのは、日本の外交官は現場の最前線における交渉実務に疎いことではないか。それは、現場の空気を知り、現場の人たちを知り、現場の実態に理解を示すことであり、当然土地の人々との正面切っての付き合い、接触、交流が欠かせない。こういう実態を認識することによって、合意には何が必要か、また判断基準として現場の空気が大切だということが分ってくる。その点から考えると、日本の外交官はあまり現地人、特に普通の市民との付き合いがないようで、これでは「合意」形成は難しいのではないかと考えざるを得ない。