突然のニュースに驚いた。キューバのフィデル・カストロ前国家評議会議長が亡くなった。90歳である。世界的にも20世紀を代表する人物のひとりである。偶々今カストロらが成就したキューバ革命を中心にしたキューバ・レポートを書いているところだ。9月に安倍首相が初めてキューバを訪問した際、首相はすでに政界を引退していたカストロ前議長を自宅に訪れている。相手が世界的な顔である革命戦士のカストロだったからわざわざ自宅にカストロを訪れたのだが、普通ではあまり例がない。昨年オバマ米大統領がアメリカの現職大統領として初めてキューバを訪れたが、その時もオバマ大統領はカストロの自宅を訪れ会談している。すでに引退しているとは言いながら、依然として国家・国民に強い影響力を及ぼしているカストロに表敬訪問しないわけにはいかないだろうし、カストロも外国の首脳が価値あるお土産を持ってわざわざ訪れた場合には、会わないわけにはいかないだろう。
1959年チェ・ゲバラらとともにキューバ革命を成功させ、徐々にキューバを社会主義国として発展させた。国民はキューバ革命によって貧困、未就学、無医村などから救われ、今では世界でもマルクス・エンゲルスの理論を確実に実施している数少ない社会主義国である。キューバは革命後半世紀以上に亘ってアメリカから国交を断絶され、経済封鎖を受けたことが経済的に苦しかった。しかし、革命直後にはソ連や他の社会主義国から援助を受けながら何とか苦境を凌いできた。
漸くキューバ体験記をA4版20枚にまとめたところで、このニュースを知った。カストロは約束したことをきっちり守り、過大な権力を行使せず、私利私欲のないところが、国民から敬愛されているところだ。キューバ国内で耳にするカストロやゲバラに対する尊敬の気持ちは、並みのものではない。暗殺の危険に晒されながら、つい最近まで言動で世界中に反米を訴えていたくらい、アメリカに対しては恨み骨髄だった。ロシア革命に優るキューバ革命を成し遂げたカストロは、発想力、行動力、リーダーシップ、人格などどれをとってもレーニン以上の英雄だと思う。
偶々キューバ旅行記で、カストロをべた褒めする文を書いたので、カストロの死はタイムリーであり文末に哀悼の言葉を付け加えることにした。
世界は20世紀の偉大なヒーローを喪った。カストロ氏生存中にキューバを訪れることができて、大分キューバ人のカストロへの親愛の情を臨場感で知ることができたことは幸いだった。
フィデル・カストロ前国家評議会議長のご冥福を心よりお祈りしたい。
それにしても亡くなったのはキューバ時間の25日午後10時29分(日本時間26日午前11時29分)で今日の夕刊に一行も記事が掲載されていないのは、間に合わないのだろうか。都内版夕刊の締め切りは何時なのだろうか。