海外ニュースでは、相変わらずトランプ米大統領の就任と言動に関する話題が世界中を惑わせている。大統領とメディアの対立が徐々にエスカレートしそうな様相になってきた。日本国内の関連ニュースをみるとあまりにも強気なトランプ砲に鑑みて、ここは少し冷静に、且つ正確に事実を分析しようとの声も出始めている。
例えば、アメリカの赤字貿易相手国への一方的な非難も、アメリカは批判するばかりでなく、その原因と結果をよく考えるべきではないかと極当然の質問である。トランプ氏は、アメリカに工場を建設させ、アメリカ産製品を買わせようと考えているようだが、元来賃金の高いアメリカ人労働者が生産したものは高物価になり、消費が落ち、全体として販売力が下降して、行き着く先は工場の閉鎖で失業者が溢れ出ることになる。アメリカの失業率は現在下がり続けており、仮にトランプ政策が採用されれば、トランプ氏の思惑は外れ、物価は上昇し、失業率は高まり、親トランプ派の人々を却って落胆させることになるのではないかというのが、経済学者の予測である。
また、昨日トランプ大統領は日本との自動車貿易は不公平だと指摘した。アメリカの車は日本で売れず、その一方で日本車はアメリカで儲けているとの大統領の主意だが、日本側に言わせれば、乗用車についてはアメリカが2.5%の関税をかけているが、日本は関税をかけておらず、他に原因があるのかも知れないが、差し当り不公平と言われる筋合いはないということになる。
さて、国内では、通常国会で天皇退位に関するテーマがひとつの争点となっている。畏れ多くも天皇の在位に関する問題だけに、中々猫の首に鈴をつけられるような大物がいない。しかし、現状は有識者会議の今上天皇一代に限り退位を承認しようという意見に傾きつつようだ。一般国民は高齢の天皇のご健康を心配され、また次代の天皇についても同様な問題が起きる可能性があるので、将来的にも天皇のご意思を配慮して皇室典範を改正し、次代の天皇にも退位のご意思があれば適用すべきだとの意見が強い。実際天皇のお気持ちを素直に受け止める国民は約8割と言われる。
にも拘らず、いまでは譲位は一代限りとの条件で認めるとの考えが安倍政権内では主流のようであるが、そこには皇室典範を改訂することが憲法に抵触すると考えている節がある。両陛下の健康を心配する国民とは考え方が完全に別次元のようだ。
そもそも安倍首相は皇室典範改正を考えていないどころか、首相の考えは自身の国家観に基づいたものではなく、天皇が首相の知らない間に退位の気持ちを表明したことが心理的に面白くないのではないかと、月刊誌「選択」今月号に4頁に亘って「天皇と安倍の『確執』」と大きく取り上げられている。戦没者に対する慰霊のお気持ちが強い天皇に引き比べて、首相にはそんな気持ちはそれほどなく、加害とか反省の気持ちがないことが、天皇と首相が心情的に相容れない構図となっているようだ。国民は天皇の行動やお気持ちに同情的である。ところが、国民が天皇のお気持ちを慮っているのに、首相ら政府首脳が天皇と国民の気持ちに寄り沿って歩もうとしていない。
一代限りにせよ、今後も同じように譲位を認めるにせよ、安倍首相には元々天皇のお気持ちを汲み取ろうという気がない。これではいくら有識者会議を重ねようとも結論は同じだ。これでは時間の無駄ではないのか。首相には、どうも天皇は「お飾り」とか、「わがまま」との認識があるらしい。お坊ちゃんで世間知らずのアベ・シンゾーも随分「偉く」なったものである。