童謡「森のくまさん」がお笑いタレントによって勝手に吹き替えられ、そのCDとDVDが作詞者に無断で販売されていたとして、作詞者が慰謝料と損害賠償を求めている。この童謡はアメリカ民謡に、日本人なら誰でも知っているほのぼのとする歌詞をあてがったものだ。唄ったタレントにも責任があるだろうが、それ以上にこれをCDとDVDにして制作・販売したレコード会社により多くの責任があるだろう。況して作詞者はこの件を承諾しておらず、著作物を勝手に改変されたと訴えているのだ。一種の盗作とも言える悪質な事件である。
かつて演歌歌手・森進一がヒット曲「おふくろさん」の歌詞の間に想いを込めたつぶやきを無断で挿入して唄い、これを耳にした作詞者の川内康範氏が烈火のごとく怒った。2人の間の溝は川内氏の生前埋まることなく、取返しのつかないままだった。以降森はこのヒット曲を唄うことが出来なくなり、解決したのは、川内氏が他界して川内氏の遺族と森との間で示談が成立してからのことである。それほどことは大事なのである。その点を軽視したレコード会社には、レコード会社としての資格がないと思う。
歌詞を作詞者の了解も得ずに勝手に文言を書き変えることは、詐欺行為以上に下劣な行為であり、誰が考えても許される筈がないことぐらいレコード会社のような専門家なら分かりそうなものである。
作詞者が納得していないにも拘わらず、発売したレコード会社は、適切な手続きを踏んで発売していると平然と返答しているようだが、こういう無責任な姿勢では、また同じような事件を引き起こしかねない。どうしてこんな不道徳な悪事を安易に犯してしまうのだろうか。ミュージック業界内だけの許容行為なのだろうか。日本人のモラルも大分劣化して来たものだと嘆かざるを得ない。もう少し倫理観を持ってもらいたいものである。
ついては、いま揉めている話題にベストセラー書、菅野完著「日本会議の研究」の出版差し止め事件がある。今月になって「日本会議」が同書の出版停止を求める申し入れを出版元の扶桑社に送付し、東京地裁が真実でない個所があるとして申し入れ通り同書出版の差し止めを命じた。これに対し、出版社は昨日地裁に保全異議と執行停止を求めた。扶桑社は、地裁の決定には表現、出版の自由に対する重大な問題があると主張している。
これにはかなり裏の話があるようだ。というのは、安倍内閣の19人の閣僚のうち、実に15人が日本会議のメンバーであり、以前から日本会議は日本最大の右翼組織と言われ、安倍政権寄りの対応をしている。日本会議が出版社に圧力をかける行動の黒幕は、安倍政権だとも噂されている。安倍政権の右傾化は今に始まったことではないが、最近は圧力も露骨になってきたようだ。これも一強多弱の自民党の驕りと言えるのではないだろうか。