今地味ながら密かに関心を呼んでいるテーマに「村総会」という聞き慣れない言葉がある。人口減少に悩む地方自治体が、議員のなり手不足もあって村議会そのものが機能せず、これを廃止して自治体の有権者全員が集まる全体総会で予算案審議を始め、すべて必要な決済事項を決めようという窮余の試みである。ある意味ではわが国の地方自治制度にとって画期的ではあるが、村崩壊の一歩手前の苦しまぎれの試みと言ってもよいのではないだろうか。
この言葉が脚光を浴びるきっかけとなったのは、人口僅か400人の高知県大川村村長が、現在の村会議員による村議会を廃止し、村の有権者全員が話し合う村総会を検討すると表明したことである。人口が減少すればいずれ村が衰退し、存続自体が危機に瀕する。近隣自治体との合併構想もあったようだが、相手側に反対の声があって実現には至らなかったらしい。
現在日本に人口1千人以下の村は28あるそうだが、その内1/4が「村総会」の必要性を感じているという。しかし、村総会に実際に参加するためには、かなり広範囲に居住する村民が一堂に会することが出来るかという最大の課題がある。下手をすると総会が流会続きとなる。この他にも人口減少の村は財政難のため行政職員の採用が厳しく、行政機能の維持も難しいと言われていてそう簡単に解決出来るテーマではない。
最近加計学園問題で底が割れるような応答をした菅義偉官房長官は、この問題について聞かれ「若者や女性を含め議員の多様性が確保されるよう、地方議会で取り組みが肝要だ」とまたトンチンカンな応え方をしている。問題の深刻さがまったく分かっていない。勉強不足なのかも知れない。多様性とか、地方議会以前にこの村は人口減で村自体が成り立たなくなっているという根源的な問題を尋ねているのに、まるで見当違いの返答をしている。
ここでは村が吸収合併の道を閉ざされたうえに、財政的に職員を採用する資金がなく、村民の生活全般を見守る場がなくなろうとしている現実をどう受け止め、どう対応するかということが問われているのだ。官房長官ら政府関係者、或いは総務省の責任ある立場の人間が検討して具体的に回答すべきことではないだろうか。
それにしても来月には財政豊かながら難しい豊洲市場移転問題を抱える東京都議会議員選が行われるが、その一方で東京都下には青ヶ島村のように、人口減少により大川村と同じ問題を抱えている地域があるということにもっと関心を抱くべきではないだろうか。