今日の日経夕刊を一目見てびっくりした。わが国の今年度上期の貿易赤字が、1979年度以来過去最大の赤字幅だという。昨年同期も過去最大だった。それから1年の間に更に8.6%も赤字が増えたというから今後が少々心配である。アベノミクスの好景気などとはしゃぎまわっている間に、実体経済は確実に地盤沈下しているのだ。上期の赤字額がどのくらいか。5兆4千億円である。小さな国の国家予算の何年分かに当たる巨額な数字である。
原因はいろいろある。発電の燃料になる液化ガスの輸入が増えたことが最も大きな原因と言われている。その他にも急激な円安で輸入品が値上がったということもある。しかし、半年間でこれほどの赤字を出したのに、経済政策に対しては無策だったのだろうか。弾力的な手段を講じることができなかったのだろうか。下手をすると、一部の政府要人から液化ガスの輸入量を抑制するために、目くらましでコストがかからないように見える原発再稼働を推進しようとの本末転倒の暴論が出て来かねない。
今月に入ってから株価の値動きが以前に比べて激しい。特にこの1週間ほどは極端な変動で毎日3ケタのアップダウンの繰り返しである。先日まで日経平均株価が1万6千円台だったものが、昨日は1万4千円台まで下がっている。アメリカの景気に左右されたり、中国の不動産不況による国際的な株価の値下がりはあるにせよ、政府当局は情報に左右されて後追いの景気分析を語るだけで、日本としてどう対応すべきかということに明確なシグナルや指示を出していない。しばらく経済市況を見守る必要がある。
さて、3週間余りも中心街で学生らが座り込みストを続けている香港では、昨日学生らと香港政府との間で初めての対話がなされた。ほとんど解決のメドが立たない中で行われた対談は、予想通り平行線のまま物別れに終わった。香港政府側は、香港はあくまで中国の特別行政区で独立国ではないということと、中国政府の決定は変えられないと言って一歩も譲らない。
1997年に中国に返還された後も、50年間は「1国2制度」の下で高度な自治を保障された。だが、約束は必ずしも守られたわけではなかった。今回問題となった2017年の行政長官選出で18歳以上の全市民に投票権は認められた。だが、親中派が多数を占める指名委員会が候補者を絞るため民主派を排除することになると学生たちが公然と反対を唱えた。それが紛争のそもそもの発端である。結局「1国2制度」は絵に描いた餅に過ぎなかった。共産党の1党独裁国家である中国が支配している以上、最初から高度な自治なんか所詮夢に過ぎなかったということだ。
しかし、自由が保障されない香港の現状について非難することは、中国政府が言う「内政干渉」ではなく、独裁政権の横暴、弾圧に抗議するものであり、国際社会はもっと声を上げて中国政府を糾弾すべきである。