刷り上がったばかりの新刊拙著300冊を昨日現代書館からどっと送ってきた。戸外は風雨が強かったので、その一部をお贈りする方々へ短い言葉、サイン、篆刻を押捺して時を過ごす。
今日は朝から台風関連のニュースが多く、NHKは番組を変更して各地の台風状況を細かく報道していた。昨日は全国で160万人に避難指示・勧告が出された。特に三重県鈴鹿市では全市民20万人に避難勧告が出された。今日は台風の通過ルートを伝えていたが、四国から近畿を通り日本海側へ抜けて行った。それでも関東地方にも影響があり、断続的に風雨が強まり東京でも大雨注意報と竜巻警報が発令された。
さて、昨日は長崎へ原爆投下して69年目の一日だった。3日前の広島と同じように市内で平和記念式典が行われたが、広島とは一味違っていた。自民党・公明党の推薦を受けた市長1期目の松井一実氏は、労働官僚出身で自民党の支援を受けて市長選に勝ったため、政府・自民党に対して遠慮があり、秋葉前市長のような政府に物申す対応は見られなかった。
広島と長崎の違いは、安倍首相や各国外交関係者の前で、平和を祈念するスピーチでも微妙に見られた。広島では最も戦争に敏感であるべき市長が、戦争を呼び込みかねない集団的自衛権にまったく触れなかった。これに対して田上富久・長崎市長は集団的自衛権の行使容認に対して「懸念が生まれている」と訴えた。安倍首相は核廃絶への取り組みを強調し、集団的自衛権にも理解を求めた。
しかし、式典では被爆者代表らから、その行使容認について憲法を踏みにじった暴挙と厳しく批判されたが、安倍首相はあくまで平和な暮らしを守るために何を成すべきかを考え抜いた末に集団的自衛権の閣議決定を行ったと説明した。結局安倍首相は、国家国民のために良かれと思い決めたことを今更取り下げる気持ちがないということを繰り返しただけだった。
長崎の集団的自衛権に対する強い拒否反応は、長崎原爆遺族会らとの会合の場でも発揮された。同会長が火に油を注ぐような集団的自衛権は要りませんと訴えたのに対して、安倍首相は見解の相違と突き放したことによっても明らかである。こういう国民の生命を賭ける大切な事項を、徹底的に議論するのではなく、見解の相違と突きっ放す傲慢さは到底国民に受け入れられないだろう。
更に、安倍首相の原爆被災者に対する同情の気持ちについては、首を傾げざるを得ない。首相が広島、長崎の平和記念式典におけるスピーチで、自らの思いのたけや信念、理念を吐露するのではなく、用意された原稿を考えることもなくそのまま棒読みするという無節操と無神経には、被爆者への誠意と思いやりはまるで感じられない。
実は、広島での挨拶は内容的に昨年とほとんど同じで、昨年のコピペと批判されたばかりだったが、この長崎でも安倍首相は昨年の挨拶文とほとんど変わらず、長崎の被爆者団体から批判の声が上がっている。
首相の多忙さは分かるが、誰が見ても不自然でおかしい文言をただそのまま口に出すという無神経さには、呆れ返るるばかりである。首相だって去年と同じ文言だと気付きそうなものだ。なぜ周囲にこれを直せと言えないのか。そんなことも分からないのがわが国の総理大臣とはあまりにも情けないではないか。所詮世間知らずで人の気持ちが分からないお坊ちゃん首相である。