9.11同時多発テロ事件後、アメリカがアフガニスタンでアルカイダ掃討作戦を行った2004年に、アフガニスタンの初代大統領に就任したカルザイ大統領が2期10年の任期を終えて辞任することになった。2期目はアルカイダを壊滅させる手法でアメリカ政府と関係が悪化していた。カルザイ大統領の後任選出で大統領選が行われ、決着がつかずの決選投票が実施されたのは今から3か月も前の今年6月である。そして漸く昨日になって今一つすっきりしない方法で新大統領にアシュラフ・ガニ元財務相が決定した。とにかく政治情勢が複雑で大統領選出も中々一筋縄では行かなかった。
投票に不正があったとしてガニ氏の対抗馬だったアブドラ・アブドラ元外相が独自政府の樹立に向けた動きを見せるなど国家分裂の危機も高まっていた。結局1回目の投票で2位だったガニ氏が決選投票の結果大統領に決まったが、両者の獲得票数は公表されないという奇妙で謎の残る選出となった。両者の間には妥協の産物が盛り沢山である。
ガニ氏は大統領に就任するが、敗れたアブドラ氏は行政長官に就任する。大統領は毎月1回閣議を主宰し、一方の行政長官は毎週閣僚評議会を主宰して、閣僚や治安機関の主要ポストを2人が均等に分配されるというまさに妥協が成せる結果である。
まるで二頭政治である。こんなことでこの複雑な事情を抱える国家をリードし統率して行けるのだろうか、首を傾げるところだが、ともかく新大統領はガニ氏に決まった。
アフガニスタンには内外に難題が山積している。アメリカは駐留米軍を2016年中に完全撤退させる。自前の治安部隊だけで国内にいる「イスラム国」やタリバーンと連携する組織をどう抑え込んで行くのか。ガニ氏が大統領になってアブドラ・アブドラ氏との間で挙国一致政権を樹立することでは合意したが、挙国一致と言えば言葉上はまとまっているように見えてもこれで難局に対して迅速に対応していけるだろうか。心配の種は尽きない。
こんな時でも大統領選出の混乱に際してタリバーンが政府側に対して攻撃を激化させている。周辺諸国との治安も安定せず、国内政局も盤石ではなく、今なお内憂外患のアフガニスタンである。