特定秘密保護法案成立を阻止しようと反対の声を上げるジャーナリズムを始めとする団体の動きや、法案を憂慮する声がここ数日の間にヒートアップしてきた。再来週には臨時国会が閉幕するという事情もあり、政府・自民党は明後日に法案を衆議院で通過させようと躍起になっているからである。実際今日秋田で石破茂・自民党幹事長が26日に法案を通過させると述べた。
この特定秘密保護法案というのは国民の間でも充分理解されていない法律で、しかも危険な法律と専門家が指摘している法案をなぜ徹底的に議論を尽くさず、拙速に法案成立へ向けて突っ走るのか。今日の街頭インタビューを観ていても尋ねられた人は法案の内容についてあまり知らず、他人事のような受け取り方である。私もこの法案については分らないことが多い。だが、実はこの点が一番危険なのだ。
20日国際ペンクラブは日本の特定秘密保護法案について、異例の反対声明を出した。国際ペンが日本の国内法について反対声明を出すのは戦後初めてのことである。ジョン・ラルストン・サウル会長は「国にとって差し迫って必要でも、公益を守るためのものでもない。政治家と官僚が秘密保全の考えに隠れて自らに権力を集中させようとしている」と法案を批判した。
ペン会長が言うまでもなく、法律で秘密を守るということが為政者にとっては自分たちの都合で何でもでき、国民をつんぼ桟敷に置いておけると考えていることを意味している。公明党がプレーキ役を果たさず、修正後賛成に転じた他の政党も「修正ではなく偽装修正で前より悪化している」と見られている。
そもそも秘密保護は国家公務員にとっては国家公務員法によって縛られている筈であるし、防衛に関する秘密については、自衛隊法によってすでに罰則が決められている筈である。このうえ国民を巻き込んで網をかけて言論の自由を押さえつける必要があるのだろうか。
今日もテレビでコメンテーターが、日本に駐留する米軍兵士の費用負担を秘密にしたまま日米当事者同士で一方的に決めるのは、国民の財産を国民に知らせずに浪費することだと話していた。これをメディアにも知らされず、また国民に報道もできない。最終的に第三者機関がチェックするという、その第三者に安倍首相が考えられているという。アメリカですら、チェックは大統領はもちろん政権内部の人を排除しているという。いまの日本のこの法律からは、恣意的なものが感じられる。実際首相が関与するようでは、もうこれでは中立ではないではないか。
昨日の朝日新聞「異議あり 特定秘密保護法案」のコラムに、内田樹・神戸女学院大名誉教授が法案は治安維持法のような凶器にもなると的を射た警告を発していた。内田教授は「安倍政権は経済成長を最優先課題に掲げ、経済発展に都合のよい形に社会制度全体を設計し直そうとしている。その流れの中に同法案を位置づける必要があり、国民が知ることのできる情報を制限すれば、それだけ議論の余地は少なくなり、政策決定はスピードアップする。役員会での議論や他社との交渉や密約を逐一全社員に開示する必要性や、従業員の合意を得なければ決められない経営方針など必要がない「株式会社」のモデルにならって政治システムを改組しようとする試みだ」。
さらにデモクラシーは経済活動には非効率であるから制限すべきだと考える人がこの法案を支持していると決め付けている。
いよいよ明日、明後日が勝負となった。