駒沢大学公開講座も今年は今日が最終回となった。3年間に亘って清田義昭講師から優秀ビデオ作品を鑑賞させてもらい解説と議論を交わすのを楽しみにしていた。清田講師が今回を最後に定年で来年は講座を持たないと聞いて大変残念に思っている。終了後清田講師ともう1人の受講者を交えて3人で、近くの飲み屋で一杯傾けることになった。
今日の授業は北方4島を取り扱ったNHKのドキュメント鑑賞だった。鑑賞後感想を聞かれたので、個人的に次のような考えを述べた。
要約すれば、終戦後のソ連侵略による4島占領は許しがたい暴挙であり、何と言おうとそれは詭弁であり筋は通らない。だが、4島にロシアの人々が現実に生活している現状が、仮に日本の正論を外へ向けて主張するにしても大きな障害となっている。領土問題の解決と言っても、現在住んでいるロシア人をすべて国外へ追放するということは不可能に近い。敗戦後の1945年9月の無法なソ連の侵略が今日まで延々と問題を引き摺っているが、ここは耐え難きを耐えてそろそろ頭を切り替える時期に来ているのではないかと思っている。
そこで一例として、パレスチナの歴史とアラブ諸国との争いについて話した。イスラエルとアラブ諸国の間には、過去2千年に亘って相手国への不審感が募り争いが繰り返されてきている。とりわけ第3次中東戦争のころは、お互いに対立が激化して出入国もままならなかった。それが、昨年45年ぶりにヨルダンを訪れた時、イスラエルへの陸路出入国はほとんど問題なかった。
いまではイスラエルが実行支配しているエルサレムがヨルダンの世界遺産として登録されたり、パレスチナ自治区内にあるベツレヘムの生誕教会が、国連が加盟国ではないパレスチナの世界遺産として登録されたり、イスラエルとアラブの間では、かつての敵対国というほどの激しい対立は見られないように思える。エルサレムがヨルダンの世界遺産であるとしても、イスラエルとしては自国の権利は保有していると大人の対応をしている。これが、北方4島の領土争いにおけるひとつのヒントになるのではないかと述べた。
それにしても戦勝国ロシアの力まかせの略奪には腹が立つが、戦後68年も経過するとその当時の理不尽に対してクレームを申し立てても所詮諸外国からは相手にされないだろうから、悔しい限りであるが新手を打ち出す必要があると思う。現状を受け止めて上記の考え方も参考にしてほしいものである。