元西武百貨店社長にして、セゾングループ代表だった堤清二氏が亡くなられた。消費文化と言われるパルコを中心にした流通グループを創った。それ以前に西武グループの総帥としての存在感は、異母弟の堤義明氏と並んで圧倒的だった。一方でペン・ネーム「辻井喬」として作家・詩人の顔も持ち、いくつか秀作を発表している。私もペンクラブ例会で一度お話をしたことがあるが、非常に温和な方という印象がある。これまでに室生犀星詩人賞、高見順賞、谷崎潤一郎賞、野間文藝賞ほか数々の賞を受賞している。
いつか小中陽太郎さんから聞いた話だが、堤さんが作家として本当に欲しかったのは、どうも「直木賞」だったらしい。小中さんは堤さんに、財界活動で実績を上げたのだからもう充分ではないかと話したようだが、それでも作家としては、本音として栄誉ある大賞が欲しかったようだ。誰も欲望には限りがないものだと思う。
さて、1票の格差の問題に関して今日広島高裁岡山支部は、7月に行われた参院選岡山選挙区の結果は憲法違反で即時無効とする判決を下した。違憲とされた参院選は、最大で4.77倍の格差だった。参院選で選挙無効の判決が出たのは戦後初めてである。昨年衆議選の無効を訴えた裁判では、違憲状態の他に広島高裁支部で違憲の判断も下されている。
参院選については、現在他にも弁護士グループが全47選挙区を対象に選挙無効訴訟を起こしており、今後12月26日までに14高裁で判決が出される。
衆院選でもそうだったが、裁判所の考えは国会が違憲解消に真剣に取り組もうとしない立法の怠慢を糾弾した。これで国会議員が少しは目を覚ますだろうか。あまり期待は持てないが、このまま手を拱いているようだと国の政治を運営する立場上鼎の軽重を問われることになりかねない。