今日はテレビとビデオで日本近代史上興廃を分けた2つの戦争関連番組を観た。
ひとつは太平洋戦争に関するドラマである。わが国の戦争に関しては、不思議なくらいメディアで主題として報道されることが少ない。特に民放テレビではほとんどと言っていいくらい、報道ニュース番組以外では取り上げない。そんな中で流石にNHKは、公共放送だけあっていろいろな角度から取り上げて放映し考えさせてくれる。
昨日NHKで放映された「真珠湾からの帰還」というタイトルに、「軍神と捕虜第1号」と副題が付けられた 90分ドラマは中々の秀作である。実在の人物の行動とその周辺人物を取り扱った番組である。5艇の海軍特殊潜航艇が真珠湾攻撃に参加したが、撃沈され乗組員10名のうち9人は戦死して「軍神」として崇められる一方、死に損なった酒巻和男少尉が太平洋戦争で最初の捕虜となった。心理描写の多いドラマだが、生き残った酒巻が上官だった少佐から教えられた「死に方を考えろ」との教えを考え続ける。米軍の捕虜となったが、その後同じように捕虜となった日本人兵士たちのリーダーとして収容所内で米軍から一目置かれるようになる。酒巻は国内で非国民、国辱として非難されるが、戦後復員することができた。仲間や部下の死を背負い、悩みながら生きていく。その後トヨタ自動車に入り、トヨタブラジルの社長になったという。
われわれ戦争未体験者にとっては、兵士たちの深層心理までは理解し難いが、こういう辛い体験を味わった人が大勢いたということは知っておくべきである。深く考えさせられるドラマだったと思う。
もうひとつは、今晩放送された NHK連続大河ドラマ「坂の上の雲」である。日露戦争で勝負を分けた旅順郊外の「203高地」における日露両軍の激しい攻防戦のシーンが印象的だった。この「203高地」を奪取したことによって日本の勝利が確実なものとなったが、歴史上の有名人が入れ代わり立ち代り登場する。司馬遼太郎の同書を読んだ時、司令官・乃木希典の評価があまりにも低いのに当初驚いたが、今日は存在感が薄く、リーダーシップが見えない乃木が描かれていたのは原作に忠実だったのだと確認した次第である。
戦争関連のドラマには、その時代の世相や社会現象が反映されるケースが多い。その点では歴史や歴史上の人物、時代背景を学ぶことができる。更にこれは書物でも同じだが、深く学べば学ぶほど興味も尽きない。
それにしても、上記2つのドラマは腰を据えて観るのに格好のドラマだ。今日は併せて3時間を長々とじっくり楽しむことができた。ロケ場面なんかを考えると相当の手間と金がかかって大変だと思うが、テレビでも真面目で反戦思想が滲み出てくるような戦争関連番組をもっと制作してほしいものである。