「JAPAN NOW観光情報協会」の12月観光セミナーで、NHK制作局チーフディレクターの小山靖史氏が、今年のドキュメンタリー話題作「渡辺謙アメリカを行く―9.11テロに立ち向かった日系人」について制作者の立場から、ビデオのさわりの部分を映写しながら約2時間に亘って講演してくれた。
この番組は放映された時に観て、中々骨太い作品だと感銘深く感じた作品である。小山氏が製作の裏話を交えて、いくつか興味深い話もしてくれた。アメリカで圧倒的な人気と存在感がある日本人は、MLBのイチローと俳優の渡辺謙だそうだ。その渡辺が企画に賛同し、ボランティアとして演じてくれた。渡辺は1年のうち日本とロスアンゼルスでそれぞれ半分ずつ生活し、日系一世のような生活をしていると自認し、日系人の歴史と生活に関心が強いらしい。
番組は戦時中の日系人隔離収容所で日系人が収容され、自由を奪われたことに対して、日系人下院議員として1987年レーガン大統領時代に、アメリカ議会に日本と日本人に対して謝罪させ、名誉を回復する法案を通過させることに尽力した、ノーマン・ミネタ氏の生きざまと足跡を追ったものである。ミネタ氏の積極的な行動力と誠実な人間性が議会でも信頼され、民主党員であるにも拘わらず、クリントン民主党大統領の下で商務長官、ブッシュ共和党大統領の下で運輸長官という極めて稀な閣僚経験を持つ。
この番組の主旨に惚れこんだミネタ氏と渡辺が、多忙な中でボランティア的協力をしてくれた。そのミネタ氏は戦時中ハート・マウンテン収容所に押し込められて家族の絆を壊されたと語ったそうだが、この番組のために現地を訪れ、アメリカで有名人である渡辺がドライバーを務めてくれたことに興奮していたと述べた。
9.11テロ発生の時、ミネタ氏は運輸長官だった。アメリカ国内にイスラム系住民に対する非難が渦巻き、航空機搭乗に彼らを差別しようとの動きがあった。その差別的行動を阻止したのは、戦時中人種差別により収容所でミネタ氏自身辛い体験を味わった原体験があったからである。
多くの反発とバッシングがある中で、敢えて差別を阻止しようとしたミネタ氏の理念と行動力、加えて揺るがぬ信念、強い正義感が反対論を押さえ押し切った。ミネタ長官の提案通り法案は通過し、アメリカ国内で9.11以後イスラム系住民を差別するシステムは回避された。
現地の映像も良かったが、話の中心がぶれなかったことと、ストーリー性がしっかりしていたことが素晴らしい作品に仕上がった理由だと思う。
小山氏には事前に私の9.11に関する持論を話し理解をいただいた。併せてカイバル峠の写真のコピーを差し上げた。ほかに何人かの質問者の中で、JN協会前理事長の丹羽晟氏が、ミネタ氏は信念が固くぶれないと言われた話で、丹羽氏が運輸省局長時代に仕え、ぶれない政治家として挙げた3人とは、①中曽根康弘・元首相、②橋本龍太郎・元首相、③石原慎太郎・現東京都知事、というのには多少反論もあろうが、なるほどと頷かせるものがあった。
いずれにせよ、今日のセミナーは極めて意義のあるもので、勉強になった。
さて、今日臨時国会が閉会した。最後になって一川保夫・防衛相と山岡賢次・消費者相に対する参議院問責決議案が可決された。だが、拘束力がないので、本人に辞める意思がなく、任命権者である野田首相にも辞めさせる気持ちがなく、両大臣は揃って来年の通常国会まで任務に就く。だが、問責決議に拘束力がないとするなら、なぜ貴重な時間を費やしてすったもんだの辞職騒ぎをやるのか。今国会では提案した法案38のうち、通ったものは僅か13案である。平成になって最低だそうである。国会議員はあまり仕事をしていないことがよく分る。
同時に、公務員人件費の削減、国会議員定数の削減などは法案が通らず、公務員のボーナスが今日増えて支給された。国会議員、公務員を併せて自分たちは身を削らず、国民に負担ばかり強いている。ひどいものである。