1667.2011年12月6日(火) プーチン‘大統領’再び君臨か?

 来年3月ロシアで大統領選挙が行われる。すでに昨年辺りからロシア的と言うべきか、プーチン首相によるおかしな政治的な工作が行われている。つまり、現在のメドベージェフ大統領とプーチン首相がお互いの立場と職務を交換して、プーチン氏が大統領に、メドベージェフ氏が首相に納まろうとの奇妙な政治的取引である。こういう国民を舐めたような政治ショーが世界の大国で行われようとしている。ロシアが近代民主国家ならぬ姑息なエゴイズムを全世界に曝け出したのである。

 これはどう考えてみてもおかしいと思う。プーチン首相の権力欲と名誉欲は留まるところを知らない。最高位権力者である大統領として憲法上認められている2期・10年の役目を3年前に終え、本来なら引退か、閑職に就くべきだったが、甘い蜜に味を占めて権力の座に居座る方策を考えた。それが、一旦座を離れてから前職に復帰することである。権力の中枢から遠く離れず、茶坊主・メドベージェフ氏に一時的に「大統領の座」を貸して院政を敷き、憲法に抵触しない範囲内で虎視眈々とトップの座に復帰を図るという、呆れた政治ショーを演じようとしているのだ。

 プーチン首相の並々ならぬ権力志向は、まず憲法上許される2期・10年の任期を全うすることであるが、更にこのうえに強欲なおまけがつく。大統領就任後この任期を憲法改正によって1期5年ではなく、6年に延長して、自分は2期・12年を大統領として君臨し、再び甘い汁を吸おうというのである。つまり、今後2012年から12年間の2024年まで、再び国のトップでやりたい放題のことをやろうというのである。長期政権に胡坐をかき、恐怖政治を行った末に独裁者として追放された、チュニジア、エジプト、リビアの権力者の最近の悲惨な例を見るまでもなく、いつかはプーチン長期政権が民衆によって倒される可能性も充分考えられる。

 実は、こんな馬鹿げたことがよくできると呆れ返っていたところ、一昨日行われたロシア下院選挙で、プーチン率いる政権与党「統一ロシア」が議席を大きく減らした。そうは問屋が卸さないものだ。2007年の前回選挙では全450議席のうち、「統一ロシア」は丁度7割の315議席を獲得して一党支配状態だった。それが、今回の得票率は52.8%の238議席でしかなかった。過半数を超えたとは言え、憲法を単独で改正できる2/3の絶対安定多数は失った。

 日経紙は、「プーチン首相が過去10年間に亘り実施してきた‘一党支配’や‘管理された民主主義’への警鐘となる。経済面では汚職の根絶や、自由な企業活動の保証に向けた構造改革に期待し、政治面では政党間の公正な競争を求める中間層が声を上げた結果だ」とコメントしている。

 今ひとつ見えにくいロシアの政治が若い層には嫌われていることが窺がえる。プーチン首相が大統領に返り咲いて、ロシアは民主主義の道を歩んでいくのか、或いは以前の暗黒の共産主義国家時代へ逆戻りをするのか、プーチン首相の行動から目が離せない。

 さて、朝日新聞の特集「カオスの深淵」3回目で知ったことだが、ベルギーには昨年6月から首相がいなかった。昨日540日ぶりに漸くディルポ新首相が選任された。ちょっと常識的には考えられないことであり、これでよくも国家が機能できたものだといぶかしい気がする。

 実は、ベルギーは言語別、地域別の5つの自治政府が教育、経済、雇用などを担当しているので、中央政府としては他国の中央政府ほどなすべきことはない。そしてEUという国家の枠を超えるような超国家の枠組みの中に組み込まれているので、それほど国家としての意識や存在感がないらしい。古来ベルギーは、北部のオランダ語圏と南部のフランス語圏の対立が続いていたので、余計にひとつの国という概念が国民の間ではぴんと来ないようだ。

 それにしても、こうなると国家とは一体何だろうか。

2011年12月6日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com