今日は2つの会合があった。ひとつは、日本ペンクラブ総会でいつも通り東京會舘で開かれた。だが、今日の総会は懸念していた通り揉めに揉める結果となった。その最大の理由は、昨年秋開かれた国際ペン東京大会の収支決算報告があまりにも杜撰で、催事運営上は国際ペン会長が史上最大の規模で成功裏に開催されたとその運営手腕を高く評価してくれたように成功に見えたが、実態は財政面で大赤字だったからである。赤字の理由がはっきりしているならともかく、幹部からその点についてどうも明快な説明がない。質問も簿外口座の開設、予算を遥かに上回る支出、海外からの招待者に対する大幅な支出、特に事務経費と称する2億円以上の内訳等々に説明を求める多くの質問が集中した。
不透明な会計処理については、5月21日付毎日新聞‘メディア’欄で大きく採り上げられ、使途不明金があると指摘され、執行部が実態を公表しようとしない後ろ向きの姿勢に懸念を表明していた。
普段からよく存じ上げている小中陽太郎さん、目黒区議・須藤甚一郎さん、藤川鉄馬さんも舌鋒鋭く不審な点を具体的に指摘された。また、写真家の広河隆一氏が写真展の展示費用として実際に収受した金額を遥かに上回る支出金が決算書に記載されていると不満をぶつけていた。結局収支決算については総会で承認に至らず、不審点を再び精査し報告して、その上で承認か、不承認の賛否を改めて問うことになった。この結果、今年度予算は仮予算となった。
その他にも責任の取り方に対する不満も噴出して、過去の総会には見られないほど荒れた中途半端な総会となった。前々から小中さんや大原雄さんから収支結果について聞き及んでいたが、あまりの巨額赤字には、内情を知らなかった会員はどうすべきか戸惑うばかりである。ある程度数字が見えてきた段階で、執行部が赤字原因の分析・解明や、経費削減の手立てもあったのだろうが、大会を通してそのような様子も見られず、有効な手が打たれるようなことはなかったようだ。それらが原因となったのだろう、混乱して決算資料が送られてきたのは、ついほんの1週間前だった。いかに慌てふためき、混乱していたかが想像出来る。総会開催時間も予定を大幅に延長したが決着には至らず、今日はもうひとつの会合に出席する予定があったので、頃合いを見計らって失礼することにした。
ペンクラブ総会を途中で抜け出し、2つ目の会合である日本旅行作家協会(JTWO)総会会場の帝国ホテルへ向かったが、エレベーター内で下重暁子ペン副会長とばったり出会い、JTWO理事会に出席する下重さんと同じタクシーに乗り合わせて会場へ向かった。東京會舘とは至近距離なので助かった。JTWOでは兼高かおる会長が名誉会長に、下重暁子さんが新会長に就任された。私は新人会員として壇上で挨拶する機会をいただいたが、兼高かおるさんに、トラック島の相澤進酋長について話を伺えたことはまずまずだった。ただ、兼高さんは相澤さんとしばしば会って親しかったと仰っていたが、私が知りたい目新しいエピソードは伺えなかった。佐々木信也さんと私が疑問を感じたような点についてもご存知ではなかった。
今日参加したペンクラブと新人会員となったJTWOでは雰囲気が大分違う。やはりペンの方が著名な作家が揃っていて国際的にも知名度があり存在感があるので、JTWOとはプライドの面でも若干異なるような印象を受ける。その点ではJTWOの方が気安く、アトホームな空気が流れているような気がした。私を推薦してくれた山本澄子さんを含めて、ペンとJTWOの両方の会員になっている人も随分おられる。旅行作家の集まりだけあって、旅行業界と付き合いのある人が多い。現役時代によくお世話になった高梨洋一郎さんや、林荘祐さんのようによく知っている会員にも久しぶりにお会いした。この会に入会したのを機会に自分の旅行体験を活かして、旅に拘った文を書いてみたいと思っている。
2011年のアーカイブ
1471.2011年5月24日(火) 福島第1原発は1号機も、2号機も、3号機もメルトダウン
福島第1原発では1号機の他に、2、3号機も炉心溶融(メルトダウン)を起こしていたことが東電の発表した報告書で分った。しかも、いずれも大震災後まもなくの3月15日までにメルトダウンしていたことを、ほぼ2ヶ月半も経過して漸く東電は認めたのである。現在国会でもその後の作業に関して情報が伝えられたとか、伝えられなかったとか、見苦しい責任のなすりあいで国民はすっかりしらけ切っている。この様子だと、まだまだ重要な情報が隠されていると考えるのが自然である。
折りも折り国際原子力委員会(IAEA)調査団が来日し、海江田万里・経済産業大臣と会談した際、大臣は知りえた限りの情報を提供して世界の原子力安全へ協力したいと申し出た。原発事故は、日本のみならず、世界中からその安全が確保されるかどうか注目されている。内輪で喧嘩なんかやっている場合ではあるまい。
先日私自身にもメールで呼びかけがあり、凄いことを考える人もいるものだとその活動に関心を持っていたが、その後メディアでも話題となり、昨日の朝日夕刊によればその行動を是として応募した人が実に165人もいるという。その活動とは、復旧作業が難航している福島第1原発建屋内の作業に作業員として協力を申し出た高齢者の行動隊「暴発阻止行動隊」の行動である。趣意書には、60歳以上で現場作業が出来る体力・意思のある人という条件である。代表者の山田恭輝さんという方は元住友金属の技術者で、実際に同じような職場で働いたことがある人のようだが、他に申し出た人たちはこのように危険な実務を経験されたことがあるのだろうか。私はとてもこの行動隊には参加する勇気はないが、申し出を受けた政府でも対応に戸惑いが見られ、実際のところありがた迷惑に感じているような節が見られる。細野豪志・首相補佐官は「非常にありがたい、献身的な行動で、気持ちは受け止めたい」と謝意を述べたが、作業の長期化に伴い作業員の人繰りがつかずに苦慮しているとは言え、作業自体が1人ひとりに大量の放射能が蓄積しないような作業工程を考えているので、元々危険作業に長く携わることを厭わない「決死隊」のような行動パターンを作らない工程の構築を考えているという。ということは、本音は決死隊の気持ちはありがたいが、受け入れはご遠慮致したいということではないか。
昨日東日本大震災の復興財源を確保するため、菅政権と連合系の公務員労働組合連絡会との間で国家公務員給与の削減幅について合意した。課長以上の幹部を10%、課長補佐・係長を8%、係員を5%それぞれ削減し、ボーナスは一律10%減額するという。こんな程度では生ぬるい。給与は全員5~10%削減、ボーナスは全額支給しないことにした方が国民は納得する。大体国民が被災して困窮しているのに、役人が元々民間営利会社の「成果が上がった場合にご褒美として支給される」ボーナスを黙って受け取ること自体理屈上おかしい。国と国策会社・東電はこんな大事故を起こし国と国民に大損害を与えておきながら、主導した役人が図々しくボーナスを受け取るようなことは「想定外」でとても理解し難い。
1470.2011年5月23日(月) 「日和見」オバマでは中東和平は無理
昨日オバマ米大統領が中東和平についてひとつの前向きで、且つ衝撃的な提言をした。イスラエルは第3次中東戦争勃発時の国境に戻すべきだ、つまり第3次戦争によって占領した土地を元の所有国へ返還すべきだとの当たり前とも思える要望だった。戦勝国イスラエルの戦利品、即ち占領こそが現在のこじれたイスラエルとパレスチナの対立を齎した根源の最大要因であるからである。これに対してユダヤ人社会から反発があるだろうことは当然予想される。しかし、敢えて火中の栗を拾ったオバマ大統領にとっては大英断であり、可能性は低いが、仮に実現すれば「オバマ」の名は未来永劫に‘One of the greatest US Presidents’として世界史上に残るだろうと期待していた。
それがどうだろう。走り出した理想のゴール手前でいとも簡単にUターンして、現在地より後退してしまったのである。一日明けたら前言を翻したも同然の言い訳スピーチの中にそれははっきり表れている。昨日演説直後にネタニヤフ・イスラエル首相から猛反発を食らったうえに、穏やかではない親イスラエル・ロビー団体の空気を察知したのか、完全にペースダウンした。
「日和見」オバマの言い分はどうか。ワシントンで親イスラエル派団体に対して「1967年6月4日に存在したのとは異なる境界線を、イスラエルとパレスチナ自身が交渉するという意味だ」と語った。昨日のスピーチ内容なら最初からイスラエルが受け入れる筈がない。なぜ可能性のまったくない話を観測気球として打ち上げたのか。アメリカ合衆国の大統領たる者にして、まったく軽率でおかしな話だ。
オバマの言い訳を聞いて、喜んだネタニヤフ首相は和平実現への努力を評価するとコメントした。オバマが前言を翻した発言は、和平実現への努力にはまったく値しない。2大政治家による猿芝居以外の何者でもない。それにしても、たった1日でこうもあからさまに発言の内容を急変させるというのは、何とか膠着状態の現状から逃げ出したいためにジャブを放って状況を探ってみた感覚ではないかと勘ぐらざるを得ない。アメリカ合衆国の大統領としてはお粗末で不謹慎極まる。
オバマ大統領はこれまで年齢の割りに、行動力、判断力、決断力、哲学、リーダーシップなどに秀でていると評価していたが、がっくりである。日本にも信頼出来る政治家はあまりいないが、世界にも心から尊敬出来るような政治家が少なくなったものである。
そのわが国の無能な政治家現象を象徴するようなドタバタ劇が、今国会を舞台に演じられている。
福島第1原発1号機への海水注入が震災翌日に一時中断された問題で、政府、原子力安全委員会、東電の当事者が情報の共有が出来ず、誰の判断で中断されたかが大きな問題となっている。結果的に中断したことによりベントが遅れ、事態を深刻化させた。
その責任のなすりあいを国政の場で延々と行っているのだから、呆れかえる。この低次元のやりとりを見て、とばっちりを食った原発周辺の避難民の怒りは頂点に達している。
政治家の無能・無責任と学者バカのプライド、そして殿様商売の東電がそれぞれバラバラに自分たちの都合だけで大事故処理を行おうというのだから、中々前へ進まないわけである。このままで、本当に日本は震災から立ち直れるのだろうか。
1469.2011年5月22日(日) パソコンのシェイプアップとリフレッシュ
いつも使用しているPCのスピードが遅く、最近些かいらいらしていた。実際書斎のデスクトップ型VAIOとパナソニック・ノートPCともに機能が大分ダウンしている。いつもこのブログを書き込むのもこのノートPCである。そこで先日友人の大塚武夫氏に相談して、今日午後大塚氏とITコンサルタントの小糸武彦氏に自宅へ来てもらった。
PCに詳しいわけではないが、両PCともに後から後へとソフトをダウンロードしてしまえば、限られた容量に重い負担がかかってくることぐらいは分っている。専門家の小糸氏に早速2つのPCを診てもらった。案の定2台ともその容量の割りに相当負担がかかっていた。大掃除をしてもらっても起動は一気にスピードアップとはいかない。更にデフラグ処理をして粗いスペースを詰めてもらったところ、漸く軽くなりスピードもアップした。
更に普段あまり使わないもう1台のVAIOノートPCも診てもらったところ、4つばかりウィルスが侵入し、パンク寸前だった。普段使用しないとつい疎かになってしまう。痛感したのは機械ものはいつも大切に取り扱い充分気を配らなければいけないということである。大塚氏と小糸氏には、2時から8時頃までずっと書斎で世話になってしまった。随分長い時間熱心にわが愛用PCに立ち向かってくれて感謝している。これからは6ヶ月~1年のペースで定期的にチェックしてもらうことにした。
さて、昨日行われたオバマ米大統領の中東政策演説が大きな反響を呼んでいる。中東和平推進のために、第3次中東戦争勃発時の国境に戻すという、イスラエルに対して大きな譲歩を迫ったからである。一部には、オバマの現状認識が甘いとの声があり、またユダヤ人を中心としてオバマ大統領に対する露骨な反感も表れている。案の定ネタニヤフ・イスラエル首相は演説直後のオバマ大統領との会談で、この提案は幻想であると強い怒りと不満を表し、この受け入れを断固拒絶した。これからの和平交渉が反って難しくなったとも思えるほど、イスラエルにとってはきついオバマ大統領の提案である。
これまでアメリカとイスラエルは、蜜月と呼んでも良いほど良好な外交関係にあった。しかし、両国間に従来とは異なる関係が生まれるかも知れない。それは、イスラエルが親米政策を一部見直すことであり、その一方でアメリカがイスラム諸国と接近する動きでもある。遥か紀元前より対立し、第2次世界大戦後もイスラエル建国を巡って対立しているイスラエルとアラブ諸国間相互の憎しみと反感が、思い切ったオバマ大統領の強い要望により、少しでも好転し和平へのきっかけになれば、それこそ現代の国際社会でこんな素晴らしいことはない。
しかし、中東和平への道は険しい。これからもこの行方を注意深く注目していきたい。
1468.2011年5月21日(土) オバマの要請で中東和平は可能か。
昨日オバマ米大統領はパレスチナ和平推進のために、提言というより、和平条件として現在イスラエルが占領している地域を、1967年の第3次中東戦争時の状態に回復させることをイスラエルに求める演説をした。その一方で、イスラエルの存在自体を認めようとしないイスラム組織ハマスにもイスラエルの存在を受け入れるよう求めた。
実は第3次中東戦争勃発に触発され、その半年後に単身戦争の当事国、その他のアラブ動乱の地、そしてアフリカまで行った。その意味では私が今日旅行ジャーナリストを名乗り、4日前にも「武者修行を通して見た世界」のテーマでおしゃべり出来たのも、この戦争のお陰だと言えないこともない。その当時日本ではベトナム戦争の方がよほど注目され、パレスチナ、アラブなどには大して関心が持たれなかった。その点では私自身些か変わり者だったから、40年近くも前にアラブなんぞへは行ったのではないか。
ベトナム戦争と並行して、その頃アラブという地域に少し興味を持ち始めたことは事実である。それはイスラム教という日本人にとって異質な宗教、その当時あまりにも日本人の感覚と常識とはかけ離れた伝統や風習に興味を惹かれたからでもある。でも、普通の感覚なら何もアラブとイスラエルの戦いの場へ直接乗り込むこともなかったのかも知れない。結果的に初めてアラブを訪れたお陰でイスラム教風習のさわりのようなものを知ることになったし、その後イスラエルとパレスチナの対立要因を少しばかりだが理解出来るようになった。そしてこのことがその後今の仕事上?でも大いに役立っていると思う。
ところでオバマ大統領はイスラエルが占領した地域、特にヨルダン川以西をパレスチナ側へ返すことを求めている。そこはすでに広い地域に亘ってユダヤ人入植地として開墾され、周囲には高い壁も作られパレスチナ人が入り込める余地はない。その既得権の如き占領地域をイスラエルがすんなり返還するとはとても思えない。それでいながらアメリカ国内のユダヤ人団体などの反発を恐れることなく、敢えてパレスチナ和平を推進しようとのオバマ大統領の強い決意には敬服をすら覚える。日本の政治家にオバマの真似が出来ないのは、政治家としての志と信念がないということと、火中の栗を拾おうとする気概がないからである。
今日中国の温家宝首相と韓国の李明博大統領が日中韓3国首脳会談出席のため空路仙台へやって来て、東日本大震災の被災者を見舞った。昨秋菅首相と温家宝首相が顔会わせした時には、こじれた尖閣諸島事件直後ということもあり、温首相は菅首相とは顔を会わせようともせず、終始笑顔を見せなかった。大震災が2人のギクシャクした関係に終止符を打ってくれれば良いのだが・・・。
1467.2011年5月20日(金) カーティス教授「日本の政治家は国民に甘えている」
昨日の朝日新聞に依れば、日本通の政治学者であるジェラルド・カーティス米国コロンビア大学教授が、菅首相と自民党の谷垣総裁に会い2人の政治姿勢について直接苦言を呈したという。カーティス教授の言うことがふるっている。「日本は社会がしっかりしているから、政治が貧困なままでいられる。日本の政治家は国民に甘えている」と喝破した。誰が見てもその通りであり、最早政治家なんてとても芯から信頼することが出来ない。
そこへ西岡武夫・参議院議長が菅首相は即刻辞任すべきだとの書簡を送った。これまでにも菅首相のリーダーシップや政治手法について不満を漏らしていたが、ついに中立であるべき立法の長が行政の長へ太い横槍を入れた。流石に与野党から議長としての発言は慎重であるべきだと批判の声が強い。以前から西岡氏は高い所から発言する割りに自分の立場を忘れがちな行動を取るのが習いである。いい年をして母親に指図され中々独り立ち出来なかった、典型的な世襲政治家で、祭り上げられている内は存在感があるが、議長となって言動に制約が課せられ、利権から遠ざかるにつれてじっとしていられなくなる人である。こんな人が良識の府のトップだというのだから呆れ果てるばかりである。これでは民主主義の根幹である3権分立も何もあったものではない。これもカーティス教授が指摘するように、国民に甘えている典型的な政治家である。
そのカーティス教授が、今夜の「報道ステーション」にゲストとして出演した。教授は菅首相も谷垣総裁もともに、今後原子力政策をどう構築するのかのグランドデザインを示さなければダメだと持論を述べ、現状は先送りばかりだとも発言された。教授は実際に被災地を歩かれた。被災者にインタビューしながら日本人の礼儀正しさに感嘆していた。現地で魚市場の残骸や、破壊された機械設備など惨状を見て、その日本人のパワーを持ってすれば日本は立ち直れると思うと期待感を語った。被災地で真剣に土地の人にインタビューする行動的な教授に比べて、日本の政治家たちの影が薄いこと夥しい。
教授は今度の震災は日本を発展させるターニングポイントになると語り、住民に希望を持たせる言葉を与えるのが政府の仕事であるが、まだそれがないと手厳しく語った。スピード感を持って復興を進めないと住民が土地を離れてしまうと嘆いてもおられた。政治家は復旧の過程で住民にビジョンと力を与えられるかどうか、日本の政治も非常事態であると力説していた。まさに日本人以上に日本を知る実践派の政治学者である。
さて、福島原発の事故収束の見通しが立たない中で、東電の決算報告がなされた。最終決算は実に1兆2千億円の赤字だという。とてつもないほどの巨額である。しかも、今後出費が予定される賠償額を支払っていない中でこれだけの赤字である。大学経済学部に入学した昭和34年度の国家の一般会計予算が1兆4千億円だったから、ほぼそれに匹敵するほどの営業赤字を1民間会社の1年間の営業活動の結果として生ぜしめてしまったということになる。いかに1次的には想定外の自然災害が齎したものであるにせよ、想像を絶するほどの金額である。
1466.2011年5月19日(木) 原子力の恐怖を訴えるテレビ・ドキュメント
今日の0時と前夜、前々夜の3日間に亘り、NHKが2月に放映した世界ドキュメンタリー・シリーズの原発関連番組を再放映してくれた。この番組を放映してから1ヶ月後に福島原発問題が発生した。今回放映されたのはいずれも夜中なので、3回とも録画しておいて今日午後3本続けて一気に観た。今日放映されたのは「地下深く永遠に-核廃棄物10万年後の危険」と題するもので、4月に観た映画「100,000年後の安全」とテーマと舞台は同じで内容的には同じ主旨であり、映画がフィンランド製だったのに対して、これはデンマーク製だったが訴える主旨はほとんど同じだった。これを観て改めて放射性廃棄物の処理に関する深刻な問題を考えさせられた。映画、テレビともにフィンランドの首都ヘルシンキの西方240キロメートルにある、岩盤の固い小さな島・オルキルト島における放射性廃棄物処理施設の建設を採り上げた問題点がほぼ同じドキュメントである。
昨日と一昨日放映された「放射性廃棄物はどこへ-終らない悪夢」の前編と後編は、2009年にフランスで製作されたドキュメントであるが、前者と同じシリーズの中で放映されただけに、視点も目的も共通性があり、その意味では3回の放送分を観てデンマークとフランスの製作者がともに、現在の原子力政策と放射性廃棄物の扱いに危機感を抱いていることがよく分る。
結局人類、特に現代人は原子力による恩恵に与った一方で、自分たち自身で処理出来ない難題を抱え込んでしまった。それをどういう手段によって今後解決するのかという点については、まだ答が出せない。
それにしても我々普通の人間は、東日本大震災で福島原発が容易ならない事態に陥って初めて、原子力に関心を抱かされたが、悔しいことにこれまでまったく無知であったことが分る。原子力専門家でない我々は、知る機会から意図的に遠ざけられ専門家集団の秘密の壁の外へ外されていたと言ってもよい。その最大の無知たる所以は、ほとんどの国民が原子力を作り出しても、不都合なら元栓を止めれば稼動を止められると思い込んでいたことにある。ところが原子力は実際には他の科学的機器や設備とは異なり、一旦火をつけたら自分たちで消せないということを専門家から聞かされ、初めて原子力の恐ろしさに愕然として不安になった。今や消火出来ない原子力の対応に日本中、いや世界が不安に怯え、これからの動向を心配している。
結論から言えば懸念されるのは、放射能を消火出来ないことと、使用済み核廃棄物を捨てようにも投棄する場所がないということである。このドキュメントを観て知ったことだが、1950年ごろから何と放射性廃棄物はドラム缶に詰められて海中深く廃棄処分されていたという。そのドラム缶は今や錆びて穴が開き、貯蔵されていた廃棄物は海中に流れ出ていたことになる。その周辺の海域の魚を食べた人たちは、水俣病と同じ病に取り付かれているのではないだろうか。
漸く1993年になって船から海へ投棄することが国際的に禁止されたというが、その間何とも止めようがなかったということが怖い。今も船舶で沖合いまで運んで捨てることは禁止されているが、陸から海中深く廃棄処分することは禁止されていないというデタラメぶりには驚くほかない。
アメリカで1943年に操業して長崎原爆を製造した西海岸にあるハンフォード核施設は、今では稼動していないが、相変わらず放射能汚染水を地下に垂れ流しているという。フランスでは8割の電力を原発に頼っているせいで、原発に否定的な考えはあまり聞かれないが、廃棄物の処理に困っても財政的に苦しいロシアに引き取ってもらっている。その結果フランスの廃棄物はシベリアのトムスクに野ざらしのままで、ロシア国民にとっては穏やかではない。そのロシアではチェルノブイリ事故の遥か以前の1957年にソ連時代にウラル州のマヤークで核施設が爆発して、大勢の犠牲者が出て未だに放射能を吐き出している。フランス北西部のコタンタン半島のラ・アーグ処理施設では今も空と海へ放射性物質を排出している。どこの国でもあまり環境汚染については少々無神経であるし、その人体への健康障害とか環境問題に対してその姿勢は見識を欠き不誠実であると言わざるを得ない。
あるヨーロッパの有識者が語っていたが、原子力大国のフランスでさえ、原子力について専門家以外はまったく知識がない。前回の大統領選挙でサルコジ候補とロワイヤル候補の原子力の討論を聞いていても、原子力に関してまったく無知であることが分り、政治家は門外漢で原子力政策についてはまったく関与せず、エネルギー技術官僚と学者がすべてを取り仕切り、原子力についてはすべて秘密主義のまま国民に実情を公開せずに今日まで来たことが最大の問題だと指摘していた。
とにかく核再処理にしても有効に再使用出来るのは10%に満たないという。現状では再処理をせずに廃棄物は地中深く埋め込む以外に選択肢がないというのである。フランスのビュールではオルキスト島の埋蔵場所と同じような地下埋蔵施設をすでに建設中であるが、考えてみればこれだけ面倒で手に負えないエネルギー資源は世界でもう止めたらどうだろうか。どうしてそういうまともな声が燎原の火の如く広がらないのだろうか。まだ隠された話があるのかも知れないし、まったく怖い世の中になったものである。
1465.2011年5月18日(水) 国土交通省鉄道局次長の講演を聞く。
所属する「JAPAN NOW観光情報協会」総会が麹町の海事センタービルで開かれた。例年通り昨年度決算報告と本年度事業報告はシャンシャンシャンとすんなり承認された。例年のごとく行われた基調講演は、国土交通省鉄道局関口幸一次長による「高速鉄道の現状と将来展望」というテーマだった。こういう専門的で、政府の計画に携わっている責任者から直に本音を聞く機会というのはそうざらにあるものではない。関口次長は、細川内閣時代に運輸大臣だった社会党出身の伊藤茂氏の秘書官を務めたが、その辺の事情を当時運輸事務次官だったJN協会松尾理事長が面白おかしく紹介してくれた。関口次長は、久保成人鉄道局長が政府の委員会に呼ばれたために急遽ピンチヒッターとして久保局長のレジュメを抱えて駆けつけてくれたものである。説明の材料を手際良く整理して、丁寧に説明された。新幹線の財政面と新規計画について説明されたが、以前から疑問に思っていた国鉄解散時に旧国鉄から国鉄清算事業団へ引き渡された巨額の負債に関する説明が分りにくかった。
もう一点疑問を感じたのは、JR東海がリニアモーターカーを独自に整備する計画のようだが、総額9兆円強の途方もない予算を投じて、敢えて東海道新幹線をよりスピードアップするだけのための新線を、果たして敷設する必要があるだろうかということである。更に驚いたのは、第1期工事として東京・名古屋間を着工し開業した後に、時間をおいて第2期工事を着工するロードマップは、あまりにものんびりし過ぎているのではないか。付帯意見として大阪までの早期開業のための検討が挙げられているが、それにしても計画自体が完成するのは、今から34年後の実に2045年である。
世界の文化遺産の中には長い年月をかけて完成した建築物などもかなりある。しかし、それらは実用的なものでなく、概して立派で価値あるものに仕上げるために制約もなく長い時間をかけることはある。今ならバルセロナのサグラダ・ファミリア聖教会などがその典型であろう。だが、このリニアモーターカーは、現代社会で役立たなければ意味がないと思う。加えて蒸し返すようだが、新幹線に並行してなぜ新たな超特急を整備する必要があるのだろうかと講演を聴いていて、素朴な疑問を感じた次第である。
1464.2011年5月17日(火) ロータリークラブで講師
昨日パワーポイントでメーカーとすったもんだしたが、幸いメーカーとは関係なく問題解決して今日会場の吉祥寺第一ホテルへ講演に出かけた。東京武蔵野ロータリークラブでお話するのは、7~8年ぶりくらいで2度目である。定例会合・昼食会の中に卓話として30分の予定で時間をとってもらい、「武者修行を通して見た世界」というタイトルで私の海外旅行の体験談と現場における臨場感の大切さをお話した。内容的には話したい事柄は大体説明出来たので佳しとするが、何と言ってもひとつのテーマに30分とはいかにも短い。話の中で話を絞りに絞っても30分ではとても足りないと話したので、終ってから受講者からもう少し聞きたかったという声を聞けたのは、嬉しいことだった。
話を始める直前に、佐々木信也さんから携帯へ連絡が入り先日確認をお願いした件の回答をいただいた。トラック島酋長・故相澤進さんの湘南高在籍の確認を、同校で同学年の筈の佐々木さんの兄・佐々木道也氏に尋ねてもらったところお兄さんは記憶にないということだった。近日開催の同期生会で他の同級生に当たってもらうことになった。佐々木さんの話では、或いは年齢とは異なる学年に在籍した可能性もあるのではないかと仰っていた。それにしても中々願ったようには確認が取れない。依然として相澤さんが在籍していたのかどうかという疑問はそのままである。
さて、相変わらず福島原発が暗雲のように淀んでいる。先日1号機のメルトダウンが明らかになったばかりなのに、今度は2号機と3号機もメルトダウンが起きていたと公表された。まったくやれやれである。原発に関しては一向に良い話が聞かれない。更に工程表の見直しも必要だという。賠償問題も厳しい。こんな状態で果たして年末までに何とか安定させたいとの願い通り収束へ向かうのだろうか。これまでの作業、公表過程などを見ているとどうも信頼するには心細い。あ~あ、いつになったらすっきりするだろうか。
1463.2011年5月16日(月) 誠意が見られないメーカーの不遜な対応
明日東京武蔵野ロータリークラブで「卓話」を頼まれており、「武者修行を通して見た世界」というタイトルでお話することになっている。すでにパワーポイントのスライドも作成した。持参するプロジェクターのテストを兼ねてスクリーンに映して確認しようと今日自宅で試してみたが、画像がPCからプロジェクターにどうしても送られない。いくつかのボタンをいくら押しても一向に起動しない。あの手この手でトライしてみたがダメだったので、ついに音を上げてメーカーの「日本ヒューレット・パッカード」の「消費者サービスセンター」?とやらへ電話で問い合わせてみた。
プロジェクターが壊れたわけでもなく、まして苦情を言うわけでもなく、ただ操作の方法、つまりボタンの押し方を聞こうとしているだけなのに、やっと通じた電話は、最初からこの製品はすでに製造、販売とも中止したので、製品の説明は出来ませんのでご諒解くださいときた。しかも、4月一杯でこの型式に関する問い合わせは止めたと会社の一方的な回答なのである。私がこれを購入したのは、4年前である。しかもかなり価格の高いものだった。そんなに旧式の製品とも思えない。実際講義をする場合とても役立っている。
まず、理解に苦しむのは、第1に販売したがもう製造を中止したので、問い合わせは受け付けないという高飛車な説明が世間で通ると思っているのだろうかということである。第2に、苦情ではなく自社製品のボタンの押し方を尋ねているだけの消費者に対して、応じられないというのは会社の営業姿勢として、あまりにも顧客を舐めているのではないか。そんな簡単なことは1社員の心がけ次第でいくらでも応えられるではないか。まったく腹が立つ。
呆れかえって開いた口が塞がらない。大体最近の会社の営業姿勢には、顧客とはイチャモンをつける煩い奴と思っているのか、正面から誠実に対応しようとの姿勢が見られない。最初から「逃げ」の姿勢が見え隠れしている。電話は中々つながらず、最初から質問はホームページを通してお願いしますと、まるで顧客はポジティブに自分で壁を越えなさいと言われているようなものだ。それでいて顧客を放っておいて、自分たちは問題から「逃げ」ようとしている。これが、アメリカ企業日本版の典型なのだろうか。まったく営業の真髄を知らない会社と社員が多くなった。
僭越であるが、「日本ヒューレット・パッカード」経営者に営業とは最低限どういうことを心がけるものであるかを教えてやりたくなった。もうこんな不誠実な会社の製品なんか金輪際買うものか。知人にも絶対薦めない。
結局パソコンに詳しい知人に何とか連絡が取れ、トラブルと悩みはいとも簡単に解決した。