今日の0時と前夜、前々夜の3日間に亘り、NHKが2月に放映した世界ドキュメンタリー・シリーズの原発関連番組を再放映してくれた。この番組を放映してから1ヶ月後に福島原発問題が発生した。今回放映されたのはいずれも夜中なので、3回とも録画しておいて今日午後3本続けて一気に観た。今日放映されたのは「地下深く永遠に-核廃棄物10万年後の危険」と題するもので、4月に観た映画「100,000年後の安全」とテーマと舞台は同じで内容的には同じ主旨であり、映画がフィンランド製だったのに対して、これはデンマーク製だったが訴える主旨はほとんど同じだった。これを観て改めて放射性廃棄物の処理に関する深刻な問題を考えさせられた。映画、テレビともにフィンランドの首都ヘルシンキの西方240キロメートルにある、岩盤の固い小さな島・オルキルト島における放射性廃棄物処理施設の建設を採り上げた問題点がほぼ同じドキュメントである。
昨日と一昨日放映された「放射性廃棄物はどこへ-終らない悪夢」の前編と後編は、2009年にフランスで製作されたドキュメントであるが、前者と同じシリーズの中で放映されただけに、視点も目的も共通性があり、その意味では3回の放送分を観てデンマークとフランスの製作者がともに、現在の原子力政策と放射性廃棄物の扱いに危機感を抱いていることがよく分る。
結局人類、特に現代人は原子力による恩恵に与った一方で、自分たち自身で処理出来ない難題を抱え込んでしまった。それをどういう手段によって今後解決するのかという点については、まだ答が出せない。
それにしても我々普通の人間は、東日本大震災で福島原発が容易ならない事態に陥って初めて、原子力に関心を抱かされたが、悔しいことにこれまでまったく無知であったことが分る。原子力専門家でない我々は、知る機会から意図的に遠ざけられ専門家集団の秘密の壁の外へ外されていたと言ってもよい。その最大の無知たる所以は、ほとんどの国民が原子力を作り出しても、不都合なら元栓を止めれば稼動を止められると思い込んでいたことにある。ところが原子力は実際には他の科学的機器や設備とは異なり、一旦火をつけたら自分たちで消せないということを専門家から聞かされ、初めて原子力の恐ろしさに愕然として不安になった。今や消火出来ない原子力の対応に日本中、いや世界が不安に怯え、これからの動向を心配している。
結論から言えば懸念されるのは、放射能を消火出来ないことと、使用済み核廃棄物を捨てようにも投棄する場所がないということである。このドキュメントを観て知ったことだが、1950年ごろから何と放射性廃棄物はドラム缶に詰められて海中深く廃棄処分されていたという。そのドラム缶は今や錆びて穴が開き、貯蔵されていた廃棄物は海中に流れ出ていたことになる。その周辺の海域の魚を食べた人たちは、水俣病と同じ病に取り付かれているのではないだろうか。
漸く1993年になって船から海へ投棄することが国際的に禁止されたというが、その間何とも止めようがなかったということが怖い。今も船舶で沖合いまで運んで捨てることは禁止されているが、陸から海中深く廃棄処分することは禁止されていないというデタラメぶりには驚くほかない。
アメリカで1943年に操業して長崎原爆を製造した西海岸にあるハンフォード核施設は、今では稼動していないが、相変わらず放射能汚染水を地下に垂れ流しているという。フランスでは8割の電力を原発に頼っているせいで、原発に否定的な考えはあまり聞かれないが、廃棄物の処理に困っても財政的に苦しいロシアに引き取ってもらっている。その結果フランスの廃棄物はシベリアのトムスクに野ざらしのままで、ロシア国民にとっては穏やかではない。そのロシアではチェルノブイリ事故の遥か以前の1957年にソ連時代にウラル州のマヤークで核施設が爆発して、大勢の犠牲者が出て未だに放射能を吐き出している。フランス北西部のコタンタン半島のラ・アーグ処理施設では今も空と海へ放射性物質を排出している。どこの国でもあまり環境汚染については少々無神経であるし、その人体への健康障害とか環境問題に対してその姿勢は見識を欠き不誠実であると言わざるを得ない。
あるヨーロッパの有識者が語っていたが、原子力大国のフランスでさえ、原子力について専門家以外はまったく知識がない。前回の大統領選挙でサルコジ候補とロワイヤル候補の原子力の討論を聞いていても、原子力に関してまったく無知であることが分り、政治家は門外漢で原子力政策についてはまったく関与せず、エネルギー技術官僚と学者がすべてを取り仕切り、原子力についてはすべて秘密主義のまま国民に実情を公開せずに今日まで来たことが最大の問題だと指摘していた。
とにかく核再処理にしても有効に再使用出来るのは10%に満たないという。現状では再処理をせずに廃棄物は地中深く埋め込む以外に選択肢がないというのである。フランスのビュールではオルキスト島の埋蔵場所と同じような地下埋蔵施設をすでに建設中であるが、考えてみればこれだけ面倒で手に負えないエネルギー資源は世界でもう止めたらどうだろうか。どうしてそういうまともな声が燎原の火の如く広がらないのだろうか。まだ隠された話があるのかも知れないし、まったく怖い世の中になったものである。