ここ数日メディアでは検察制度に関わる議論や情報が喧しい。今朝の新聞はトップ頁から社会面まで、特捜部主任検事の改ざん事件から、それに伴う主任検事の2人の元上司の起訴、同じく懲戒免職、2人の否認と最高検に対する全面対決、関係者の処分発表、そして大林宏検事総長の謝罪の記者会見と目白押しである。加えて、小沢一郎・民主党元代表の検察との対決姿勢がある。これまで検察制度に対して不審や不満はあったにせよ、これほど多く1度に国民の不信感が表沙汰になったのは珍しい。恐らく空前絶後ではないだろうか。
いま検察制度に対する信頼は大きく揺らいでいる。冤罪問題によって、その解決のための有力な手段のひとつと考えられている可視化がここへ来て大きくクローズアップされている。これまでの取調べが検察のストーリーに乗らされた、容疑者の供述調書に基づいた自白を拠りどころにして容疑者を起訴してきたことから、真実が隠蔽されているとの反省もある。解体も視野に特捜部の存在自体にメスを入れるべきではないかとの論調も見られる。
菅首相から、柳田法相を通して、失われた国民の信頼を一刻も早く回復することが大切とのメッセージが検事総長に伝えられた。大林検事総長は、前代未聞の事態に至ったことを深くお詫びしたいと述べ、全力で信頼回復に努める決意を示した。
実際悪を取り締まるべき検察が信頼出来ないのでは、国民としてはあまりにも心許ない。1日も早く信頼できる道筋を示して欲しいと思う。
さて、尖閣諸島事件以来日中間の外交関係にきしみが出ているが、それに伴い中国は経済、及び社会関係においても日本に対して極めて厳しく、場合に応じて意地の悪い対応を突きつけている。日本に対してばかりでなく、このところ中国は経済力を背景に世界へ向けてもやりたい放題の所業に及んでいる。日本政府首脳は、事を荒立てることは事態を悪化させる一方と、比較的冷静な発言で大人の対応をしているが、中国政府は世界的に希少価値のあるレアアース(希土類)をほぼ独占的に産出出来る有利な立場を逆手にとって、まず日本に対して全面禁輸に近い措置を取った。これに続いて欧米諸国へもレアアースの禁輸措置を取った。他国の弱みにつけこんで、ここまでやるかと思わせられるほど相手を困らせようとする経済制裁的対応である。とても余裕ある紳士の取るべき態度ではない。アメリカ政府は、中国のやり方は世界貿易機関(WTO)違反であると中国に再考を促しているが、中国は禁輸疑惑を否定している。今日になって、日米が共同歩調を取り、WTOへ提訴することを検討し出した。それにしても、‘成金’中国の傲慢不遜な行動には世界中が呆気に取られている。
今朝の朝日新聞に著名な経済学者が書いた「ニューヨーク・タイムズ」10月18日付記事が紹介されていた。一昨年ノーベル経済学賞を受賞した、ポール・クルーグマン・米プリンストン大教授の中国のレアアース禁輸について書いた論稿「ならず者の新興経済大国」である。
クルーグマン教授の論文の主旨は凡そ次のように要約されると思う。第1にレアアースについては、各国が中国以外の供給源を開拓する必要性がある。第2に世界で最も新しい経済超大国・中国がその地位に伴う責任を引き受ける準備が出来ていないことを証明しており、ルールに従って行動する意思を持たない、ならず者の経済超大国の姿であると断定していることである。
指摘はまったくその通りであるが、では世界はならず者国家中国に対してどのように有効な手段をとろうとするのか。相変わらず確たるアイディアはなく前へ進めない。