今日チリ落盤事故で地底に閉じ込められていた作業員が全員救助された。世界中から報道員が1,000人以上も押し寄せ、鉱山の事故現場では、チリ大統領を始め、政府関係者、家族、鉱山関係者を含め大勢の人が祝福ムードで生存者を迎えた。最近これほどショッキングにして祝福ムードの出来事は珍しいのではないかと思う。
今日の報道でも、危機管理能力とリーダーシップを遺憾なく発揮したルイス・ウルスアさんの手腕をベタ誉めである。大統領自身直接ウルスアさんを高く評価し、国家の誇りに思うと述べた。ウルスアさんのバックグラウンドには経営学者でもあり、社会学者でもあったピーター・ドラッカーの強い影響があるという。ドラッカー著「マネジメント」にある「リーダーは危機に際しては先頭に立つ」が正確に実践されたのである。ウルスアさんの行動で感心するのは、事故直後に僅か数日分しかない備蓄食糧をどうやって救助までもたせるかと考え、まず最初に救助は20日後には開始されると判断して、33人が20日間耐えられる食料配分を計算して、全員に理解させ協力させたそうだ。この冷静な判断はどこで鍛えられたのだろうか。敬服するばかりである。
さて、チリの作業員救出に目を奪われている間に、ドラ猫のようにこっそり悪事を白状した国がある。超大国アメリカ合衆国である。オバマ大統領は自身の核廃絶の動きに逆行する核実験を行ったのである。アメリカ政府は未臨界核実験と発表して、エクスキュースしているつもりかも知れないが、核爆発があったかなかったかの違いだけで核実験は確実に行われていたのだ。それをチリの落盤事故作業員救出作業で世界中が固唾を飲んで見守っている最中にこっそりやっていたのだから悪質である。不届き千万である。こういう行為を鬼の居ぬ間のなんとかと言い、古来日本ではあまり良い意味では使われない。
オバマ大統領は、昨年4月チェコのプラハで核廃絶への覚悟を世界へ向けて颯爽とアピールし、世界中の人々の喝采を浴びた。核廃絶への動きは少しずつ動き始め、昨年のノーベル平和賞はオバマ氏へ授与された。このノーベル平和賞は、オバマ大統領の平和活動と核廃絶への努力に対する期待賞であることは本人は百も承知している筈だ。今年の広島原爆平和祈念祭に初めてルース駐日大使が出席し、確実にアメリカの核廃絶への歩みを見せてくれていた。広島市民、長崎市民はもとより全日本国民も大いに期待していた。
それがこともあろうにオバマ大統領たるもの、核反対者の期待を傲然と裏切ったのである。これからアメリカとオバマ大統領は核廃絶に向かってどう行動しようというのか。真意を説明してもらいたい。オバマはメッキが剥げてもう信用出来ない。ノーベル平和賞は即刻返上すべきである。まったく失望した。