1118.2010年6月5日(土) 寺前秀一・加賀市長出版記念会

 菅直人・新首相就任についてアメリカのオバマ大統領が公式に歓迎の意を表した。メドベージェフ・ロシア大統領と温家宝・中国首相からも祝電が寄せられた。

 しかし、いずれにしろ外交上の儀礼的なお祝いであり、格別菅首相の理念や行動力を評価するとか、国際社会をリードしていくために相互の連携を深めようというほど強い期待感が表れたものではないと思う。オバマ大統領のコメントは、普天間基地移設問題に関する日米政府間の合意を確認しようと本音が透けて見えるメッセージである。最近の日米関係がギクシャクしている中で、取り立てて新味のある祝福のメッセージのようには受け取れないのではないか。詰まるところアメリカの指図に従って、粛々と合意事項を遵守することを求められているに過ぎないと思う。

 水面下で行っている役員人事と組閣工作については、菅首相は小沢グループを締め出そうと考えているようだ。脱小沢による清新なイメージを打ち出して、政権浮揚を狙っているようだ。鳩山前首相が小沢氏と2人3脚を組んでいたように見せかけてはいたが、鳩山氏にとって小沢氏の存在は目の上のたんこぶとなっていた。これをより気持ちの通ずる菅氏に、小沢氏と刺し違いすることによって菅新政権の環境整備をして、菅氏に借りを作らせたのではあるまいか。

 一方、小沢氏側から間接的に、9月に党代表の任期が終る次回代表選挙では、菅氏以外の候補者擁立を考えているとの声が流れ、対菅戦争が燻り始めている。早くも菅派と小沢派のつばぜり合いが始まった。この国民無視の陰険な争いによって、再び国民に愛想をつかされるようなことにならなければ良いがと思う。

 さて、午後東洋経済新報社ビルでJN協会理事である寺前秀一さんの出版記念会が開かれた。寺前さんは昨年10月高崎経済大学教授を辞めて、加賀市長選挙に打って出て当選された。このほど現職市長として著書「観光・人流政策風土記」を出版されたが、国交省に勤めておられたころから観光分野に関わり、大学地域政策学部観光学科でゼミを持たれていた研究成果をまとめられたものである。いま取り掛かっている「そこが知りたい 観光・都市・環境」執筆上参考になりそうである。

 過去2回主宰した私の出版記念会とは大分趣が異なり、やや異色にしてアカデミックな試みで、司会者抜きのまま寺前氏は寺前観光論について1時間近くに亘って熱弁をふるわれた。参加者は立ったまま寺前教授?の話を神妙に拝聴するという段取りだった。加賀市は寺前氏誕生の地ではあるが、加賀を離れてからかなり時間が経っているので、土地の雰囲気を理解するのは大変だったようだ。特に、合併市町村の場合は、複数の旧自治体に対して平等な行政を行う難しさについて述べられた。 

 断片的に話された内容の中で、九谷焼について、本家が伊万里焼であるとの説があるというのは初耳だった。しかし、この本家・分家論については疑問が呈されていて、真偽のほどは現時点でははっきり分らないらしい。

2010年6月5日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

1117.2010年6月4日(金) 菅直人氏が第94代総理大臣に

 菅直人副総理が今日の民主党代表選挙で代表に選出され、その後衆参本会議の首相指名選挙で、第94代、61人目の総理大臣に指名された。一昨日鳩山前首相辞任以来の動きから落ち着くべき人に落ち着いたというのが世間の見方だろう。

 今日の代表選で菅氏は昨日唐突に出馬宣言した樽床伸二氏に圧勝した。問題はこれからである。アメリカ政府は時差の関係もあり、正式なコメントを発表していないが、ABCは過去21年間で15人目の首相であるが、薬害エイズ問題を解決して国民の人気を得たとか、久しぶりに世襲政治家でない首相が選出されたとアナウンスした。明日アメリカ政府がどんなコメントを述べるか注目してみたい。

 今朝からテレビでは民主党代表選やら、その後の専門家の分析などがあったが、首を傾げるマス・メディアの取材コーナーがあった。かねてから目立ちたがり屋の噂のあった菅直人夫人伸子さんへのインタビューである。代表選で選出された直後に自分をファースト・レディと呼ばないで欲しいだの、「首相夫人」と呼んでもらいたいだの、まだ国会で総理大臣に指名されていない内から、すでに呼んでもらいたい「首相夫人」の気持ちになってしまっている。「首相夫人」としてやる気満々である。自分が総理大臣になったわけではなく、「首相夫人」になったのだということを自覚して亭主を補佐する行動をするべきではないだろうか。言っても分らない人だろうが、鳩山幸夫人にしろ、菅伸子夫人にしろ、良きパートナーとして亭主を支える役割をきちんと果たすならともかく、亭主を差し置いてあんまり派手なパフォーマンスで注目を集めるようなことは傍から見て見苦しいのでやめてもらいたいものである。

 当面内閣閣僚の任命と組閣を8日以後に延ばすという。従って認証式もそれまで行わない。それなら、代表選ももう少し時間を置けば良かったのではないかと思う。戦略か作戦があるのか、中々電光石火とはいかないものだ。菅首相が小沢一郎氏にはしばらく静かにして欲しいと公言したことが、政界に波紋を呼んでいる。幹事長として絶大な権力を誇っていた小沢氏をやりにくいからと言って、隠居同然に処することが果たして出来るだろうか。やり遂げれば菅氏の評価はさらに上がるだろう。

 菅発言は小沢陣営にどんな衝撃を与えただろうか。現在のところ菅氏の周辺には、小沢氏と距離を置く人が動いているが、彼らが組閣と民主党役員人事の中心になるようだと、自民党の年中行事だった民主党内の抗争に発展する可能性がある。

 まだ、沈黙を続けている小沢氏が、今後自分たちの処遇を巡ってどういう行動に出てくるか。波乱含みの新政権の船出ではある。

 ところで、今日は21年前天安門事件が発生した日である。あの時北京大学反体制派学生で事件の中心人物として中国政府から追われ、アメリカに亡命して現在台湾に在住しているウアルガイシ氏が、麻布の中国大使館に正門から飛び込もうとして警戒中の警官隊に取り押さえられ、逮捕された。ウアルガイシ氏が秘かに訪日中であるとは知らなかった。しかし、中国がマークしている人物のこんな行動で外交問題に発展しなければ良いがと思う。

2010年6月4日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

1116.2010年6月3日(木) 始まった次期民主党代表選挙の暗躍

 日本中を震撼させた鳩山首相と小沢幹事長辞任のニュースが、朝刊1面を独占し、テレビニュースやワイドショー番組でも大きく取り扱っている。今日の駒沢大学講座でも2時限とも、その原因とか、新代表予想が話された。

 明日民主党代表選挙が行われるが、昨日早々と菅副首相が立候補を表明したが、今日新たに樽床伸二・衆議院環境委員長が名乗りを挙げた。51歳で当選5回の実績があるのだが、寡聞にしてその名を知らなかった。

 明日の新代表選出は、新しい党として生まれ変わってもらうために、カネの問題を抱えている小沢幹事長と抱き合い心中を図った形となった鳩山首相の意向がどれだけ反映され、今後民主党が清新な政党として生きていけるかの試金石となる。岡田外相、前原国交相、枝野行政刷新相、仙石国家戦略担当大臣ら大物閣僚は相次いで菅支持を宣言した。こうなると流れが一気に菅支持へ傾いていったが、これがまた新しい政党のイメージを誕生させることにならないのではないかと小沢シンパは、樽床氏を応援することになった。ところが、夜になって小沢派は、自主投票することになった。これで菅氏に決まりである。

 自主投票になったことは、小沢氏が積極的に動かないということだ。しかし、どうもやり方が陰険になってきたようだ。菅氏支持グループは、小沢色がつかないことを画策している。また、いつもながらの永田町の暗躍が始まった。これで果たして新生民主党として再出発出来るのか、些か疑問符がつく。

 明日の結果を待って考えるより仕方があるまい。

2010年6月3日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

1115.2010年6月2日(水) 毀誉褒貶の激しい鳩山首相、ついに退陣

 ついにと言うべきか、やはりと言うべきか、鳩山首相が退陣することに決まった。今朝からテレビは大々的に報道し、各地で号外も出たようだ。

 朝日の夕刊はベタ白「鳩山首相退陣」で、日経も「鳩山首相退陣表明」でほぼ同じ扱いであり、トップの見出しは両紙とも「小沢幹事長も辞任」でまったく同じである。各紙とも論調はほとんど同じで、その原因は普天間基地移設問題の無様な結論と政治とカネの問題である。

 昨日から様子が急に変わったので、何か動きがあるとは感じていたが、余りにも唐突だった。だが、本ブログでも度々書いたが、鳩山首相は1国を率いていくリーダーの資質を欠いていたことは間違いない。今日辞任を表明した挨拶の中で、「政権与党の仕事に国民が徐々に聞く耳を持たなくなってきた」という恨み節を述べていたが、何をバカなことを言っているのかと思う。この人は自分がやってきたことに反省の気持ちがまったくないようだ。国民が聞く耳を持たなくなったのは、なぜか。首相自身が軽率な発言で実行力が伴わず、挙句の果てに裏切り行為をやったからではないか。その点を国民が糾弾しているのではないか。思い違いも甚だしい。引かれ者の小唄のようなことばかり言うのは、自分の業績に自信がないからではないか。首相の座ばかりか、この人は政治家としてもやっていける資質がないのではないかと思う。

 こういう無能な人を最高位まで上り詰めさせたのは、政治制度と選挙制度にも問題がある。一時は、世襲制についてかなり疑義が出て、世襲政治家の芽を摘むような制度が出てくるかと思いきや、いつのまにか萎んでしまった。

 結局首相にしろ、幹事長にしろ、政党内の有力者の間に多くの世襲政治家がいる以上、締め付けを覚悟のうえで大胆不敵な世襲決別案を考え、国民が納得のいく世襲議員を誕生させない法案を編み出さなければ、馬鹿な世襲政治家は失くせないのではないか。

 明後日民主党新代表が決まり、鳩山内閣が総辞職して、衆参本会議で首相指名選挙を行い、来週初めには新首相が所信表明演説を行う。問題はその後の参議院選挙である。今回鳩山、小沢が辞任したのは、この2人が看板になっていては選挙に勝てないとの計算が働いたからである。昨日から、新制度・子ども手当ての支給が始まった。今月下旬にはカナダでサミットG8が開かれる。この難局をへなへな民主党で乗り切っていけるのか。

 次の代表、つまり新首相候補として菅副総理が名乗りをあげた。

2010年6月2日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

1114.2010年6月1日(火) ザンジバルのからゆきさん

 今日の多摩美大の講座「都市を美術とともに歩く」は西江雅之講師の「ザンジバル島のStone Townを歩く」という異色のテーマだった。1960年代から世界各地、80カ国以上を歩いて研究された。その中で、ありきたりの国ではなく敢えてunusualな国をターゲットにしてみたと言われた。西江講師は長年早稲田や東京芸大で教えてこられたが、タイトルとしては文化人類学者、言語学者と仰っている。

 小さな島ザンジバルの特異性をいろいろな角度から説明され、多くのスライドを見せてもらったが、その視点と多様性が面白いと感じた。知らなかったことが3点あった。

 ひとつは、アフリカ大陸東海岸の南北帯、スワヒリ民族帯がイスラム文化であるということだった。しかもあまりイスラムの象徴であるミナレスが市街地に見られない。それでも、イスラム文化だと説明された。1968年に訪れたケニアのモンバサ海岸もこのゾーンに入るが、その当時モンバサではほとんどイスラム情緒は感じられなかった。この点を質問したらモンバサにもイスラム教会がたくさんあるということだった。

 他のふたつの話は、ヴァスコ・ダ・ガマが航海に出る80年前に、中国から2万人単位でいかだのような船で中国人がアフリカ東海岸に辿り着いたという新説と、150年前にこの地に大勢の「からゆきさん」がいて、1920年ごろにも10人ほどの「からゆきさん」がいたらしい。彼女たちは、東南アジアに売られて行き、その後どういう事情か、地の果てまで売られていったようである。

 かつてボルネオのサンダカンで、山崎朋子著「サンガカン八番娼館」の主人公だった「からゆきさん」が母国日本に背を向けて建てられたお墓をお参りしたことがあるが、ふっとそんな哀愁を感じさせる話だった。

 それにしてもザンジバルのような小さな島に850の言語があり、700以上の異言語による聖書があるとは驚いた。興味深い講座で西江講師の話も予定の1時間半を大幅に超えてしまった。

 さて、この数日鳩山首相の総理大臣としての力量について外野の声が喧しい。今日は辞職するか、続投かと話題は一気にヒートアップした。来月に控えた参議院選挙を睨んで、今の首相の不支持率では戦えないという参議院議員の切ない声が辞任論を後押ししている。ドン小沢幹事長と輿石参議院議員会長、鳩山首相による3者会談で話し合ったが、今ひとつ踏ん切りが悪く結論は出ない。このままでは反って目前の選挙に悪影響が出るのではないだろうか。

2010年6月1日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

1113.2010年5月31日(月) 民主党はどう動く? 鳩山首相辞職か?

 福島社民党党首が閣僚を罷免され、昨日は社民党が全国幹事長会議で連立内閣から離脱することを決定した。朝日新聞が実施した直近の世論調査では、内閣支持率が下り坂を転げ落ちている。遂に支持率は半月間で4%も下落する17%となった。同時に不支持率は前回の64%から70%に上がった。原因は最近の政策実行のぶれと普天間基地移設のどたばたに尽きる。

 鳩山首相は昨日済州島で日中韓首脳会議に出席し、今日は首相官邸で中国の恩家宝首相と会談した。その後首相は職を辞める気はないと辞任論をきっぱり否定した。しかし、このまま首相の座に留まっていて大丈夫だろうか。党内でも若手を中心に鳩山辞職論が浮上しているようだし、首相自身が小沢幹事長、輿石参議院議員会長を交えて善後策を講じているらしい。徐々に強くなる風圧にひょっとすると一両日中に続投か辞任か、動きが出てくるかも知れない。 

 政治がダメになったと思ったら気象もおかしくなってきた。このところ気温のアップダウンが激しく、ここ2日間は肌寒かった。今日も昼間は少し暖かかったが、夜に入って幾分冷えてきた。

 これは日本だけでなく、ビルマの気候も同じようだ。記録的な猛暑に見舞われて最高気温を記録して、暑さによる死者が増えているほかにも、水不足が深刻のようだ。今月12日には、ラングーンで42.5℃になり、42年ぶりの記録だそうだ。それが連日というのだから、ほとんど冷房設備のない住民には堪らない。以前マンダレーで48℃という気温の中を歩いたことがあるが、とても長く外にはいられるような環境ではなかった。どうも地球が少しずつおかしくなっている。

 さて、先日来依頼されていた短い評伝を書き上げ、ある程度任せてもらって印刷・製本を一気にやってしまった。家族とご親戚に配るということから部数も十数部だけだったので、敢えて印刷業者には頼まなかった。

 幸いパソコンの個人講師から、紙面割付の仕方、表紙の全面印刷のやり方等を教えてもらっていたので、印刷までは苦にならない。案外気を遣うのは印刷用紙で、表紙用・文章用の紙質から用紙の厚さ等を決めるのが案外面倒で、特に両面印刷用の用紙でも表と裏では紙質が異なっていたり、それを同質のものを探したり、思わぬ気苦労もあった。最後に製本テープで仕上げたが、中々見映えのする冊子ができ上がったと思う。これを依頼主に早速宅急便で送った。依頼主が手にしてみて何と仰るか分らないが、一仕事終えてほっとした。

 今日嬉しいニュースがひとつあった。東京六大学最終週の早慶戦で母校慶応が宿敵・早稲田を破り、11シーズンぶり32回目の優勝を飾った。よっしゃ!

2010年5月31日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

1112.2010年5月30日(日) 存在感がなくてもいざとなればやってのける国

 国連本部で4週間に亘って核不拡散条約(NPT)再検討会議が開かれているが、非核国と保有国の間で中々意見調整がつかず、5年前の前回同様何らの結論もまとまらないのではないかと懸念されていた。それが、土壇場で最終文書の合意にこぎつけた。完璧ではないにせよ、一応開催した成果はあったわけである。

 そこには、議長を務めたカバクチュラン・フィリッピン国連大使が自身の体調不良を押して最終文書採択のために奔走した涙ぐましい努力があったようだ。いま国際社会における核問題の問題児は、イランと北朝鮮である。しかし、本当に恐れられている核保有国はイスラエルで、今回もイスラエルとイランをどう説得して核軍縮と核不拡散の方向へ両国を誘導するかということが課題だった。議長は、イラン説得のためにブラジルとトルコ首脳に協力を頼み、同時にアメリカが対イラン追加制裁決議草案でロシアと、中国と合意したことが大きい。

 イスラエル説得に当たっては、エジプトがアメリカを説得して譲歩を引き出し、一方の立役者となった。

 日本国内では普天間基地移設問題の陰に隠れて、それほど注目されていなかったが、被爆地の広島や長崎では前回開催の際は明るい展望が見えなかっただけに、今回の合意を素直に評価している。しかし、それにしても日本の存在感は薄い。本来なら唯一の被爆国を切り札に、核の怖さを一番アピール出来る立場にいるはずである。

 翻ってここ数日間の民主党と鳩山首相の言動を見ていると、膠着状態にあって外交交渉のテクニックと決意を示したフィリッピンとエジプトの足元にも及ばない。経済力が弱く、普段はその存在感が薄くても、いざとなれば国際問題では他国のために一肌脱ぐ心意気と周囲の信頼感が素晴らしい。

 日本外交の秘密主義と官僚機構は、このグローバル化の時代には時代遅れではないか。それに、現状で諸外国と向き合ってタフな外交交渉をやれる人材が果たしてどれだけいるだろうか。これは教育問題であるかも知れないが、小手先ではなく、全体像を描いてことを処する智恵と行動力を培った人間を育成するには、現在のわが国の機構ではだめなのかも?

2010年5月30日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

1111.2010年5月29日(土) 外交密約裁判の西山太吉氏から話を聞く。

 いやぁ、今日は素晴らしい話を沢山伺った。話されたのは、外務省外交文書密約事件で38年間に亘り日本政府を相手に戦ってきた、元毎日新聞記者・西山太吉氏である。裁判自体はすでに今年4月東京地裁から勝訴の判決を得て、改めて多くの人が知るところとなったが、国としてのメンツだろうか、負け戦を覚悟で国が控訴したのでまだ完全決着とはなっていない。しかし、本件に関する限りこれまでの経緯と証拠、関係者の証言により判決を覆すのはほとんど不可能に近い。

 朝日新聞社会部OB十日会が主催した「『ジャーナリズムのいま』を問う市民講座」第1回の講演者として話題の西山さんが、「沖縄密約の今日的な意味」と題して話された。場所は有楽町のラクチョウビル内の成城学園のクラブである。会としてもうひとり西山裁判の原告団のひとり、柴田鉄治・元朝日新聞記者が前段の話をされた。柴田氏がまだ海外特派員として活躍していたころ、海外便りをよく読んだものである。

 今年79歳になられる西山さんは、血色も良くテーブルに拳を叩きながら熱弁を揮われた。不正を許せない熱血漢の面目躍如である。お2人とも異口同音に協調されたのは、国民が罪を犯せば法によって国に罰せられるが、国が罪を犯しても罰せられないのはおかしいと仰ったことである。国は国民にウソをついてはならないという戒めには、それをやると安保条約の変質とか、外交密約という問題につながると警告された。60年安保闘争に参加した立場から考えると、もう少し現在の安保について改めて勉強してみることが必要だと反省させられた。

 印象的で眼から鱗のような話を随分された。西山さんが特に強調していたのは、「安保条約の中身は60年安保、70年安保、沖縄返還、2006年日米合意へと時間の経過とともにまるで変わってしまった」ということである。そして、55年体制以降、外務・防衛官僚によって日本の外交・防衛は進められ、大きな厚い壁が出来て、外部の力では風穴を開けることすら出来なくなっていると危機感を述べられた。今度の勝訴もやっとドリルで穴を開けた程度だという。話題の抑止力なんかとても当てに出来ない。

 2006年日米合意の下に作成されたロードマップは、当時のラムズフェルド国防長官と守屋武昌・防衛事務次官の間で調整のうえ作られて磐石に固められており、そう簡単に作り直したり、破棄することは出来ない。今度の普天間基地移設の原案回帰もこのロードマップに沿っている。

 新たに認識させられたのは、鳩山首相の祖父・一郎元首相とその後の石橋湛山・元首相は、ともに党人派であり、真剣にアメリカに対して日本のあるべき立場を主張し、政治理念を行動に移した。アメリカが危惧する中で、鳩山一郎は日ソ国交回復を果たし、石橋湛山は日中国交回復を目指した。アメリカに言うべきことも主張した。サンフランシスコ平和条約締結後は、沖縄の施政権を返還して6年後に米陸軍の撤退を、さらに6年後に空・海軍も日本からの撤退を要求していた。

 残念ながら石橋は健康上の理由で僅か3ヶ月の短命内閣に終わり、実績は残せなかったが、長く首相の座に居たら、その後の日本は大分変わっただろう。

 しかし、その後を継いだ岸信介以降の首相は官僚であり、自分たちの領域と権益を頑として守り、安保条約を法制化して固定化した。党人派なら自主独立、中立、反戦、反核、反基地を貫き自主外交路線を歩むのに対して異なる保守の道を歩んだであろう。官僚が法制化して固定化した安保には、まやかしが多く、事前協議には核配置、旅団配備、直接行動などが盛られているが、実際その通り協議出来る保証はない。沖縄返還に当たって「核抜き・本土並み」を標榜したが、実際にはアメリカの要望をすべて飲んでいる。非核3原則にしても、「3」原則ではなく、「2.5」原則で、陸上はともかく日本の軍港に核は持ち込まれている。

 他に大きな問題として沖縄に駐留する米軍にかかる経費はすべて日本が負担している。今や在日米軍の経費の75%は日本が負担している。また、世界に点在する在外米軍の駐留費用の50%は日本が負担している。世界で呆れられているこういう事実を外務・防衛官僚は一切国民に知らせようとしない。

 今回の辺野古移設案は、2006年の日米合意のロードマップに基づいていて、アメリカはロードマップに戻って来るのは当然との受け止め方であった。民主党政権発足時に「CHANGE」の精神で、真剣に検討し、精査してアメリカと激論を交わして変更させる気持ちがなくては、この堂々巡りも致し方ないのか。

 政治を監視するのは、マス・メディアだと言っておられた。若いジャーナリストの間には、優秀な人も大勢いる。むしろ彼らを殺してしまうのは、上に立つ人が問題だと言っておられたが、何もこれはメディアに限ったことではない。

 ほかにも参考になる有益な話を沢山お話いただいた。数は少ないが、世間にはこういう気骨のある立派な人もいる。

 とにかく今日1日は有意義な話を聞くことができて、充実した気持ちでいっぱいである。西山さんに感謝!感謝! 併せて真面目でタイムリーな企画を計画された主催者の労に対しても感謝の気持ちである。

2010年5月29日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

1110.2010年5月28日(金) ビルマのドキュメント映画と福島大臣罷免

 ビルマ軍事政権下で自由を抑圧されているビルマ人の生活と、軍政に対して民主化を求め行動を起こした僧侶と市民のデモ風景を赤裸々に描いたドキュメンタリー・フィルムが公開されている。

 先日報道番組で鳥越俊太郎キャスターがこの映画について解説され、ぜひ多くの人に観て欲しいと推薦しておられた。ビルマとビルマ人については、人一倍懐かしさとともに拘りがあり、ぜひこの映画「ビルマVJ」を観てみたいと思っていた。副題は「消された革命」と付けられていた。VJとはビデオ・ジャーナリストを意味している。

 今日渋谷の「シアター・イメージフォーラム」で観賞したが、小さな劇場で座席は150席ほどで観客は僅か十数名程度だった。確かに多くのジャーナリストが激賞するように、スクリーンからは危機感と臨場感が充分伝わってくる。今年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー部門へノミネートされただけあって、ストーリー性はないが、ビルマ軍事政権による非民主化政策と国民の民主化デモの説得力と訴求力は、手法や放送機材が未成熟な中で相当な効果を上げている。特に2007年9月、予想を遥かに上回る一般市民の声援を受け、僧侶と一般市民10万人からなるデモ行進が実現した。仮に市民が武器を持っていたら内戦状態にまで突き進んだと思われるほどの盛り上がりを見せた。

 僧侶が政治には関わらず普段から尊敬されているビルマで、あれだけ大勢の僧侶が一丸となって行進し、市民が路上やビルの窓から拍手したり、隊列に加わるような勇気ある行動と光景は、軍政側を一時ひやりとさせたのではないか。

 結局軍治安部隊による武器を使った強制排除により、無抵抗のデモ隊は壊滅させられてしまったが、その精神と残り火は確実に次なる人々に伝えられる筈である。実際その映像は「ビルマ民主の声」から、オスロの本部へ送られ、そこで編集されたニュースは世界中へ伝えられた。映像は時々刻々と小型ハンディ・カメラで撮影され送られてくる画像とともにナレーションが厳しい状況を伝えてくれる。ビルマ軍政が何と言おうと世界はビルマ政府の強圧政治と民主化を求める市民の姿を知ってしまったのである。

 市街風景とビルマ人が歩いている懐かしいシーンを見ていると、40年前初めてビルマを訪れた当時の姿が走馬灯のように甦ってくる。特にシュエタゴン・パゴダ境内へ通じる参道の階段から上がったパゴダの広間に集結した人々の姿は、ノスタルジアが感じられて、あの温和なビルマ人がこんな暴動の中へ巻き込まれている現状には、同情を禁じ得ない。

 ほとんど隠し撮りによる映像のため、必ずしも鮮明な画像ではないが、日本人ジャーナリスト長井健司さんが、ビルマ軍の発砲により路上に倒れて死亡する映像も写っている。

 プロのカメラマンではなく、アマチュアカメラマンの域を出ない普通の市民が、危険を冒しながら撮影した映像を集めた珍しいドキュメント手法であるが、反ってそのリアリティは想像以上に伝えられたのではないかと思っている。

 現実的には、相も変わらずビルマ政府は頑固に民主化を押さえつけようとしている。世界中が監視している中で、果たしていつまでこの非民主化路線を継続していけるのだろうか。軍政幹部にも早く目覚めて欲しいものである。

 随分衝撃的な映画だったが、とても良かった。鳥越氏が勧めるようにビルマの現実をより多くの人々に知ってもらうためにもぜひ多くの人々に観てもらいたい映画である。早速知人、友人にメールで紹介したところ、直ちに3人から反応があり観てみたいという返信をもらった。

 夜のニュースによれば、政府は普天間基地移設に関する日米共同声明で、辺野古を明記したと発表した。その他にも米軍訓練地の徳之島への一部移転も併せて発表された。地元は辺野古も、徳之島も反対している。これを敢えて正面突破することになった。更に消費者・少子化担当相の福島瑞穂・社民党党首は、今日も辺野古明記なら署名しないと主張し、最後まで政府案に歩み寄れず、鳩山首相は福島大臣を罷免することに決めた。社民党としては、本音を腹に収めたままで納得出来ない案を受け入れてまでして政府案に同意することは出来なかった。それはかつての村山連立政権で党是を抑えて他党に配慮した結果、社民党らしさを欠いてその後の凋落の道を辿った思い出したくない過去があるからである。

 それにしても当分喧しいことだろう。

2010年5月28日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

1109.2010年5月27日(木) 社民党は連立を離脱するのか。

 昨日から福島瑞穂・社民党党首は政府の閣僚でありながら、普天間基地移設問題で政府の対応に対して不満を述べている。日米合意案の中に移設先を「辺野古」と記入し、閣内では記入せずにぼかすことについてダブル・スタンダードだと強く異議を唱えている。福島党首は社民党役員会でも辺野古と明記されるなら署名しないと述べ、あくまで反対を押し通すと主張した。こうなると、政府案がまとまらない。連立政権離脱や大臣辞任、さらには大臣罷免の話も聞かれる。

 イデオロギーがまったく異なる社民党が連立政権に加わったことが、そもそも大きな計算違いだったのではないだろうか。

 偶々今日鳩山首相の呼びかけで全国知事会が開かれた。ここでも首相自身と首相の手法に対して、厳しい声が浴びせられた。首相を支持する声は極めて弱い。松沢神奈川県知事の如きは、首相のやり方を厳しく批判して、挙句の果てに首相を名指して「無能」という言葉まで使った。連立政権も、民主党も、全国知事会もまったく智恵を出せない。総選挙時に謳った「普天間基地移設⇒海外移設、最低でも県外移設」のスローガンが最初から怪しく、やはり頓挫したのだ。はっきり言って最初から実現の可能性は少なかった。それを煽るだけ煽った結果が、自分たちの首を絞めることになってしまった。最初からボタンを掛け違えていたわけである。自民党議員は、元の自民党案に戻っただけではないかとこき下ろしている。

 明日には、政府内で福島党首をどう処遇するかの結論が出るようだ。それにしても、相変わらず鳩山首相に国権の最高指導者としてのリーダーシップが見られない。まったく嫌になる。

 さて、もうひとつ国外の大事件である韓国哨戒鑑沈没事件の影響は、朝鮮半島を一触即発の危険な状態に追い込んでいる。韓国内も緊張感が高まっているようで、この時期になぜ北朝鮮が敢えてこのような暴挙に出たのか、いろいろ憶測を呼んでいる。専門家は、最近のデノミ失敗により国家経済が破綻状況になった北朝鮮の上層部が、国民の批判の目を逸らすために危機感を煽ったという説、また金正日の後継者問題が原因とも指摘する。1983年のラングーン事件、87年の大韓航空機墜落事件の際も国内に問題を抱えていた。だが、ふたつの事件の直後にラングーンと同じ社会主義国家だった東ドイツを訪れたが、そこには特別不穏な空気はなかった。今度も何もなければ良いがと願う。

2010年5月27日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com