1110.2010年5月28日(金) ビルマのドキュメント映画と福島大臣罷免

 ビルマ軍事政権下で自由を抑圧されているビルマ人の生活と、軍政に対して民主化を求め行動を起こした僧侶と市民のデモ風景を赤裸々に描いたドキュメンタリー・フィルムが公開されている。

 先日報道番組で鳥越俊太郎キャスターがこの映画について解説され、ぜひ多くの人に観て欲しいと推薦しておられた。ビルマとビルマ人については、人一倍懐かしさとともに拘りがあり、ぜひこの映画「ビルマVJ」を観てみたいと思っていた。副題は「消された革命」と付けられていた。VJとはビデオ・ジャーナリストを意味している。

 今日渋谷の「シアター・イメージフォーラム」で観賞したが、小さな劇場で座席は150席ほどで観客は僅か十数名程度だった。確かに多くのジャーナリストが激賞するように、スクリーンからは危機感と臨場感が充分伝わってくる。今年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー部門へノミネートされただけあって、ストーリー性はないが、ビルマ軍事政権による非民主化政策と国民の民主化デモの説得力と訴求力は、手法や放送機材が未成熟な中で相当な効果を上げている。特に2007年9月、予想を遥かに上回る一般市民の声援を受け、僧侶と一般市民10万人からなるデモ行進が実現した。仮に市民が武器を持っていたら内戦状態にまで突き進んだと思われるほどの盛り上がりを見せた。

 僧侶が政治には関わらず普段から尊敬されているビルマで、あれだけ大勢の僧侶が一丸となって行進し、市民が路上やビルの窓から拍手したり、隊列に加わるような勇気ある行動と光景は、軍政側を一時ひやりとさせたのではないか。

 結局軍治安部隊による武器を使った強制排除により、無抵抗のデモ隊は壊滅させられてしまったが、その精神と残り火は確実に次なる人々に伝えられる筈である。実際その映像は「ビルマ民主の声」から、オスロの本部へ送られ、そこで編集されたニュースは世界中へ伝えられた。映像は時々刻々と小型ハンディ・カメラで撮影され送られてくる画像とともにナレーションが厳しい状況を伝えてくれる。ビルマ軍政が何と言おうと世界はビルマ政府の強圧政治と民主化を求める市民の姿を知ってしまったのである。

 市街風景とビルマ人が歩いている懐かしいシーンを見ていると、40年前初めてビルマを訪れた当時の姿が走馬灯のように甦ってくる。特にシュエタゴン・パゴダ境内へ通じる参道の階段から上がったパゴダの広間に集結した人々の姿は、ノスタルジアが感じられて、あの温和なビルマ人がこんな暴動の中へ巻き込まれている現状には、同情を禁じ得ない。

 ほとんど隠し撮りによる映像のため、必ずしも鮮明な画像ではないが、日本人ジャーナリスト長井健司さんが、ビルマ軍の発砲により路上に倒れて死亡する映像も写っている。

 プロのカメラマンではなく、アマチュアカメラマンの域を出ない普通の市民が、危険を冒しながら撮影した映像を集めた珍しいドキュメント手法であるが、反ってそのリアリティは想像以上に伝えられたのではないかと思っている。

 現実的には、相も変わらずビルマ政府は頑固に民主化を押さえつけようとしている。世界中が監視している中で、果たしていつまでこの非民主化路線を継続していけるのだろうか。軍政幹部にも早く目覚めて欲しいものである。

 随分衝撃的な映画だったが、とても良かった。鳥越氏が勧めるようにビルマの現実をより多くの人々に知ってもらうためにもぜひ多くの人々に観てもらいたい映画である。早速知人、友人にメールで紹介したところ、直ちに3人から反応があり観てみたいという返信をもらった。

 夜のニュースによれば、政府は普天間基地移設に関する日米共同声明で、辺野古を明記したと発表した。その他にも米軍訓練地の徳之島への一部移転も併せて発表された。地元は辺野古も、徳之島も反対している。これを敢えて正面突破することになった。更に消費者・少子化担当相の福島瑞穂・社民党党首は、今日も辺野古明記なら署名しないと主張し、最後まで政府案に歩み寄れず、鳩山首相は福島大臣を罷免することに決めた。社民党としては、本音を腹に収めたままで納得出来ない案を受け入れてまでして政府案に同意することは出来なかった。それはかつての村山連立政権で党是を抑えて他党に配慮した結果、社民党らしさを欠いてその後の凋落の道を辿った思い出したくない過去があるからである。

 それにしても当分喧しいことだろう。

2010年5月28日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com