1112.2010年5月30日(日) 存在感がなくてもいざとなればやってのける国

 国連本部で4週間に亘って核不拡散条約(NPT)再検討会議が開かれているが、非核国と保有国の間で中々意見調整がつかず、5年前の前回同様何らの結論もまとまらないのではないかと懸念されていた。それが、土壇場で最終文書の合意にこぎつけた。完璧ではないにせよ、一応開催した成果はあったわけである。

 そこには、議長を務めたカバクチュラン・フィリッピン国連大使が自身の体調不良を押して最終文書採択のために奔走した涙ぐましい努力があったようだ。いま国際社会における核問題の問題児は、イランと北朝鮮である。しかし、本当に恐れられている核保有国はイスラエルで、今回もイスラエルとイランをどう説得して核軍縮と核不拡散の方向へ両国を誘導するかということが課題だった。議長は、イラン説得のためにブラジルとトルコ首脳に協力を頼み、同時にアメリカが対イラン追加制裁決議草案でロシアと、中国と合意したことが大きい。

 イスラエル説得に当たっては、エジプトがアメリカを説得して譲歩を引き出し、一方の立役者となった。

 日本国内では普天間基地移設問題の陰に隠れて、それほど注目されていなかったが、被爆地の広島や長崎では前回開催の際は明るい展望が見えなかっただけに、今回の合意を素直に評価している。しかし、それにしても日本の存在感は薄い。本来なら唯一の被爆国を切り札に、核の怖さを一番アピール出来る立場にいるはずである。

 翻ってここ数日間の民主党と鳩山首相の言動を見ていると、膠着状態にあって外交交渉のテクニックと決意を示したフィリッピンとエジプトの足元にも及ばない。経済力が弱く、普段はその存在感が薄くても、いざとなれば国際問題では他国のために一肌脱ぐ心意気と周囲の信頼感が素晴らしい。

 日本外交の秘密主義と官僚機構は、このグローバル化の時代には時代遅れではないか。それに、現状で諸外国と向き合ってタフな外交交渉をやれる人材が果たしてどれだけいるだろうか。これは教育問題であるかも知れないが、小手先ではなく、全体像を描いてことを処する智恵と行動力を培った人間を育成するには、現在のわが国の機構ではだめなのかも?

2010年5月30日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com