同時多発テロ9周年とあって昨日「グラウンド・ゼロ」では、厳かに追悼の儀式が行われたようだ。この近くにイスラム教のモスクを建てようという計画が、テロの犠牲者遺族を始めとしてテロを憎む人々の神経を逆撫でしているようである。
しかし、だからといってイスラム教信者の聖典である、コーランを公衆の前で焼却しようとする非常識なキリスト教牧師の言動には、オバマ大統領以下政府要人や心あるアメリカ国民の多くが、眉を潜め口を揃えて非難した。結果的に当のジョーンズ牧師は計画を撤回したが、メディアの前で相変わらず強気に今回は計画を取り下げるが、今後については分らないと傲然と言い放つ牧師父子の傲岸不遜とも見える態度には、アメリカが事あるごとに繰り返す「草の根民主主義」の落とし穴も感じられなかった。
いかに多くの人々に心配をかけているかということを配慮せず、自分の思うところをやり抜くという寛容の気持ちがまったくなく、これでよくも信者に対してキリスト教の原理を説教出来るものだと思う。
実際クリントン国務長官も呆れ顔で、50人しか信者がいない一地方の教会の牧師がこれだけ大それた計画を立てたことに驚いている。
こういう馬鹿げたパフォーマンスが連鎖的に伝播し、ジョーンズ牧師は取り止めたが、ほかに同じように非常識なキリスト教牧師やアンチ・イスラム教徒が各地でコーランに火をつける行動に出た。
良くも悪くもアメリカ社会には、常識的、あるいは非常識な考えが許される一方で、民主主義に基づく良識によって、この諾否を判断する空気がある。時によって、非常識が許される場合があり、それが問題である。
ところで、もうひとつの大国、中国の最近の唯我独尊的行動も困ったものである。近年中国の行動が非常識なビヘイビアを伴う傾向が目立ってきた。この点では日本人の行動も、中国人の間では誤解されている面があるかも知れないが、最近中国の行動は些か突出して首を傾げたくなる。中国人に本来内在する覇権主義、中華思想、功利性が、近年の経済成長によって強まった経済力と強大になった軍事力に後押しされて発言力が強まり、越権行為に走るケースが増えて国際社会で顰蹙を買っている。
とりわけ直近では、中国も領有権を主張する尖閣諸島周辺のトラブルがクローズアップされている。この数日問題になっているのは、中国漁船が尖閣諸島で日本の海上保安庁の巡視船に当て逃げを食らわせて捕獲され、船長が逮捕された事件である。予想されたことではあるが、自らの非を認めることなく、反日的なグループが北京の日本大使館前でデモ行進して、中国政府が日本の対応を非難するといういつもながらの強権的行為である。中国政府は尖閣諸島が中国領土であることを強調し、漁船は日本の海上保安庁の巡視船にぶつけられて不当な逮捕をされたと中国国民向けに嘘の情報を流して日本政府に抗議した。即時船長の保釈と日本政府の謝罪を要求するというものである。非礼にも休日の深夜に着任間もない日本の丹羽宇一郎・大使を国務院へ呼びつけ、抗議を突きつけるという国際儀礼上信義とエチケットに欠けるパフォーマンスであり、その挙句に近々開催予定の東シナ海におけるガス田開発を巡る条約締結交渉を一方的に延期する対抗措置を日本政府に押し付けてきた。
最近では日本の領海内で自衛艦に異常接近を試みた中国海軍機のトラブルもあり、いつも中国の仕掛けがうやむやのまま見逃されている有様である。さらに中国農業省が派遣した魚業監視船も新たな摩擦を生んでいる。
未だに5~6年前サッカー試合中に日本チームに対して反日的行為を働いた暴徒が、日本公使の公用車を襲った事件や、毒入りギョーザ事件はいずれも明らかに中国側に責任がありながら、謝罪の態度をまったく見せず、原因は日本側にあると強弁する中国側の姿勢には、とてもついていけない。
知的所有権についても、その浅はかな知識と杜撰な管理で、諸外国にかなりの被害をもたらしている。日本の名産陶器「有田焼」に替わって「中国の有田焼」が本家になったり、中国人のタレントがダイアナ王妃になったり、世界中が中国に振り回されている。これを商標登録しないから、お前たちが甘いと自分たちが散々無断で各種の違法行為を行いながら、そんな中国人に傲然と言われる筋合いはないと思う。
言い出せばキリがないが、「死の商人」的アプローチでアフリカ諸国や、イラン、北朝鮮、ビルマなどをお土産外交で懐柔し、中国の同盟国に引き入れるその手口は、日本外交にとって反面教師であり、わが国の政治家や外交官が部分的には見習わなければならない手法であるのかも知れない。
隣国でお互いに友好親善を心がけなければならないのに、最近の中国の強引であくどいやり方には少々うんざりで頭が痛い。