1212.2010年9月7日(火) 匠の技に感動、話題作品に「?」

 テレビ朝日に「ちい散歩」という番組がある。俳優の地井武男が首都圏の街角を歩いて、市井の人々にインタビューする企画で気軽に観ることができる。今日は横須賀市久里浜海岸周辺の木工屋へ立ち寄った時、「木組み」という木材と他の木材を組み合わせる手法を紹介してくれた。日本の伝統的な木造建築の職人芸にいたく感心した。角材の端と他の角材の端をつなぎ合わせるのに、釘や接着剤を一切使わずに、くりぬいた凹凸をうまく組み合わせる。古来日本の湿気のある気候の下で、一方の木材が腐食しても他の木材にその腐食が伝播しないよう昔ながらに智恵と工夫を積み重ねた結果だという。

 すごい匠の技だと感服するのだが、やはり継承する人が少なくなっていると聞くと、ちょっと寂しい気がしてくる。

 さて、北米の映画祭で最大規模と称されるモントリオール世界映画祭で、主演女優・深津絵里さんが主演女優賞を受賞した。彼女が主演した「悪人」は前々から評判にはなっていた。芥川賞作家・吉田修一の原作「悪人」を読んだ主演男優・妻夫木聰が是非とも主人公役を演じたいと売り込んだほどの注目作品だったといわれている。作者自身全力を注いだ自信作と言って憚らず、脚本も李相日監督と共同執筆したほどの惚れこみようである。

 実は、「悪人」は4年前に朝日夕刊に連載されていたので、毎日読んでいた。しかし、その当時私の興味とかけ離れていたせいもあるのかも知れないが、読んでいてちっとも面白いとは思わなかった。連載終了後に朝日が単行本化して、鉦や太鼓で力作と宣伝していた。著者も自分の作品を書き続けてきて、これが総決算になると自画自賛していた。だが、どうして著者がかくも自信満々に、「悪人」をアピールするのだろうかとむしろ不思議な感じがしたくらいの作品である。映画会社も主演俳優も作品をベタ誉めだった。その作品の主演女優が立派な賞をいただいたのだから、天晴れと言うべきだろうが、どうも釈然としないのは私の眼力が世間レベルから遥かに落ちてしまったせいだろうか、或いは単にへそ曲がりのせいだろうか。

2010年9月7日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com