昨日投開票された沖縄県名護市議会議員選挙で、これまで少数派だった稲嶺進市長を支持する議員が過半数を上回る議席を獲得した。名護市内には渦中の辺野古海岸がある。従来から普天間米軍基地の辺野古への移転に強く反対していた、稲嶺市長への賛意が増えたわけである。これで普天間基地移設問題は一層決断と実施が難しくなる。それにしても1地方都市の市議会議員選挙の結果に、これだけ日本国中の目が注がれたのは、極めて珍しいケースだと思う。
一方、反市長派を応援していた仲井真弘多・沖縄県知事にとっては、ショックであり、ことは重大である。沖縄県経済全体を考えると、何とか基地問題を穏便に解決し、政府から沖縄に対する振興策として多額の交付金を引き出そうと考えている知事には、大きな痛手である。知事は表面的には普天間基地移設反対を唱えながらも、「絶対反対」ではなく、これまで「条件付容認」のスタンスで政治決着を図ろうと画策してきたのではないかと思う。
11月に予定される県知事選に向けて、仲井真知事はこれまで県内移設反対を明言してこなかった。だが、昨日の名護市民の声を受けて、高々と「移設反対」の立場を鮮明にしなければ再選にも赤信号が灯るのではないかと考え、戦略の再検討を始めるのではないだろうか。
明日の民主党代表選挙を前に浮き足立っている民主党閣僚の中で、仙石由人官房長官は「民意の表れのひとつとして、虚心に受け止めたい。移設計画や負担軽減の具体策について地元の意見を聞き、誠心誠意説明して理解を求める」と言っているが、鳩山前首相辞任前後の沖縄県民と政府間にしこりが残されているだけに、仙石氏のいう誠心誠意が果たして沖縄県民に素直に理解してもらえるだろうか。
過去に政府が沖縄に対して誠実な対応をしてきたようには思えないので、民主党代表選終了後に代表、つまり首相は、いつまでものらりくらりではなく、どういう具体策を沖縄県民に示すことが出来るかということが、普天間基地移設問題解決への一里塚であり、沖縄県民の信頼をかち得る手立てである。