今日エチオピアのマラソン世界記録保持者で、シドニーとアテネ・オリンピックの10,000m金メダリスト、エチオピアのゲブレシラシェ選手が北京オリンピックではマラソンに出場しないと宣言した。気管支喘息の持病がある同選手にとっては、北京市内の大気汚染は自分の健康を損ねる恐れがあるというのがその理由である。しかし、排気ガスの多い市内道路を走るわけではなく、競技場内の10,000mレースには出場するとも述べた。また、女子マラソン世界記録保持者で、同じように喘息の持病を抱えるイギリスのラドクリフ選手も何らかの対策を検討すると言い出した。二人ともマラソンでは有力な金メダル候補者である。これが口火となって、他の有力選手に引火しなければよいがと願う。
五輪開催まで残り5ヶ月に迫ったところで、このハプニングに北京政府は慌てて環境浄化を宣言し、クリーンな環境を提供出来ると大気汚染説打ち消しに必死である。国際オリンピック委員会(IOC)では、以前から中国オリンピック委員会に対して、大気汚染を改善するよう注意を喚起してきたが、ついにゲブレシラシェ選手のような有力選手側から忌避する行動に出られて北京五輪のイメージダウンは免れない。
最近の北京上空を見れば、空気があまりクリーンでないことは察しがつく。日本のマラソン代表・野口みずき選手も口ごもりながら、現地を下見して検討するとも話していた。
それにしても、こんなことは前代未聞ではないかと思う。かつてのモスクワ五輪ボイコット問題のように、政治が絡んだ問題とは異なり、選手、つまり主催者側の人間から興行主に対して、きちんと興行出来るように問題を解決しろと釘を刺されたようなものだ。中国政府から、いくらきれいな環境に自信を持っているなどと抽象的に言われても、主催者であるIOCが心配だという不安を払拭する材料と、目に見える解決策を具体的に示さなければ、主催者の心配は募るばかりである。