NHKのETV特集「小田実・遺す言葉」を夜1時間半に亘って観ていた。もう小田実さんが亡くなって7ヶ月余が過ぎた。いつも懐かしく感じる人である。余命数ヶ月に迫った病床における生の声、何度か見たことのあるフィルム、ベ平連時代のイントレピッド脱走兵救出会見、小田夫人から送っていただいたDVDにも収録されていた葬儀のシーン等が放映され、改めて小田さんの偉大さを感じた。
小田さん自ら思想と行動の原点は大阪空襲だと声を上げていたこと、阪神淡路大震災で被災され、一般市民とともに震災被災者支援の市民立法を訴え、運動の先頭に立って行動され、法制化を実現させたこと等は心に残る。
偶々昨日小中陽太郎さんから2通のメールをいただき、「これまでに出た小田追悼文のなかで最も愛情にあふれたものです。とりわけ近藤さん自身の受けた影響がしっかりと書かれています。奥様(玄順恵夫人)もお喜びでしょう」と、私が先日「知研フォーラム」に小田さんの個人的な思いを綴ったエッセイ「巨人小田実を追想する」を寄稿した内容について、嬉しいコメントを送って下さった。僭越であるが、ほかにも下山敏郎・元オリンパス㈱会長、ゼミの先輩である小松隆二・東北公益分科大学長、須藤甚一郎・目黒区議、岡村透・公認会計士、栗原恒夫・小田急電鉄常勤監査役、小橋隆三・茨城県鉾田市助役、山田不二雄・元文科省教科書検定官、坂倉満・三重県立亀山高校長、岸野彰夫・元兵庫県公立小学校長ら、多くの方々からご意見や反響があった。大変有難いことであり、嬉しく思っている。
いま小田さんの「何でも見てやろう」を改めて読み返している。実に、64年、79年、88年、99年に次いで5度目だ。その著書に、日本人であることで外国人に対していばれるという件がある。日本は世界有数の工業国で、活力に富んだ国で、世界有数のインテリ国であると小田さんは旅行中世界各地で自慢するのである。そのインテリ国とは、超満員の電車の中でも人は本を、それもサルトルでもフロイトでもマルクスでも読むではないか、とまあこんな調子である。だが、残念ながら現代のインテリ?は、真面目なごく一部の通勤者を除き、電車内では漫画雑誌を読み、エロ週刊誌を読み、携帯でメール送信し、顔を塗りたくってお化粧に熱中しているのである。悲しいことに彼らは何も考えていない。初版発行以来半世紀近くを経て、小田さんも現実認識してがっかりしていたと思うが、本当のところは現代の日本人の知能をどの程度に思っていただろうか。
それにしても番組は中々良い企画だったと思う。