287.2008年2月25日(月) コソボ独立宣言

 1週間前にセルビアのコソボ自治区が独立を宣言して以来、各国のコソボ独立に対する賛否の駆け引きが露骨になり、先行きがどうなるのか分からなくなってきた。まず、国の一部が独立されるセルビアにとっては反対するのは当然として、国内に多数の異民族を抱えるロシアも強硬に反対を唱えだした。ロシアは国連常任国の立場を利用して、対抗措置まで持ち出しコソボの国連加盟、IMF加盟にも反対すると表明した。

 旧ユーゴスラヴィアはバルカン半島の火薬庫と言われたほど、過去に紛争の絶えなかった地域で、戦後しばらくはチトー大統領のカリスマ的なリーダーシップにより何とか一枚岩の形をとってきた。チトーは民族、宗教、言語それぞれが異なる国民をひとつの社会主義国家として巧妙にまとめてきた。それが、チトーの死後、社会主義体制が崩壊し、各民族が自治権を要求して独立を望み、結果的にバルカン半島は、クロアチア、スロベニア、セルビア、モンテネグロ、マケドニア、ボスニア・ヘルツェゴビナに分割されることになった。いままたセルビアからコソボ自治区が独立しようとしている。

 国際的には民族自決のスローガンの下に、独立を志向する流れが加速する一方で、必ずしも新たな独立を歓迎する空気が、世界的に流れているわけではない。そんな中にあって一筋縄で行かないのがコソボ独立である。独立するなら、旧ユーゴ崩壊の時がひとつのタイミングだったのではないか。しかし、コソボ問題はその時点でも民族抗争事件がありながら、独立まで突き進むことはなかった。

 独立国家として世界から認められるためには、国連の合意が必要である。アメリカやEU諸国はロシアが強く反対する安保理事会での解決を断念し、国連の枠外での独立を模索している。出来るだけ多くの国からコソボ独立の承認を得て、「コソボ共和国」の既成事実化を狙っている。

 今日までで独立承認は、米、英、仏、独、伊、オーストリア、豪、トルコ、台湾、承認予定国はベルギー、ポーランド、オランダ、ハンガリー、クロアチア、保留国はチェコ、ギリシャ、ポルトガル、スロバキア、中国、反対はロシア、キプロス、ルーマニア、スペインである。国内に独立爆弾を抱える国が揃って反対なのは当然であるが、チベットや台湾を抱える中国が態度を明確にしないのも不思議である。

 いずれベオグラードにいる山崎洋さんにセルビア住民として聞いてみたい。「知研フォーラム」に書いたエッセイ「巨人小田実を追想する」の中で、彼と小田実の関係について一寸触れた箇所があるので、近々送ろうと考えている。その際彼の本音をぜひ聞き出してみたい。

2008年2月25日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

286.2008年2月24日(日) 三浦和義、サイパンで逮捕

 驚いたことに三浦和義容疑者が、サイパンで逮捕された。もう多くの日本人の記憶の彼方に去ってしまった「ロス疑惑」銃撃事件の主役である。昨年4月に三浦はスーパーマーケットで万引事件を起こして逮捕され、ほんのつかの間話題になった。ロス疑惑事件は、1881年三浦がロスアンゼルスで妻を銃で殺害したとの容疑で逮捕、起訴されたが、日本では無罪となって一件落着となった筈であった。しかし、そもそもこの無罪判決も堂々身の潔白を証明して勝ち得た勝訴ではなかった。最高裁が高裁の無罪判決に対する検察側の上告を却下しつつも、「妻を殺害したと認めるには、なお合理的な疑いが残るとした高裁判決は是認できる」と述べたように、どうも奥歯にものが挟まったような「疑わしきは罰せず」で、自白や完全証拠がない点で幕引きせざるを得なかったとのあいまいな印象が残った。どうもすっきりした無罪放免とはいかない、いわくつきの事件だった。敢えて言えば、限りなくクロに近いグレイな事件だった。しかも三浦は事件直前にも知人の元女優による妻殴打事件を起し、殺人未遂罪で懲役6年の実刑により服役した前科がある。相当な悪党だ。いつも灰色でお騒がせの男だが、いままた身から出た錆で、日本の法律とは関係ないアメリカの司法当局により逮捕された。

 三浦のようなケースはあまりないと思うが、ロス警察から追求されている人間が、日本で解決したからと言って、事件を起したアメリカの自治領までのこのこ出かけていく神経もどうかしている。それにしても、アメリカの警察というのはどこまで執念深いのか。すでに当時の捜査官はいなくなっているらしい。それを未解決事件担当チームというプロジェクトが追っかけていて、油断してのこのこアメリカ領へ入り込んだところを御用となったわけだ。しかし、「悪い奴ほどよく眠る」と言って、悪事を犯しながら大きな顔でのさばられたのでは敵わない。こういうワルは日本だろうと、外国だろうとどんどんしょっ引いて欲しいものだ。

 テレビで当時の映像を見ていて思い出したが、あの当時ロスの高速道路をバスで走っていてガイドに教えられ殺害現場を望見したことが何度かある。当時随分話題になり、マス・メディアの取材で連日大騒ぎをしていたが、もう27年も経ったと思うと感慨も一入である。週刊誌は喜ぶだろうが、こういう薄気味悪い事件はもう好い加減に願い下げにして欲しい。

2008年2月24日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

285.2008年2月23日(土) 初めて認められた陵墓立ち入り調査

 宮内庁が管理する神功皇后陵に考古学会・歴史学会の代表者が初めて墳丘の立ち入り調査をした。陵内に入り古墳の外周を歩きながら、測量図と実際の古墳の形を見比べ、写真を撮っただけだったが、初めて天皇・皇族クラスの墓と言われる「陵墓」へ立ち入りが認められたということ自体に意義がある。今回は立ち入ったというだけであるが、いままで認められていなかった内部への立ち入りが許されたことを評価したい。始めの一歩である。これからはもっと考古学的な調査が細部に亘って出来るような、実のある立ち入り調査を認めてもらいたい。

 それにしても情報公開の世の中で、宮内庁はどうしてこれまで陵墓への立ち入り調査を頑なに認めてこなかったのか。陵墓では、かりに発掘調査まで許されるなら相当価値のある考古学的な、また歴史的な遺跡、遺品が発見される可能性が高い。日本史上の新しい歴史的発見だって見出せる希望がある。こうした陵墓が日本国内には700箇所ほどあるという。史跡の宝庫ではないか。考古学者がよだれを流して流し目を送っているのがよく分かる。

 エジプトやインド、その他の陵墓には観光客ですら容易に見学することが出来る。日本では、現存する天皇家の出自にも関係する、遺品発見だけに慎重になるのも分かるが、あまりにも閉鎖的ではないだろうか。

 現在活動しているNPO「江戸城再建を目指す会」の目的は、国民の賛意を得て旧天守閣跡地へ当時のままの天守閣を再建することにあるが、皇居東御苑の天主跡は完全に空き地になって、しかも天皇ご一家がお住まいの吹上御所や、東宮御所とは大きく仕切られている。防犯上の問題点も見られないと思う。されど宮内庁には、天守閣再建について拒絶反応が強いようだ。宮内庁職員には、国の土地、つまりは国民の土地だとの意識がまったくなく、自分たちの土地だとの気持ちがあるようだ。

 とにかく宮内庁は一歩踏み出した。この動きがどこまで進展するのか。国民のためにも、考古学のためにももっと英断を振るってもらいたい。

2008年2月23日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

284.2008年2月22日(金) 防衛省と海上自衛隊のお粗末

 心配していた通り、房総沖の漁船とイージス艦「あたご」の衝突原因の究明で上へ下への大騒ぎである。問題が段々大きくなってきた。もう4日間も行方不明になった漁船の乗組員父子の海上捜索で、地元の漁船が動員されている。少しずつ様子が分かってきたが、いまだに防衛省では「ただ今調査中」の一点ばりで、責任や原因を明言していない。「あたご」が漁船を発見した肝心の時刻が少しずつ修正されている。辻褄あわせをやっているとしか思えない。自衛隊の呆れた体質には、堂本千葉県知事や、20年前の「なだしお」事件の被害者の遺族からも批判の声が挙がっている。元海上自衛官や専門家に言わせれば、この状況下での衝突自体があり得ないという。防衛省の言い分にはいくつかの疑問点がある。漁船を視認した時刻、それが艦内に伝えられた後の措置と対応、漁船に対して警戒注意を発しなかったこと、自ら回避しようとの行動をとらなかったこと、等々で地元の漁業組合員に不信感を与えてしまった。防衛省はそれに対して、即応した的確な回答や対応をしていない。こういう公海上の事故に対してどうすべきかは、専門家や当事者でなければ分からないが、今回ばかりは防衛省と自衛隊サイドに過失があることが徐々に明らかになりつつある。

 それにしても国会質疑を聞いていると、防衛大臣の責任論ばかり追及しているが、いま辞めてどうするのか。漁業組合からもすぐ辞めるようなことはしないで、きちんとかたをつけろと言われているのだ。大臣が逃げたら、真相はもっと暗闇である。政治家というのは、政局だけで動くからピントが外れている。防衛省という官僚機構も内部崩壊しているが、政治家どもの馬鹿さ加減も一向に良くならない。

 だいたい行方不明者父子の捜索に、漁業組合の僚船が毎日仕事を休んで必至になって当っているのは、本来の主旨から言えばおかしいのではないか。いまごろになって海洋探査船を捜索活動に投入してきた。防衛省はすべて人任せで自分のミスで起した事故の責任すら解明出来ないでいる。対空ミサイルを打ち落とす性能は抜群と自慢たらたらで、杜撰な航行によって国民を犬死させたりして、こんな傲慢な「海軍」で、国家を守ることが出来るのか。

2008年2月22日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

283.2008年2月21日(木) 国際ペン・フォーラム前夜祭

 いつもなら日比谷の東京會舘で開かれる日本ペンクラブの月例会が、今月はペンの年間行事の一環として「世界P.E.N.フォーラム『災害と文化』」前夜祭を兼ねて、新宿・京王プラザホテルで開催された。件のフォーラムは明日から4日間代々木の全労済ホールで、自然災害に関係する劇、映画、各種の催しが行われる。各国からのゲストも参加した前夜祭は、江戸火消組による木遣りがあって中々威勢のいいものだった。ペンとしても力を入れ、意気込みのほどが感じられる。ただ、挨拶者が多いことと、スピーチが長いのでもう少し参会者の年齢等も考慮して端折るなり、カットするなりした方がよいと思う。実際会場でもそんな声が聞かれた。開会が午後6時で、セレモニーが延々1時間も続いていたのは少々興ざめである。

 小中陽太郎さんは無理しても来るとメール連絡をいただいていたが、姿を見せなかった。いま小田実さんについて書いておられるとのことだったので、忙しいのだと思う。阿刀田高会長、浅田次郎常務理事にはご挨拶したが、昨年週刊誌上で読んだ、浅田さんがモン・サン・ミッシェルで会った日本人若者カップルについて書かれたエッセイに関して尋ねてみた。

 モン・サン・ミッシェルのテッペンは中庭と回廊から成っているが、浅田さんが若いカップルからカメラのシャッターを押して欲しいと頼まれ、気安く引き受けたが、彼らが浅田さんだとはまったく気がつかなかったという。浅田さんにとってはそれが不満で愕然とされた。それを面白おかしく浅田さんはエッセイに書かれた。今日浅田さんに「彼らは分からなかったんでしょうかねぇ?」と、意地の悪い質問をしたところ、本気になって「本なんか読んでないんでしょう」と憮然としていた。それが失礼ながらまた面白い。程度が低い近頃の若者なんて所詮そんなものだろう。

 さて、一昨日明け方房総半島沖合いで、漁船が海上自衛隊イージス艦「あたご」と衝突して船体が真っ二つに割れ、乗り込んでいた父子が行方不明となった。防衛省、海上自衛隊の説明が明快でなく、疑念の目で見られている。今後相当問題になりそうな様相である。

 海外では、コソボ自治区がセルビアから独立を宣言し、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツが承認した。セルビアはもちろん、ロシアも強烈に反対している。

 アメリカ大統領選は民主党候補のつばぜり合いが、益々ヒートアップしている。オバマ候補が流れに乗って勢いをつけ、スーパー・チューズディ以降9連勝で、ついに獲得代議員数でもクリントン候補を圧倒した。このままオバマ候補の優位が保たれるか?

 ついに、キューバの象徴であった、カストロ議長がその座を退くという。81歳だから激職の議長職は少しハードだと思う。アメリカにとっては、実に好ましからざる人物だっただろうが、最早東西冷戦は終止符を打ち、キューバも旧ソ連という後ろ盾がなくなったので、カリスマ性は完全に失せた。われわれ安保世代にとっては、象徴的な人物である。キューバはこれからどんな道を辿るのだろう。

2008年2月21日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

282.2008年2月20日(水) 元上司との懐かしい昔話

 久しぶりに元上司とお会いして昼食をご馳走になり、その後のコーヒータイムを含め、5時間もの間話詰めだった。若かったころ経理時代の上司で、いろいろお世話になったのにわがままを言っては困らせてしまったことが気にかかっていた。かねがね一度お会いしたいと思っていたところ、一昨年秋電話をいただきご自宅へお邪魔して、懐かしい話に興奮して時の経つのも忘れて7時間ぐらい話し込んだような気がする。

 もともと経理という仕事が性に合わなくて、いやいやながら机に向かっていたようなので気持ちが集中出来るはずもなく、毎日職場でうっとうしい気分のまま過ごしていた。一大決心をして会社を辞めようと、海外留学を考えていたそんな時代の直属の上司である。辞表を提出した時に説得されたが、頑固に退職ばかり主張して上司をはじめ周囲を悩ませていた。結局1968年8月に「プラハの春」事件で、チェコ留学が吹っ飛んだことから、辞表を取り下げるというみっともない結末で幕引きをした。上司は、いまでもその当時私がこのまま仕事を続けるよう説得したことが、私のために良かったかどうかとのジレンマに陥るというが、個人的なわがままでそのような精神的な負担をかけたことを申し訳ないと思っている。経理時代は気が向かないままに、ちゃらんぽらんな仕事ぶりだったのではないかと、いま思い出すと反省しきりであるし赤面の至りでもある。でも、今になって振り返ってみると、その後経理を続けていたことが、天職と信じている旅行業に転職する結果となり、そこで自分が思うように精一杯やれたような気がする。サラリーマンとしては、必ずしも順風満帆と言うわけではなかったが、人生の勉強は充分することが出来たと思っている。それが今でも自分のエキスになっている。悩み深かった若気の至りで、ご迷惑をかけた元上司に対して今では思いのままを素直に話せることが嬉しい。上司も不出来な元部下と会って旅行談を聞くのが楽しみだと言ってくれている。ありがたいことである。これからも時々お会いして、人生が楽しいと思えるような話が出来るよう、自分自身ももっと研鑽を積みたいと思っている。

2008年2月20日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

281.2008年2月19日(火) 中條高徳氏の気炎溢れるセミナー

 永田町の憲政記念館で、第2回「ふるさとテレビ」顧問セミナーが開かれた。先月の第1回は、当日になって喉が痛み出して参加出来ず、今日初めて出席した。講演会場でテーブルに着席してカレーライスを頂きながら、講演開始を待った。

 講師は、アサヒビール名誉顧問・中條高徳氏で日本の伝統、文化、しつけ等について、全国で元気のない現代人の心に「活」を入れておられる。日本は国家としての緊張感が足りないとも言われた。今年81歳とはとても思えない、張りのある声の通る元職業軍人である。

 主に「ふるさと」について話された。「ふるさと」と「戦争」について、ご自分の強い思いと信念をお持ちの方である。自分の存在、生活、人生の原点は、自分の「ふるさと」であることを忘れてはならないと強調された。「ふるさと」は母親の子宮であり、自分は十月十日間母の子宮で育ち、しかも自分が選ぶことなく育った場所であるとの強い気持ちについて熱っぽく話された。

 元職業軍人、そして元陸士60期生としての強いプライドと戦争観を持ち、「いかなる戦争においても国際法が適用されるべき」「勝者の論理が優先するのが戦争」と捉え、大東亜戦争について、また日本の敗戦についても持論を話された。職業軍人としては国家のために身を捧げることで国家に貢献する。国際法に則り、日本は止むを得ず戦争を始めた。敗戦は力が足りなかったからだと仰る。敗戦後、日本人にとって最大の願いは、国体の護持であったが、戦後処理、憲法制定はすべて勝者の思い通りになされた。しかし、日本人の気持ちは、アメリカが朝鮮戦争を朝鮮半島で戦うことによってマッカーサー司令官にも理解された。だが、それはアメリカ政府にとっては不都合で危険思想であり、それによって結局マッカーサーは解任されたとのお説であった。

 また、人には強い縦軸がバックボーンにある。つまり、先祖であり、子孫である。この縦軸を通して日本固有の伝統、文化が継承されていく。これを壊してはならない。地域社会、隣組との関係は横軸であり、「恥」を知るのはこの横軸である。

 次のような話もされた。「言い分にはいつも正しいふたつの考えがある」とか、「時の正義」と言われる通り、正しいことも時代に合わないと正しいと見られないことがある。

 アサヒビールの経営者としては、戦後の企業分割のせいもあり、企業再生に苦渋を飲んだようだが、結果として「スーパードライ」のようなヒット商品を生み出し、結論として、「豊かさは人に気づきを忘れさせる」「勢いは勢いを呼び、勝ちは勝ちを呼ぶ」との哲学を得られたように感じたがどうだろうか。

 中條氏の話は必ずしもすべてが正しく、すべてが誰にも受け入れられるというわけではないが、いま日本人にとって一番大切な精神論を分かりやすく伝えるという点で、元軍人が日本の文化観を守りながら、戦後の経済界で自分を確立させた成功談について、その原因を熱の入った信念の吐露の中で披露してくれたと思う。81歳に負けてはいられない。

2008年2月19日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

280.2008年2月18日(月) 寺島実郎氏定期講演会

 「知的生産の技術研究会」の定期講演に、顧問を務めておられる寺島実郎氏の講演をお願いした。毎年大体この時期の恒例として寺島講演会も定着して、毎年決まって聴講に来られる人もいる。昨日八木会長から受付の手伝いをして欲しいと依頼されたので、少々早めに会場のテラハウスへ出かけた。

 高校の先輩である天野武和さんと和田正温さんもお誘いしたら快く参加してくれた。やはり寺島人気で熱気が溢れ、会場には100名を超える受講者が待っておられた。寺島さんの講演は、7日に伺ったばかりだが、その時は前段に大勢のお祝いの挨拶やら、その後のパーティもあり、中に挟まった寺島さんご自身の講演はほんの30分程度だったので、何となく物足りなく消化不良の点があった。今日は、質問も交え2時間たっぷり時間をとってくれた。

 寺島さんの話は、相変わらず核心をずばりと突く小気味よさがあり、いまナウい話題を捉えては次から次へ関連づけて解説してくれて、聴く者を納得させてくれる。話に数字の裏づけが伴うので、とにかく説得力がある。講演時間がたっぷりだったおかげで、前回に比べ論点を掘り下げて、分かりやすく説明してくれた。

 前回同様中国の巨大さ、進展について、アメリカとの対比の中で日本がいつまでもアメリカの後追いでよいのかとの問題点を再び指摘された。

 いまの日本経済力低下を救うために、輸出に有利な円安誘導を唱える声があるが、過去湾岸戦争時に原油価格高騰を凌いで経済破滅を防止出来たのは、国内産業成長によって培われた底力と、外国経済の波を円高によって吸収したものであり、一概に円安、低金利がよいとは言い切れない。また、企業物価指数として素材原料と最終財の極端なギャップや、ワーキングプア、さらに失われた10年についても熱をいれて話された。

 今回特に力説していたのは、空海についてだった。昨年夏高野山のセミナーで講師を務めて、改めて空海を学んでいるという。空海が理工系の人だったとは初めて知った。

 日本国内では、科学で飯を食えない。そのようなプラットフォームが整備されていないと嘆いてもおられた。まだまだ書ききれないほど話されたが、受講者は私語もなく熱心に聴いておられた。ほとんどの人が満足されたのではないだろうか。終わってから、天野さん、和田さん、それに「JAPAN NOW観光情報協会」の杉さんに感想を尋ねたら、とても良かったと言っていた。こういう講演会は主催する方としても、やりがいがあって楽しい。

2008年2月18日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

279.2008年2月17日(日) 日本語の乱れ

 一昨日新潟から一時里帰りしていた二男が今日新潟へ戻った。やはりその土地に住んでいる人間から聞くとなるほどと思うことがある。1つはガソリン代について聞いた話だ。車がないと仕事にならないようだが、ガソリンの需要が多い地方都市なので、経済原則から言えば安くて当然である。ところが輸送費がかかるのか、逆にガソリン代はかなり高いらしい。やはりこういう問題は、現地に住んでみないと分からない。2つ目は、新潟は雪国であるだけに人々は雪に慣れ、雪について詳しく知っている。雪が降ってくるのを見て、この雪は積もるか、積もらないかを即断出来ると言って感心していた。

 今年は全国的に積雪が多く冬山の遭難者も多い。ところが、油断したのか航空機の人為的なミスが札幌・新千歳空港で起きた。日本航空機が離陸しようと滑走路を飛び立つ寸前に、同じ滑走路の前方で着陸したばかりの同じ日航機がまだ残っていた。雪で前方が見えなかったというパイロットの証言だが、札幌は冬になれば毎日雪が降るので、その対策は充分やっていたはずである。管制官のいう通り鸚鵡返しに繰り返せばよいのに、違う言い方をしたらしい。マニュアル通りに操作していなかった。これは、明らかに慣れからくる油断だ。幸い事故にはつながらなかったが、生命に関わる事故と連動しかねないだけに、航空会社は乗務員を再教育して、マニュアルの再点検を徹底して欲しい。

 昨日文科省による学習指導要領の改訂が発表されたが、国語については、適切に表現し正確に理解する能力を育成し、伝え合う力を高める云々とある。皮肉なことに、今朝の日経紙最終頁のエッセイに作家・工藤美代子氏が「原宿はらはら」というテーマで、最近の原宿風景を描写していたが、近頃の女子中学生の服装と言葉遣いの乱れに呆れ果てていた。長い間住んで愛着もあり懐かしい原宿だが、とても住んでいられなくて最近引越ししたそうだ。

 今朝の「天声人語」にも最近の言葉遣いには、会話を弾ませる大切な熱を奪う言い回しが多いと嘆き、その例として「自分の中では・・・」とか、「わたし的には」、「~かな、みたいな」という表現が間々見られると指摘している。文科省は精一杯やっているのだろうが、言葉の破壊に力を貸しているのは、間違いなくテレビ局だろう。あまりにも愚劣なバラエティ番組で低級な笑いを誘って、程度の低いタレントが程度の低い視聴者に迎合している。このまま日本語が破壊され続けると、日本の古典はいずれ外国語になってしまう。

2008年2月17日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com

278.2008年2月16日(土) 学習指導要領の改定

 文部科学省が、学習指導要領を改定する。09年度から段階的に移行して、小学校が11年度、中学校が12年度から全面実施する。「ゆとり教育」に対する懐疑的な声がかなり出ていたうえに、国際的にも日本の児童・生徒の学力低下がはっきりしてきたので、改定には大きな反対はないようだ。

 しかし、「ゆとり教育」が問題ありとするなら、当然精査して、まず不十分な箇所を補う方策を考えてみるのが、教育のような地道なアイテムにとっては最も大切ではないだろうか。徹底的に議論を重ね、時間をかけて解決していくことこそが、教育には大切だと思うが、ダメと断定してばっさり切ってしまう点は、とかく優柔不断の日本人にしては珍しい。これでは「ゆとり教育」は何だったのかということになる。少なくとも「ゆとり教育」が検討され、それを取り入れるために充分分析され、そのうえで新しい道へスタートしたはずだった。それを草木もなびくが如く、すべてアンチ「ゆとり教育」というのでは、徒に時間を浪費していただけだったということになる。現場の教師や、生徒のことを考えずに、統計結果だけを捉えて概念的に決めてしまうやり方は、どうだろうか? あれだけ「ゆとり教育」を大騒ぎして鳴り物入りでスタートさせていながら、10年足らずで方針転換だから、現場に関わっている教育者が一番苦労されるのではないだろうか。

 今度の改定では、授業時間数が確実に増える。特に、理数系の授業が大幅に増える。しかし、教師の数は充足されているのか。文系ならともかく理数系の教師の養成が大丈夫なのか、おいそれと充足出来るとも思えない。すると、従来の理数系の教師に負担がかかることになる。「ゆとり教育」で評判のよくなかった「総合的な学習」は、すでに授業時間数が減らされているらしい。授業時間が増える分は、「総合的な学習」が削られるようだ。

 そのほかには、数学で3.14を条件付きながら、3.1として計算してもよいなどと馬鹿げたことを言っていたが、案の定今後は再び3.14でなければならないということになった。

 最大の問題は、表向きでは教育は最も大切と言っておきながら、本音としては金を稼がない文部行政は、政治家からは最も軽視されている。すべて文部官僚に任せ、事が起こればポーズとして動く。それが証拠には、一番長期的な戦略が求められる仕事であるにも関わらず、結論だけは短期的な即決を求めていることからもみてとれる。

2008年2月16日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com