心配していた通り、房総沖の漁船とイージス艦「あたご」の衝突原因の究明で上へ下への大騒ぎである。問題が段々大きくなってきた。もう4日間も行方不明になった漁船の乗組員父子の海上捜索で、地元の漁船が動員されている。少しずつ様子が分かってきたが、いまだに防衛省では「ただ今調査中」の一点ばりで、責任や原因を明言していない。「あたご」が漁船を発見した肝心の時刻が少しずつ修正されている。辻褄あわせをやっているとしか思えない。自衛隊の呆れた体質には、堂本千葉県知事や、20年前の「なだしお」事件の被害者の遺族からも批判の声が挙がっている。元海上自衛官や専門家に言わせれば、この状況下での衝突自体があり得ないという。防衛省の言い分にはいくつかの疑問点がある。漁船を視認した時刻、それが艦内に伝えられた後の措置と対応、漁船に対して警戒注意を発しなかったこと、自ら回避しようとの行動をとらなかったこと、等々で地元の漁業組合員に不信感を与えてしまった。防衛省はそれに対して、即応した的確な回答や対応をしていない。こういう公海上の事故に対してどうすべきかは、専門家や当事者でなければ分からないが、今回ばかりは防衛省と自衛隊サイドに過失があることが徐々に明らかになりつつある。
それにしても国会質疑を聞いていると、防衛大臣の責任論ばかり追及しているが、いま辞めてどうするのか。漁業組合からもすぐ辞めるようなことはしないで、きちんとかたをつけろと言われているのだ。大臣が逃げたら、真相はもっと暗闇である。政治家というのは、政局だけで動くからピントが外れている。防衛省という官僚機構も内部崩壊しているが、政治家どもの馬鹿さ加減も一向に良くならない。
だいたい行方不明者父子の捜索に、漁業組合の僚船が毎日仕事を休んで必至になって当っているのは、本来の主旨から言えばおかしいのではないか。いまごろになって海洋探査船を捜索活動に投入してきた。防衛省はすべて人任せで自分のミスで起した事故の責任すら解明出来ないでいる。対空ミサイルを打ち落とす性能は抜群と自慢たらたらで、杜撰な航行によって国民を犬死させたりして、こんな傲慢な「海軍」で、国家を守ることが出来るのか。