永田町の憲政記念館で、第2回「ふるさとテレビ」顧問セミナーが開かれた。先月の第1回は、当日になって喉が痛み出して参加出来ず、今日初めて出席した。講演会場でテーブルに着席してカレーライスを頂きながら、講演開始を待った。
講師は、アサヒビール名誉顧問・中條高徳氏で日本の伝統、文化、しつけ等について、全国で元気のない現代人の心に「活」を入れておられる。日本は国家としての緊張感が足りないとも言われた。今年81歳とはとても思えない、張りのある声の通る元職業軍人である。
主に「ふるさと」について話された。「ふるさと」と「戦争」について、ご自分の強い思いと信念をお持ちの方である。自分の存在、生活、人生の原点は、自分の「ふるさと」であることを忘れてはならないと強調された。「ふるさと」は母親の子宮であり、自分は十月十日間母の子宮で育ち、しかも自分が選ぶことなく育った場所であるとの強い気持ちについて熱っぽく話された。
元職業軍人、そして元陸士60期生としての強いプライドと戦争観を持ち、「いかなる戦争においても国際法が適用されるべき」「勝者の論理が優先するのが戦争」と捉え、大東亜戦争について、また日本の敗戦についても持論を話された。職業軍人としては国家のために身を捧げることで国家に貢献する。国際法に則り、日本は止むを得ず戦争を始めた。敗戦は力が足りなかったからだと仰る。敗戦後、日本人にとって最大の願いは、国体の護持であったが、戦後処理、憲法制定はすべて勝者の思い通りになされた。しかし、日本人の気持ちは、アメリカが朝鮮戦争を朝鮮半島で戦うことによってマッカーサー司令官にも理解された。だが、それはアメリカ政府にとっては不都合で危険思想であり、それによって結局マッカーサーは解任されたとのお説であった。
また、人には強い縦軸がバックボーンにある。つまり、先祖であり、子孫である。この縦軸を通して日本固有の伝統、文化が継承されていく。これを壊してはならない。地域社会、隣組との関係は横軸であり、「恥」を知るのはこの横軸である。
次のような話もされた。「言い分にはいつも正しいふたつの考えがある」とか、「時の正義」と言われる通り、正しいことも時代に合わないと正しいと見られないことがある。
アサヒビールの経営者としては、戦後の企業分割のせいもあり、企業再生に苦渋を飲んだようだが、結果として「スーパードライ」のようなヒット商品を生み出し、結論として、「豊かさは人に気づきを忘れさせる」「勢いは勢いを呼び、勝ちは勝ちを呼ぶ」との哲学を得られたように感じたがどうだろうか。
中條氏の話は必ずしもすべてが正しく、すべてが誰にも受け入れられるというわけではないが、いま日本人にとって一番大切な精神論を分かりやすく伝えるという点で、元軍人が日本の文化観を守りながら、戦後の経済界で自分を確立させた成功談について、その原因を熱の入った信念の吐露の中で披露してくれたと思う。81歳に負けてはいられない。