驚いたことに三浦和義容疑者が、サイパンで逮捕された。もう多くの日本人の記憶の彼方に去ってしまった「ロス疑惑」銃撃事件の主役である。昨年4月に三浦はスーパーマーケットで万引事件を起こして逮捕され、ほんのつかの間話題になった。ロス疑惑事件は、1881年三浦がロスアンゼルスで妻を銃で殺害したとの容疑で逮捕、起訴されたが、日本では無罪となって一件落着となった筈であった。しかし、そもそもこの無罪判決も堂々身の潔白を証明して勝ち得た勝訴ではなかった。最高裁が高裁の無罪判決に対する検察側の上告を却下しつつも、「妻を殺害したと認めるには、なお合理的な疑いが残るとした高裁判決は是認できる」と述べたように、どうも奥歯にものが挟まったような「疑わしきは罰せず」で、自白や完全証拠がない点で幕引きせざるを得なかったとのあいまいな印象が残った。どうもすっきりした無罪放免とはいかない、いわくつきの事件だった。敢えて言えば、限りなくクロに近いグレイな事件だった。しかも三浦は事件直前にも知人の元女優による妻殴打事件を起し、殺人未遂罪で懲役6年の実刑により服役した前科がある。相当な悪党だ。いつも灰色でお騒がせの男だが、いままた身から出た錆で、日本の法律とは関係ないアメリカの司法当局により逮捕された。
三浦のようなケースはあまりないと思うが、ロス警察から追求されている人間が、日本で解決したからと言って、事件を起したアメリカの自治領までのこのこ出かけていく神経もどうかしている。それにしても、アメリカの警察というのはどこまで執念深いのか。すでに当時の捜査官はいなくなっているらしい。それを未解決事件担当チームというプロジェクトが追っかけていて、油断してのこのこアメリカ領へ入り込んだところを御用となったわけだ。しかし、「悪い奴ほどよく眠る」と言って、悪事を犯しながら大きな顔でのさばられたのでは敵わない。こういうワルは日本だろうと、外国だろうとどんどんしょっ引いて欲しいものだ。
テレビで当時の映像を見ていて思い出したが、あの当時ロスの高速道路をバスで走っていてガイドに教えられ殺害現場を望見したことが何度かある。当時随分話題になり、マス・メディアの取材で連日大騒ぎをしていたが、もう27年も経ったと思うと感慨も一入である。週刊誌は喜ぶだろうが、こういう薄気味悪い事件はもう好い加減に願い下げにして欲しい。