287.2008年2月25日(月) コソボ独立宣言

 1週間前にセルビアのコソボ自治区が独立を宣言して以来、各国のコソボ独立に対する賛否の駆け引きが露骨になり、先行きがどうなるのか分からなくなってきた。まず、国の一部が独立されるセルビアにとっては反対するのは当然として、国内に多数の異民族を抱えるロシアも強硬に反対を唱えだした。ロシアは国連常任国の立場を利用して、対抗措置まで持ち出しコソボの国連加盟、IMF加盟にも反対すると表明した。

 旧ユーゴスラヴィアはバルカン半島の火薬庫と言われたほど、過去に紛争の絶えなかった地域で、戦後しばらくはチトー大統領のカリスマ的なリーダーシップにより何とか一枚岩の形をとってきた。チトーは民族、宗教、言語それぞれが異なる国民をひとつの社会主義国家として巧妙にまとめてきた。それが、チトーの死後、社会主義体制が崩壊し、各民族が自治権を要求して独立を望み、結果的にバルカン半島は、クロアチア、スロベニア、セルビア、モンテネグロ、マケドニア、ボスニア・ヘルツェゴビナに分割されることになった。いままたセルビアからコソボ自治区が独立しようとしている。

 国際的には民族自決のスローガンの下に、独立を志向する流れが加速する一方で、必ずしも新たな独立を歓迎する空気が、世界的に流れているわけではない。そんな中にあって一筋縄で行かないのがコソボ独立である。独立するなら、旧ユーゴ崩壊の時がひとつのタイミングだったのではないか。しかし、コソボ問題はその時点でも民族抗争事件がありながら、独立まで突き進むことはなかった。

 独立国家として世界から認められるためには、国連の合意が必要である。アメリカやEU諸国はロシアが強く反対する安保理事会での解決を断念し、国連の枠外での独立を模索している。出来るだけ多くの国からコソボ独立の承認を得て、「コソボ共和国」の既成事実化を狙っている。

 今日までで独立承認は、米、英、仏、独、伊、オーストリア、豪、トルコ、台湾、承認予定国はベルギー、ポーランド、オランダ、ハンガリー、クロアチア、保留国はチェコ、ギリシャ、ポルトガル、スロバキア、中国、反対はロシア、キプロス、ルーマニア、スペインである。国内に独立爆弾を抱える国が揃って反対なのは当然であるが、チベットや台湾を抱える中国が態度を明確にしないのも不思議である。

 いずれベオグラードにいる山崎洋さんにセルビア住民として聞いてみたい。「知研フォーラム」に書いたエッセイ「巨人小田実を追想する」の中で、彼と小田実の関係について一寸触れた箇所があるので、近々送ろうと考えている。その際彼の本音をぜひ聞き出してみたい。

2008年2月25日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com