今度のオリンピック競泳で珍しいことがいくつかある。先ずは、昨日行われた女子100m自由形で金メダリストが2人も現れたことである。しかもその内のひとりが、黒人アメリカ選手だった。その昔テニス、ゴルフや水泳では黒人と白人が同じ場でともにプレイすることはなかった。それが一応人種差別の壁が撤廃され、今では多くのスポーツで表向き差別はなくなり、その上競技によっては白人選手以上に黒人選手の活躍が目立つようにもなった。それでも水泳だけは、同じトレーニングの場が与えられなかったのか、これまで黒人選手が華々しい活躍をすることはほとんどなかった。これからは、人種の差別なく互いに競い合うスポーツの本領を見せてくれるだろう。
次いで、順位で同着が目につくようになったことである。冒頭に挙げた100m自由形の金メダリストルは2人の選手が同着となった。今日行われた男子100mバタフライ決勝では3人の選手が同着2位となり、一気に銀メダリストが3人も誕生した。加えて3人の内のひとり、南アのレクロー選手は前回ロンドン大会でも2人が2着だった時のひとりだった。すでに今大会で4つの金メダルを獲得しているアメリカのマイケル・フェルプス選手も銀メダリスト3人の内のひとりだった。オリンピックの競泳種目で同じメダルを3人が分け合うのは史上初だそうである。
嫌なことは、あれだけドーピングが騒がれた大会であるにも拘わらず、検査で陽性が出たり、出場予定だったが疑念を持たれて追放処分にあった選手がいる。昨日行われた陸上競技最初の女子10000m決勝でも、従来の記録を大幅に塗り替える世界記録で圧勝したエチオピアのアルマズ・アヤナ選手が疑われている。スポーツ界では度重なる傷の痛みが骨髄に達していないのではないかとそのいい加減さに呆れるばかりである。
嫌なことの2つ目は、柔道1回戦でイスラエル選手に敗れたエジプト選手が試合終了後、イスラエル選手の握手を拒んだことが問題になっている。IOCではオリンピック憲章と理念に反するとして、問題にするようだ。
さて、リオ・オリンピックの熱気に圧倒されて些か過熱もトーンダウンしたかに見えるアメリカ大統領選挙運動中に、民主党候補ヒラリー・クリントン氏がこのほど環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に反対を唱えた。共和党候補トランプ氏から態度を迫られ保留していたクリントン氏もトランプ氏同様に反対を訴えたのである。どうも駆け引きが絡んでいるようだ。先日オバマ大統領がクリントン氏を次期大統領として強く推したが、クリントン氏はそのオバマ大統領の親心を無視するかの如く選挙向きの行動に出た。その影響かどうかは、はっきりしないが、TPP反対を打ち出したクリントン氏を批判するかのように、昨日オバマ政権はTPP批准に向けた行政措置の説明案をアメリカ議会に送付した。
だが、アメリカには反対意見も多くこの先どうなることやら視界不良である。アメリカ議会、民主・共和両党、上下院議員らにとって選挙を考え、周囲との調和を考えながら結論を出さなければならないのは気苦労とは思うが、しっかり自らの信念だけは貫いて欲しい。周囲への気遣いや選挙対策で自論を主張しないというのでは、本末転倒ではないだろうか。アメリカ大統領選挙が色褪せてくるわけだ。
一方、安倍総理は秋の臨時国会でTPP批准を目指すと言っているが、わが国内でも農協を中心に反対の声は根強い。最近強気になってきた首相は、これに対してどう出るか。