今年のノーベル賞受賞者が、医学・生理賞に続き、物理学賞、そして昨日文学賞が決まった。毎年話題に挙がる村上春樹氏が、今年もロンドンのオッズ相場で最有力候補者に推されていたが、結果的には中国人の莫言氏に決まった。中国人作家としては初の受賞者で、中国国内では前回劉暁波氏受賞の際のかなり抑圧的な報道に比べて、大々的に、且つ誇らしげに報じられている。
2年前ノーベル平和賞が反体制派の獄中作家・劉暁波氏に授与された時は、中国政府は国家の反体制分子である劉暁波氏に栄誉を与えたとして、ノルウェイ政府を一方的に非難し、今も両国間は中国の一方的な敵対的対立関係にある。数ヶ月前にはノルウェイ前首相が中国を訪れようとしたところ、前首相への入国ビザ発給が拒否されている。その劉氏は依然として身柄を解放されず、今も収監されたままである。
今度の莫氏受賞の背景には、ノルウェイ政府が前回の劉氏授与で中国政府から反発を受けたことを斟酌したスウェーデン・アカデミーが、村上氏有利の世評を覆し莫氏に賞を授与することで中国政府のご機嫌を取ったのではないかとの穿った見方もある。
一方で、莫氏に対して中国政府が厳しい対応をせず、高く評価している背景には、莫氏が作家としての優れた才能はともかく、政府を批判せず、一党独裁国家中国政府の宣伝塔として利用価値があると受け取られたからであるとも言われている。実際莫言氏の名前は本名ではなく「言う莫(なか)れ」である。つまり政府批判をしない「体制内作家」ということで、政府に飼いならされた番犬と思わないわけにはいかない。どこまで真実か判らないが、仮に莫言氏が民主的な言動や、政府批判を行わず、政府と蜜月関係にあり、それを承知のうえでこういう人物を選考したとするならスウェーデン・アカデミーにも問題があると考えざるを得ない。
トバッチリを受けたのは、案外村上春樹氏であるかも知れない。まだ村上氏の小説は読んだことはないが、世評では村上氏の作品は国内のみならず、海外にも多くの読者が多く、それ故にオッズ順位でもトップだったことを考えれば、来年こそ文学賞を授与されるのではないだろうか。来年を楽しみにしたい。
1日経って今日今年度のノーベル平和賞はヨーロッパ連合(EU)に決まった。随分大きな組織が対象になったものだ。EUの全人口、5億人が受賞者ということになるのだろうか。どうもあまりピンと来ない。
さて、今開会しているIMF年次総会の全体会合で、新興国の関与を拡大する改革案について、来年中に実現を目指すことを確認した。その中で最大の眼目は、IMFへの出資比率の変更である。これまでダントツに多かったアメリカは変わらず、日本も変わらず2番目の出資国であるが、中国が6番目から日本に次ぐ3番目となったことが大きな変化である。中国の存在感が増し、その態度が益々傲慢になるわけである。その他には新興国のインドが8番目、ブラジルが10番目に入ったことである。これによって新興国の発言力が増すことになる。ただ、出資金額が増えたとしても、その効果は効率的な経済政策を実行できるかどうかに掛かっているのではないだろうか。IMF の力量が問われるところである。