今日1人の北朝鮮兵士が国内で上官2人を射殺し境界線を越えて韓国へ亡命してきた。詳細は明らかになっていないが、また南北両国間に新たな紛争の火種が生まれるに違いない。
わが国と北朝鮮の外交関係は、拉致問題がこじれてから膠着状態のままである。国家指導体制を世襲して間もない金正雲総書記は、祖父、父が君臨したように、国のカリスマ的なリーダーに祭り上げられたが、父と同じように外交的に配慮することもなく国際的な鼻つまみ者となる可能性があり、国内では貧しい農民ら大多数の国民を無視して彼らを困窮生活に追い込んで何も反省するところがない。こういう指導者を戴いた物言わぬ国民こそ気の毒である 拉致問題は一向に解決の兆しすらなく、時間が経過するばかりである。
最近になって北朝鮮が終戦前後に亡くなった日本人の遺族を受け入れ、遺骨の発掘作業に立ちあわせたり、慰霊祭を行ったり、その映像をテレビで公開して、日本に対して多少門戸を開きそうな素振りを見せた。だが、これとて単なるジェスチャーで、思わせぶりのパフォーマンスにしか過ぎなかった。拉致問題でも日本に対してすでに解決済みとして取り合わず依然先が見えない。北朝鮮で亡くなった多くの日本人の遺骨収集作業を今後どのように進めるのか、日本人を受け入れて日本人が望むような作業をさせてもらえるのか、まったく見通しが立たない有様である。北朝鮮のやり方は、ちょっと期待を持たせては実を与えない意地悪ジジィがよくやる手法である。
北朝鮮の非情なやり方は拉致事件にしても、遺骨収集にしても、家族を始め周囲の人々が悲しんでいる心の隙間にずうずうしく割り込んできて、被害者の落ち込んだ心情につけ入り被害者の気持ちを翻弄し弄ぶ非人間的な非道さである。まともな人間の行為として、とても許されないことに良心の呵責のひと欠片も感じない人間性では、今後何を言っても誠意を持って話し合いに乗ってくれそうもない。拉致問題さえ解決していれば、北朝鮮を相手に話合いすることもないし、今後国交を結ぶ必要もないくらいである。
厚生労働省の調査によれば、先の大東亜戦争時に海外や、沖縄、硫黄島で亡くなった戦没者は240万人で、その半数近くの戦没者の遺骨がまだ日本に帰っていない。戦後67年が経ち、遺族は高齢化しているが、外国における難しい作業故、このうえ遺骨返還作業のピッチが上がるとも思えない。遺族にとっては大変お気の毒ではあるが、今後これまで以上に収骨作業が効果を上げても遺族の気持ちを納得させるようなことは難しいだろう。
私自身20年近くに亘り厚労省の遺骨収集事業に関わってきたが、私が担当した中部太平洋地域では地域性や島民感情、気候などから考えて比較的収骨の成果が上がっているように感じていたが、国の資料によれば、中国本土に比べるとまだ少ない。一方で、フィリピン方面ではまだかなりの遺骨が現地で苔むしている。高齢の遺族にとってはもう時間がない。このまま遺骨収集事業は永遠に未解決の課題のままとなってしまうのだろうか。微力ながら協力したつもりでいるので、残念な気持ちがしている。